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世界がゲーム仕様になりました  作者: 矢崎未峻
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らしくない言動

「黒鉄く〜ん。助けて〜」


 ん?ああ、白亜か。


「あれ?まだ捕まってたのかよ。昼飯は?」


「まだ。黒鉄君は?」


「もう終わった。雅人もな」


 そのままの流れで白亜は俺の隣に、白亜を捕まえたままの女子は南雲の隣に座った。

 南雲とその女子は知り合いらしく、俺と白亜が話してる間に話し始めた。

 時々飛んでくる敵意の視線が怖いな。

 なんて思ってるうちに白亜と俺を殺しそうな女子は昼飯を注文して、唐突に静寂が訪れた。

 雰囲気に耐えられなかったのだろう、瀕死の雅人が逃げようとするがそうはさせない。

 涙目で見逃せと訴えてくるが知ったことではない。


「聡樹、本当に信じていいの?噂は本当だったんでしょ?」


「大丈夫だ。黒鉄は頭がちょっとアレなだけだから」


「南雲さんや、聞こえてるぞ」


「おう、わざとだ」


「俺はそんなんじゃ心は折れないぞ」


「分かってるよ。そこのヘタレとは違うことくらいな」


「ぐはっ!」


 再び雅人を精神的に殺して逃げないようにしておく。

 やはり南雲とは仲良くやれそうだ。


「ナイス南雲」グッ


「おうよ」グッ


「なんか、仲良いね」


「南雲とは気が合うらしいんだよ」


「黒鉄君ぽくない発言だ!」


「お前は俺を何だと思ってるんだよ!」


「人と関わりたくない心が病んでる人」


「ちくしょう、半分正解だ」


「半分?」


「お陰様で結構立ち直りました」


 おいコラ、顔を赤くするのはやめろ!変な勘違いされるだろうが!

 ほら見ろ、敵意が殺意に変わった。


「そこ、ニヤニヤするな!笑うな!」


「なんか、思ってたのと違う」


 あれ?殺意が消えた?


「あんたは俺のこと何だと思ってたんだよ・・・」


「残虐非道なクソ野郎」


 いい加減俺も凹むぞ。


「ちょっと早苗。悠はそんなんじゃ無いわよ。あとほら、脱走犯。ちゃんと見張ってなさいよ?」


「あ、加耶さん。お疲れ様です」


「え、何で敬語?やめてよね」


「いやいや加耶さんにタメ口なんてとんでもない。怖くて出来ませんよ」


「ちょっと、そんなに言わなくても良いじゃない・・・」


 いやだって、完全にノビてる雅人引きずってたら怖いだろ。

 思わず敬語にもなるだろ。

 ちょっと悪ノリし過ぎて凹んじゃったからそろそろ普段通りにするけどさ。


「冗談だよ。で、昼飯は?」


「今から。ほら、南雲くんは悠の隣。結衣は悠の正面に移動して」


 ナチュラルに男女別に分けられた。

 現在テーブルの席順は俺目線で左から雅人、俺、南雲。女子側は左から加耶、白亜、南雲の知り合い女子。

 そのまま雅人が生き返るまでの間は雑談と女子が昼飯を食べ終わるのを待つ時間になった。


 雅人が生き返ったのは、女子が昼飯を食べ終えてからさらに10分ほど経った頃だった。

 雅人の復活を皮切りに、話題は再び俺の噂やら発言についての事に切り替わった。

 ちなみに復活待ちの間に軽く自己紹介的な事も済ませておいた。

 南雲の知り合い、というかパーティメンバーは上月 早苗という名前だそうだ。南雲とは幼馴染でパーティメンバーは南雲と上月の2人だけらしい。


「なんか、本当に噂通りの発言したとは思えないんだけど?」


「「「ちゃんと言ってた」」」


「その場で思いついた嘘をな!」


「・・・嘘?」


「ふぅ、やっと説明できる。実はな・・・」


 南雲と同じように話せる範囲で時系列ごとに説明した。


「・・・て訳で、本気で言った訳じゃないんだよ」


「何と言うか、その、苦労してるのね」


 主に白亜や加耶、雅人の方を向きながら感想を述べている辺り上月も同じような苦労をしてきたのだろう。

 つまりは南雲も雅人と同様にモテるってことか。

 まあ確かに雅人に負けず劣らず顔は整ってるし性格は雅人より上かもしれない。

 そんな奴がモテないはずがない訳だ。

 まあそれは上月も同じだろうけど。類は友を呼ぶというが、あれは本当だな。

 加耶の知り合いというだけあって上月も非常に顔が整っている。

 白亜曰く、美人系の部類で加耶と1、2を争っていたらしい。


「お互いな」


「わたし達はまだマシよ。変な噂を流された訳じゃないし」


「でも人数が少ない分、勧誘も入れてくれって言ってくる奴も多いだろ?」


「それは、まあそうだけど・・・」


 あ、なるほどそういうことか。

 なぜ2人パーティなのかちょっと分かった気がする。


「そういや聡樹、お前ら外には出たのか?」


「いや〜2人だから危ないと思ってな」


「出てないんだな」


「どうやって2日ほど過ごしてるんだよ」


「とりあえず手持ちの日本円をユルドに変えて何とか凌いでる。そろそろ危ないけどな」


「だからセキュリティの付いた部屋じゃなくていいって言ったのに!」


「バカ、おれはともかくお前はダメだろ」


 わぁ、デジャヴだ。

 他3人も同じような複雑な表情になっていた。

 その後すぐに雅人と俺は南雲と固い握手を交わし、加耶と白亜は申し訳なさそうな顔になっていた。

 よし、追い討ちかけるか。


「あの時俺たちがああした理由が分かっただろ?」


「その、大変よく分かりました」


「これからはちゃんと気をつけるね」


「まあ昨日今日で結構手持ちが増えたから、宣言通り今日は全員がセキュリティ付きだけどな」


 一応フォロー?を入れておいて話を戻す。


「で、南雲。今日はどうにかなりそうなのか?」


「ああ、今日はな。明日は流石に外に出ないとヤバイけど」


 なるほど。ならちょうどいいかな。

 しばらくはゆるゆるとその日の生活費が稼げれば良いと思ってるから2人で戦えるようになるまでサポートしよう。

 あれ、俺らしくないな。まあ良いか。


「じゃあ明日からしばらく俺たちと外に出ないか?」


「「悠らしくない!」」


 言われると思った。本人ですらそう思ってるよ。

 で、なんで白亜は笑顔な訳?あとで聞こう。


「えーと、おれからすれば願っても無い事なんだけど、良いのか?」


「少なくとも俺は良いぞ」


「もちろんオレも」


「当然、私もね」


「もちろん私も良いよ!早苗ちゃんは?」


「そりゃあ、一緒に行ってくれるなら心強いけど・・・」


「それじゃ決まりだな」


 明日のことは夜にでも決めれば良いだろう。

 それまではどこか落ち着ける場所で魔術作りでもしようかな。


「そういえばお前らチュートリアルは受けたのか?」


「「何それ?」」


 雅人のお陰でやる事が出来たみたいだ。

 だがこれで外に出なかった理由が分かった。

 そりゃ武器なしでスキルの使い方も分からないまま魔物と戦えと言われても無理な話だ。

 チュートリアルの事を説明して、午前のうちにやる事がなくなり暇になった俺がチュートリアルに付き添いに行くことになった。

 まあ案内すら必要ないような気がするので完全に俺の暇つぶしな訳だが。


「そうだ。白亜、魔術のチュートリアルどうする?」


「あ、そっか。そうだね、ちゃんと受けようかな」


「じゃあ白亜も一緒だな」


「今度は置いていかないでね?」


「言う相手間違ってる。それと、捕まえるな。だ」


「よ、容赦ないわねあんた」


「何のことかな?」


 笑顔で惚けておいた。

 そのまま見事に標的は上月に向いたので南雲のほうに話を振る。


「さて、南雲。お前は近接?遠距離?サポート?」


「近接」


「・・・意外とゲーム脳?」


「・・・まあな。人の事言えんのかよ」


 うん、言えない。

 ただまあそれは朗報だ。


「この世界はゲーム仕様だから、ゲーム脳は大事だぞ。ただし、ゲームはゲームでも痛覚アリのグロ注意な18禁デスゲームだけどな」


 話逸らしやがって、みたいな抗議の目を向けられたが気にしない。気にしたら負けだ。

 ゲーム脳なら通じる言い方をしたからある程度は伝わってると思うが、我ながら回りくどい言い方をしたと思う。


「そうか。うん、そうだな。ありがとう」


「おう、ちゃんと守れるようにならないとな」


「分かってる。死んでも守る」


「誰を?」


「決まってんだろ。さな・・・ハメられた」


「「ごちそうさまでーす」」ニヤニヤ


 いや〜(弄り甲斐のある)良い友達になれそうだ!



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