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世界がゲーム仕様になりました  作者: 矢崎未峻
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友達

 食堂まで行くと、雅人がいた。ちょうど注文したところらしく、端末をいじりながら料理が出てくるのを待っている様子だった。


「おっす」


「悠か。一緒に食うか?」


「おう」


 て訳で同席して昼飯を注文した。

 何が出てくるかは分からない。とりあえず雅人と同じものを注文しただけな上、そもそもメニューには値段しか書いてないのだ。

 いくらの飯なのかも分からない。ただまあお互い余裕があるわけでは無いので、そんなに高いものじゃないだろう。

 しばらく待つと、やはり雅人の方が先に運ばれてきた。

 しかしすぐに俺のも運ばれてくる。ある程度は合わせてくれたみたいだ。

 ここの食堂の店員もホムンクルスのようだが、他の店に比べて特別な入れ知恵でもしてあるのだろうか。柔軟な気がする。


「「いただきます」」


 そのままお互い無言で半分ほど食べ進めた頃、俺に客が来た。


「や、やっと見つけた・・・」


「あれ、聡樹じゃん」


「ん?あぁ、さっきの。なんだ?」


 体育館に行く前に面倒ごとを運んできた男が再び俺に声をかけてきた。

 恐らくまた同じ話題の面倒事なのだろう。しかし先程と違い、今は逃げられない。

 大人しく話を聞くとするか。


「さっきの続きだ」


「だよな、まあ座れよ。どうせならゆっくり話そう」


「ああ。・・・おれも飯食って良いか?」


「「もちろん」」


 断る理由はない。

 注文したのを見届けてから、話すように促すと色々話してくれた。

 まず、こいつの名前は南雲聡樹。同い年で雅人の友達。もちろん俺は知らなかった。

 南雲の話によると、噂の出所はやはりあの3人組の女だそうだ。

 噂は少なくとも俺たち2年の間にはもう広まっていて、学校全体に広がるのも時間の問題らしい。

 しかし幸いにもと言うべきか、尾ひれがついたり膨張したりする事なく端的な事実のまま広がっている。

 昨日のバカみたいに洗脳だのなんだのと言ってくることは無いし、そんな噂はないそうだ。

 これなら努力次第で撤回する事も可能だろう。


「噂の詳細は話した。次はおれの要求だ」


「あ、断る」


「まだ何も言ってねぇよ!!」


「どうせ俺にパーティを抜けろとかそんな感じの事言うんだろ?」


「くっ、正解」


「ははは、じゃあ無理だ。聡樹、こいつはもうそんな事では揺るがないぞ?」


「じゃ、じゃあ雅人!俺のパーティに「断る」入って・・・」


「(ちょっと気の毒だぞ)」


「せめて最後まで言わせろよ〜」


 ちょっと泣きそうになってるじゃん。


「悪いな。俺は昨日色々あって、何があっても抜けない事に決めたんだ。まあ3人の事は本人達の意思に任せるけど」


 ここでちょっとした爆弾を投下してみる。南雲がこの爆弾に気付かなければ不発弾に終わるが、どうだ?


「ん?待て。その言い方だと脅して仲間にしたってとこに違和感が・・・」


 おお〜、ちゃんと爆発してくれた。

 そこに気付いてくれただけで好感度はうなぎ登りだ。

 あれ、俺ってこんなに単純だっけ?

 さて今度は、こっちの話を聞いてもらう事にしよう。


「そりゃそうだろ。脅してないからな」


「・・・でも言ったんだろ?」


「言ったな」


「追い払うための嘘とはいえ、酷いけどな」


「あれしか思い浮かばなかったんだよ」


「いや待て、ちょっと待て。整理するぞ。まず黒鉄は噂通りの事を言った。間違いないな?」


「おう」


「で、それを言った理由が追い払うため?何をだ?」


 白亜を仲間にする経緯と屋上での3人組とのやり取りを、雅人と事実確認をしながら詳細に話した。

 実際に目撃している人が多いので白亜を仲間にするまでの話はすぐに信じてくれた。

 そもそも、そこに関して俺は褒められこそすれ恨まれたり責められた事はない。

 妬まれはしたが・・・。


「なるほど、うん。分かった。黒鉄。お前ってバカだったんだな」


「そうだぞ」


「おいコラ」


 失礼な奴らめ。

 てかこんな世界になってから俺バカってめちゃくちゃ言われてない?

 言われてるよな。なんでだ?


「ま、とにかく事情は分かった。もう何も言わない。お前らを信じる事にする。わざわざそんなアホみたいな作り話するとは思えないしな」


「サンキュー、助かる」


「にしても、黒鉄って良い奴だったんだな」


「悠はちょっと頭がアレなだけなんだよ」


「おい雅人、アレの部分を詳しく聞こうか」


「天然、キチガイ、バカ、逝ってる」


 よし、戦争だ。

 無言で殴りかかる。

 奇襲のお陰で俺が優勢だ。しかし徐々に押し返される。手を打たないとヤバイ。

 力で敵わないなら、言葉でも勝負だ。


「ヘタレには言われたくないな」


「ぐっ!お、お前だって白亜さんと何も無かっただろ!」


 思わず動揺して手が止まり言葉に詰まる。

 頬に冷や汗が一筋流れ、地面に落ちた。

 そして雅人に動揺に気付かれた。


「あ、いや、うん。モチロン何モナカッタゾ」


「・・・吐け」


「黙れヘタレ」


「ぐはっ!は、吐け」


「・・・うん。無理かな」


 成り行きで一緒に寝たとか言えるか!


「なあ、おれが居ること忘れてないか?」


「「・・・あ」」


 2人して顔から血の気が無くなった。

 やっちまった。これ絶対ある程度事情話さないと誤解されるじゃん!めちゃくちゃめんどくさいじゃん!噂より面倒じゃん!


「今の話だと雅人は橘と、黒鉄は白亜さんと同じ部屋で一夜を過ごしたって事になるんだが?」


 こいつ察しが良すぎるだろ!ほとんど正解です!

 し、しょうがない。誤解を招く言い方は避けながら事情を説明しよう。


「実はな・・・」


 昨日の熊退治の辺りからの大まかな流れを時系列ごとに話した。

 もちろん、それぞれの家に泊まる事になった事情も経緯も話した。


「・・・てわけだ」


「なるほど。それで、雅人は本当に何も無かったのか?」


「・・・お、おう」


「ヘタレかよ」


「ぐはっ!」


 雅人が死んだ!(精神的に)

 何故かこいつとは仲良くなれそうな予感がする。


「で、ヘタレは置いといて黒鉄は何かあったんだろ?」


「え?まあ、雅人よりは」


「「吐け」」


「だから言えないって」


 そこからは小学生の言い争いだった。

 我ながらとてつもなく幼稚な事をしてしまったと反省している。

 あ、もちろん雅人を弄るのは忘れていない。南雲と一緒に徹底して精神的にやってやった。


「どうあっても言わないってか?」


「言わないね」


「なら、諦めよう。お互いもう雅人弄りのネタも尽きただろうしな」


「そうだな。和解しようじゃないか」


 固く握手を交わしてフレンド登録をした。

 俺と南雲の間では、確かな友情が芽生えていた。



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