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打ち切りエンド・リトライ  作者: 刃乃下心
一章~亡命のち冒険者~
3/8

転移者特典と生活魔術

「勇者よ、ここが汝の部屋である。旅の仲間が到着するまで一刻ほどある故、それまで体を休めるとよい。何かあれば外の者に申し付けよ」

「はい…」



宰相が部屋を出た後、俺は自分の未来を考えて頭を抱える。


一刻…だいたい二時間後に来る仲間というのは、最終的に俺を殺す役目の連中だろう。

このまま何もしなければ、待っているのは死と破滅だ。

とはいっても部屋の外には屈強な兵士が待ち構えているし、窓は開くが人が通れるほどではない。

隠し通路の類いも無いし、部屋の中に使えそうな物は…


どうにかならないものかと部屋の中をうろうろしていると、ベッドの陰に隠すようにして置かれた箱に気がついた。

そして、その箱には"運命に抗う勇者へ"と日本語で(・・・・)書かれたメモが添えられていた。

この世界の文字はアルファベットを崩したような形のものに設定してあるのはずなのに、である。

俺は漫画の中でこんなものを用意してはいないし、この国の人間にこの箱を用意することはできない。

かなり怪しいけれど、他にこの状況を打破できそうな物もない。

覚悟を決めて蓋を開ける。しかし、箱の中には何も入っていなかった。


罠じゃないのはよかったけど…なんだかな…


肩透かしを食らったような気分で空の箱を見つめていると、突然頭の中に機械的な声が聞こえてきた。


『"転移者特典"を手に入れた』

『"メニュー"が解放された』

『"アイテムボックス"が解放された』

『"結界魔術"が解放された』


…ゲームかよ。

思わずツッコミを入れてしまう。

視界の端に『メニュー』と書かれた半透明のアイコンが浮かんでいるのが見える。視線を動かしても視界から外れたりはしないので、実際にそこにあるわけではないのだろうが…

試しに『メニュー』アイコンに意識を集中してみる。

すると、新たに5つのアイコンが表示された。

『アイテムボックス』

『パーティー』

『ステータス』

『スキル』

『マップ』

この内『パーティー』と『マップ』は南京錠のようなマークが付いていて、意識を集中しても反応が無い。

続いて『アイテムボックス』に意識を集中してみる。

こちらはすぐに反応があり、中にはさっき手に入れたらしい『転移者特典』が入っていた。

『開封しますか?YES/NO』と表示されたのでYESを選択してみる。すると『転移者特典』が消滅し、代わりに『鉄の剣』『皮防具セット』『生活魔術の書セット』『ノース銀貨×100』『スキルポーション×3』というアイテムが表示された。

『鉄の剣』に意識を集中してみると『取り出しますか?YES/NO』と表示されたのでYESを選択する。続いて『放出場所を指定してください』と表示され、視線で誘導できる矢印のアイコンが現れたので床の上を指定してみる。

『ここに放出しますか?YES/NO』と表示されたのでYESを選択する。すると床の上の空間に亀裂が生じ、その中から一本の剣が現れた。

手に取ってみると、ずっしりとした重さが伝わってくる。幻ではないようだ。

続いてアイテムボックスを操作して他のアイテムも取り出してみる。

『皮防具セット』を取り出すと、盾、胸当て、籠手、脛当てが現れた。ちょっと頼りないが何も無いよりはマシだろう。

『生活魔術の書セット』を取り出すと、7冊の本が現れた。それぞれの表紙には『点火』『製水』『製土』『微風』『照明』『清掃』『洗浄』とこの国の文字で書かれている。

『ノース銀貨×100』を取り出すと、麻のような素材の巾着袋に入った銀貨が現れた。ノース銀貨は日本円で約1000円の価値にしてあるから、だいたい10万円分あることになる。

『スキルポーション×3』を取り出すと、ハチミツのような色の液体が入った試験管が3つ現れた。ポーションという名前からして飲んで使用するのだろう。


さて、この『転移者特典』から現れたアイテムで現状をどうにか出来るのだろうか?

剣と防具はあるが、外の兵士に正面突破で勝てる見込みは無い。

かといって銀貨100枚程度では兵士の買収もできない。

となれば『生活魔術の書』か…

漫画の中の『魔術の書』は使えば魔術が覚えられるアイテムだったけど…

試しに『点火』の本を開いてみる。

すると『点火の書を使って"点火(イグニッション)"を習得しますか?YES/NO』と表示されたのでYESを選択する。しかし『スキルポイントが不足しているため習得できませんでした。3/5』と表示され、習得するか否かの表示に戻ってしまった。

おそらく"3"が俺の持ってるスキルポイントで"5"が必要なスキルポイントなのだろう。

通常時にスキルポイントを稼ぐ方法はわからないけれど、今は便利なアイテムがある。

一旦本を床に置き、スキルポーションの試験管を一つ手に取って中の液体を一気に飲み下す。

もう一度本を開き点火の魔術の習得を試みると、今度は無事に習得することができた。

俺は立ち上がって手を突き出し、"点火"を使ってみる。



「"点火(イグニッション)"」



結果から言えば発動はした。したのだが、規模は想像したよりかなり小さく、3cmほどの火が人差し指の先に数秒点るだけだった。

あくまで"生活"魔術というわけだ…

一応他の生活魔術も試してみたが、結果は大差なかった。

製水(メイクウォーター)』はコップ一杯分の水を作り出す術。

製土(メイクアース)』はコップ一杯分の土を作り出す術。

微風(ブリーズ)』は団扇で扇ぐくらいの風が数秒間吹く術。

照明(ライト)』はバレーボールくらいの浮かぶ光る球を作り出す術。

清掃(クリーン)』は指定した範囲を掃除後の状態にする術。

洗浄(ウォッシュ)』は指定した対象を洗浄後の状態にする術。

といった感じだ。


これでどうにかできるのだろうか?

説明パートは次回で終わり。

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