結界魔術とスキル育成
後書きに前話、今話で獲得したスキルの一覧があります。
一部補足情報あり。
生活魔術を使った脱出作戦はいくつか思い付いたけれど、どれも"たられば"が多分に含まれているので進んで実行する気にはならないものだった。
他に方法がなれば実行するしかないが、俺には頼みの綱がまだ一つ残されている。
『結界魔術』という響きからして何か防御系の術なのだろうと予想はできるが、とにかく習得してみよう。
『メニュー』から『スキル』に意識を集中する。すると
『結界魔術』
『生活魔術』
『勇者剣技』
『勇者魔術』
という項目が現れた。その内『勇者剣技』と『勇者魔術』には使用不可を意味する南京錠のマークが付いている。
この二つは漫画の中で勇者が使っていた剣技や魔術のことだろうか?使うことができれば強力な武器になっただろうが、今は無理なようなので諦める。
『結界魔術』の項目を開くと『スキルポイントを使用して結界魔術Lv1を習得しますか?YES/NO』と表示されたのでYESを選択する。
『結界魔術Lv1を習得しました。結界魔術"壁"が使用可能になりました。結界魔術Lv2を習得しますか?YES/NO』
と表示された。どうやら『結界魔術』は段階的に強化ができるようだ。
選択を保留にしたまま"壁"を使ってみる。
「"壁"」
使用時に"位置""大きさ""角度"を設定することができたので、前方2m、床から1m。縦1m横2m。床に対して手前に45度、俺に対して平行。と設定してみる。
指定した通りの位置、大きさ、角度でガラスのような淡く光る透明な壁が現れた。
厚さは1cmくらいで、押しても引いてもびくともしない。
試しに鉄の剣で切りつけてみると『45/50』と表示された。繰り返し切りつけると『40/50』、『35/50』と左の数字が減り続け、『5/50』になると全体にヒビが入り『0/50』になると同時に音もなく砕けて消えてしまった。
これは思った以上に使えるかもしれない。
俺はすぐに保留していた選択をYESにする。
『結界魔術Lv2を習得しました。結界魔術"箱"が使用可能になりました。結界魔術Lv3を習得しますか?YES/NO』
と表示された。とりあえず使ってみる。
「"箱"」
"壁"と同じく使用時に"位置""大きさ""角度"が指定できたので、前方2m、床から0m。一辺が1mの立方体。床に対して垂直、俺に対して右に30度。と設定してみる。
設定した通りの状態で"壁"と同じ見た目の"箱"が現れた。
動かない事を確認し、剣で切りつける。すると『55/60』と表示された。術のLvが上がったからか、耐久値が少し増えているようだ。
先ほど作った"箱"とは別の"箱"を作ってみる。
前方0m。縦横3m、高さ2m。床に対して垂直、俺に対して平行。と設定してみる。予想通り"箱"の内側に入れた。
内側からも剣で切りつけてみると『55/60』と表示された。内側と外側で防御力や耐久値に違いはないようだ。そのまま耐久値が0になるまで切りつけることで脱出する。
"箱"の検証を終え、結界魔術Lv3をを習得する。
『結界魔術Lv3を習得しました。結界魔術"魔壁"が使用可能になりました。結界魔術Lv4を習得しますか?YES/NO』
と表示された。名前からして"壁"の上位スキルだろうか?とりあえず"壁"と同じ設定で使ってみる。
「"魔壁"」
目の前に現れた"魔壁"は放つ光が緑色である以外は"壁"と見た目は変わらなかったが、試しに切りつけてみると一撃でヒビが入り『20/70』と表示された。
試しに放置していた"箱"を切りつけてみるが『50/60』となったので"魔壁"が極端に脆いのだろうか?
とりあえず"魔壁"の事は後に回し、結界魔術Lv4を習得する。
『結界魔術Lv4を習得しました。結界魔術"硬壁"が使用可能になりました。結界魔術Lv5を習得しますか?YES/NO』
と表示された。また"壁"の上位スキルか?とりあえず"壁"と同じ設定で使ってみる。
「"硬壁"」
今度は赤い光を放つ"壁"が現れた。とりあえず切りつけてみる。
ギリギリと金属が擦れるような音が鳴り、剣の先端が欠けてしまった。
"硬壁"を見てみると『79/80』と表示されていた。先ほどの"魔壁"と違ってかなり硬いようだ。
なぜ"魔壁"とこれほどの差が?と考えたところで一つの仮定を思いつく。
もしかしたら"魔壁"と"硬壁"は対になっている効果の"壁"なのではないだろうか?
"魔壁"は物理的な攻撃で10倍のダメージを負った。逆に"硬壁"は5分の1…なんなら10分の1のダメージしか負わなかったのではないだろうか?
となれば"硬壁"は物理攻撃に特化した"壁"、"魔壁"は魔術攻撃に特化した"壁"である代わりに特化していない攻撃への防御力が低い、という性質を持っているのかもしれない。
魔術で攻撃する手段が無いから確認する事はできないけれど、おそらく間違いではないだろう。相手によって使い分けられれば心強そうだ。
謎も解けたところで、結界魔術Lv5を習得する。
『結界魔術Lv5を習得しました。結界魔術"柔壁"が使用可能になりました。結界魔術Lv6を習得しますか?YES/NO』
と表示された。またしても"壁"の上位スキルである。とりあえず"壁"と同じ設定で使ってみる。
「"柔壁"」
今度は白い不透明な"壁"が現れた。光は放っていない。今までとかなり違う様子に戸惑いつつ、とりあえず切りつけてみる。
ボフッという空気の抜ける音と共に剣が受け止められてしまった。
"柔壁"を見てみると『85/90』と表示されていたので、防御力は通常の"壁"と同じようだ。
試しに飛び乗ってみたが、俺の体も問題なく受け止めることができた。
というか、すごく寝心地がいい。まるで高級羽毛布団に飛び込んだみたいだ。少しの間ゴロゴロと"布団壁"…もとい"柔壁"の感触を楽しんだ後、これを破壊する。
このままだと寝落ちしてしまいそうだったからね。
『武器"剣"の練度が一定に達したため"剣技"が解放されました。』
と途中で表示されたのは思わぬ収穫だった。後で余裕があれば習得してみよう。
続いて結界魔術Lv6を習得する。
『スキルポイントが不足しているため習得できませんでした。6/64』
と表示された。どうやらスキルポーションで増えた分をほぼ使いきったようだ。二本目のスキルポーションを飲んで、再度習得を試みる。
『結界魔術Lv6を習得しました。結界魔術"能力箱"が使用可能になりました。結界魔術のLvが一定に達したため、一部機能が解放されました。
《詳細設定》《設定記憶》《設定改変》
結界魔術Lv7を習得しますか?YES/NO』
と表示された。とりあえず一つ一つ試してみよう。
まず、《詳細設定》を使って普通の"壁"を作ってみる。
1m単位でしか設定できなかった"位置""縦横"と、設定が固定だった"厚み"が1cm単位で設定できるようになっていた。更に"位置"の代わりに"条件"が設定できるようになっていた。試しに、左腕の外側5cm。縦60cm、横40cm。厚み3cm。両角度とも左腕に対して平行。と設定してみる。
設定通り、左腕から少し浮いた空中に長方形の"壁"ができた。左腕を動かしてみると"壁"も同じように動く。
切りつけるのは流石に怖かったので、左腕の"壁"を放置していた"箱"にぶつけてみる。
"壁"は『57/72』"箱"は『45/60』と変化した。どうやら 1mより小さい数字を設定すると耐久値が下がるようだ。
次に《設定記憶》を試してみる。
左腕の"壁"を壊した後、《設定記憶》の機能の《記憶反映》で再度同一設定の"壁"を左腕に発動させることができた。
どうやら前回発動したものか予め設定を記憶させていたものならば設定する手間を省ける機能のようだ。
いくつか使えそうな設定を記憶させて次を試す。
左腕の"壁"に《設定改変》をしてみる。
《設定改変》は既に形を成している"壁"や"箱"の設定を変更できる機能なようだ。
左腕の外側10cm。縦2m、横2m。厚み5cm。両角度とも左腕に対して平行。と設定してみる。すると、一瞬で体を覆い隠せる大きさに切り替わった。
更に《設定改変》をしてみる。
左腕の"壁"を全設定値0と設定すると、一瞬で跡形もなく消え去った。"箱"でも試してみたが、こちらも問題なく消すことができた。これで壊す手間が省ける。
次に"能力箱"を使ってみる。
「"能力箱"」
使用時に"位置/条件""大きさ""角度"に加え"能力"が設定できるようになっていた。
"能力"の設定では"魔""硬""柔"が選択できたので"硬"を設定してみる。
"硬壁"をそのまま"箱"にしたようなものが出来上がった。名付けるなら"硬箱"といったところか。
さらに《設定改変》で"魔"や"柔"に設定を変更してみるが、こちらも問題なく"魔箱"や"柔箱"と呼べるものになったので、最後に"全設定値0"で消しておく。
続けて結界魔術Lv7を習得する。
『スキルポイントが不足しているため習得できませんでした。42/128』
と表示された。必要なスキルポイントがLv6のニ倍になっているみたいだ。
スキルポーションを飲む前に余っていたポイントと今余っているポイント、Lv6を習得するのにかかったポイントを計算してみると、スキルポーション一つで獲得できるポイントは100だとわかった。
これならLv7も問題なく習得できるので、最後のスキルポーションを飲んで再度習得を試みる。
『結界魔術Lv7を習得しました。結界魔術"隠蔽箱"が使用可能になりました。結界魔術Lv8を習得しますか?YES/NO』
と表示された。ここにきて今の状況で一番輝きそうな術が手に入ったようだ。さっそく使ってみる。
「"隠蔽箱"」
部屋にあった椅子が中に収まるように大きさを設定して発動した"隠蔽箱"の見た目に思わずツッコミを入れる。
「…これ、ダンボール箱じゃん」
目の前に現れたのは無地のダンボール箱だった。いや、確かに椅子は見えなくなったけど異世界にこんな物があったら逆に目立つだろ…と呆れていると、いつの間にか『隠蔽ON/OFF』と表示されたアイコンがダンボール箱の横に浮かんでいたのに気がついた。現在はOFFになっている。
そりゃそうだ、と苦笑しつつ隠蔽をONにする。
すぐにダンボール箱が透けていき1秒もしないうちに椅子ごと透明になってしまった。触れてみれば確かに同じ場所にあるのだが、目を凝らしても違和感すら見つけることができない。アイコンがなければ見失いそうだ。
試しに切りつけてみると『195/200』と表示された。いつの間にかニ倍以上の耐久値になっていたらしい。
隠蔽をOFFにしてみると元通りのダンボール箱が姿を現した。さらに"全設定値0"でダンボール箱消すと椅子が中から現れた。
これならいけそうだ。もう一度"隠蔽箱"を発動する。
俺の体を中心、床から0m。縦1m、横1m、高さ1.8m。床に対して垂直、俺に対して平行。と設定してみる。
すぐに周囲をダンボール箱が覆ったが、不思議と中からは外の様子が透けて見えるようだ。さらに、隠蔽をONにするとアイコン以外は完全に透明になった。
その状態のまま部屋の中を歩き回ってみる。
磨かれた金属製の鏡を覗いてみても、俺の姿もダンボール箱も『隠蔽ON/OFF』のアイコンも映ることは無かった。
あと、不思議と毛足の長い絨毯の上を歩いているのに足跡がつかなかった。踏んでいるのはあくまで"箱"の底部分ということなのか、それとも歩いた痕跡すら"隠蔽"しているのか…どちらにせよ周囲にバレる可能性は低そうだ。
"隠蔽箱"の検証を終え、一応結界Lv8を習得してみようとする。
『スキルポイントが不足しているため習得できませんでした。14/256』
と表示された。うん、無理。
やっぱりLvが上がる度に必要なスキルポイントが倍々に増える仕組みか…Lv8を習得するのはかなり先になりそうだ。
余ったポイントは剣技のスキルに割り振っておこう。
『剣技Lv1を習得しました。剣技"硬破斬"が使用可能になりました。剣技Lv1を習得したことで武器"剣"を装備している場合自身の攻撃力に武器の攻撃力が加算されるようになりました。剣技Lv2を習得しますか?YES/NO』
『剣技Lv2を習得しました。剣技"柔破斬"が使用可能になりました。剣技Lv3を習得しますか?YES/NO』
『剣技Lv3を習得しました。剣技"双連斬"が使用可能になりました。剣技Lv4を習得しますか?YES/NO』
そして剣技をLv3から4に上げようとしたところで
『スキルポイントが不足しているため習得できませんでした。0/16』
と表示されたのでスキル上げを終えて剣技の検証に移る。
とりあえず部屋全体を"隠蔽箱"と"硬箱"で覆って外に音や衝撃が漏れないようにする。
その内側に"壁""硬壁""柔壁"を設置する。
まずは剣技を使わずにそれぞれ一回ずつ切りつける。
"壁"『170/200』"硬壁"『197/200』"柔壁"『170/200』
となった。次に"硬破斬"を使って一回ずつ切りつける。
"壁"『110/200』"硬壁"『191/200』"柔壁"『140/200』
となった。次に"柔破斬"を使って一回ずつ切りつける。
"壁"『80/200』"硬壁"『188/200』"柔壁"『80/200』
となった。最後に"双連斬"を使って一回ずつ切りつける。
"壁"『35/200』"硬壁"『183/200』"柔壁"『35/200』
となった。与えられたダメージから推測すると、
"硬破斬"は硬いものに二倍のダメージを与えられる。
"柔破斬"は柔らかいものに二倍のダメージを与えられる。
"双連斬"はニ連続で切りつけて五割増しのダメージを与えられる。
といった感じか。
これで今できる事はやり尽くしたはずだ。
あとは脱出に必要な"仕掛け"をしてタイミングを待とう。
『アイテムボックス』
生活魔術
『点火』
『製水』
『製土』
『微風』
『照明』
『掃除』
『洗浄』
結界魔術
『壁』
『箱』
『魔壁』
『硬壁』
『柔壁』
『能力箱』
『隠蔽箱』
剣技
『硬破斬』
『柔破斬』
『双連斬』
Lv1~Lv2=初心者。
Lv3~Lv5=半人前。
Lv6=一人前。
Lv7~Lv8=ベテラン。
Lv9=超一流。
Lv10=???。