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迷宮主が行く!  作者: かな
5/11

オーク串の屋台前

 


「お待たせ〜」


「主~、遅いよぉ。」


 ポヨンと、ゴブさんに抱えられていたスーちゃんがその腕から飛び出し、私の胸に飛び込んでくる。


「ごめん、ごめん。一応、カードのチェックとか、色々あったんだよ。」


「大丈夫だったのか?」


「大丈夫だったよ・・・多分。」


 プルプルツヤツヤのスーちゃんをムニムニしながら、そっと目を逸らす。

 別になんにもなかったよ?


 重ねがけしていた隠匿の魔術を解除する。

 すると、カードに刻まれた真の情報が浮かび上がった。



 名前:アイン

 年齢:1017歳

 種族:迷宮核

 職業:迷宮主

 レベル:359

 技術:迷宮創造、魔術、魔法、体術、槍術、治癒術

 賞罰:迷宮踏破者、迷宮殺し、大虐殺者、魔物の天敵、人族の天敵、失せし秘法の体現者、治癒師、奇跡を起こす者、超越者



 やっぱり、見せられないよねぇ。

 種族なんて迷宮核だよ?迷宮核。もはや、人の形をした歩く魔石だ。

 いや、確か、私にはちゃんとした種族があったハズなのだ。コボちゃんがコボルトであるよう、私だって、迷宮核などという、種族なのかアイテム名なのか、よく分からない不思議生命体ではなかったハズなのだ。


「ほらほら、主。そんな難しい顔してないで、街を見に行きましょう?」


「そうだよぉ、主~。僕、もうお腹空いちゃったんだからぁ。」


 コボちゃんに背を押され、腕の中ではスーちゃんがプルプルと空腹を訴える。君、さっき朝ごはんを5人前は平らげていたよね?


「あんなのは朝ごはん前のお茶漬けなの〜。」


 訳の分からぬ自論を展開し、あっちあっち、と屋台の集まる方面を示す。

 しょうがないなぁ、と、ゴブさんじゃないけど、欠食スライムの為に私達は屋台から流てくる、美味しそうな匂いを辿るように、その場を後にした。




「くださいな。」


 スーちゃんを抱えたまま、オーク肉の串焼きを買い求める。普通に飼育されている家畜の肉より、値段は高いが、魔物肉の方が断然味は良い。


「おう、いらっしゃい!何本だ?」


「ん〜、23本、すぐ出来る?」


「出来合いので良ければ直ぐに出せるぜ!」


 屋台のおじさんはニコニコしながらとりあえず、と言って2本の串焼きを差し出してくれた。スーちゃんが体から伸びた触手で受け取り、待ってましたと1本目の串焼きを取り込む。


「嬢ちゃんの従魔かい?スライムが従魔なんて、珍しいな。」


「あら、これでもすっごく強いのよ?ワイバーンにだって勝っちゃうんだから!」


「ははっ!ワイバーンにだって?そいつは凄い!」


 私は大銅貨を7枚、おじさんに手渡す。すると、おじさんは大銅貨を1枚返してくれた。


「強い従魔を従えた、可愛い魔物使い(テイマー)のお嬢さんにサービスだ。またご贔屓に。」


「ふふっ、ありがとうございます。」


 残りの串焼きを包んでもらい、おじさんにペコリと一礼して、少し離れた所て待っていた、コボちゃんとコブさんに合流する。

 この短いやり取りの間、既にスーちゃんは串焼きを13本、食べ切っていた。


「はい、2人の分。」


 串焼きを2人に1本ずつ手渡して、私も1本、齧り付く。

 赤身の部分はしっとりとした弾力が、脂身の部分はあっさりとしているものの、脂の甘味がしっかりと感じられる。これで銅貨3枚は安いよね。オマケしてもらったけど。


 人族達の使う貨幣は、銅貨、大銅貨、銀貨、金貨、白金貨、紅貨の6つだ。

 銅貨10枚で大銅貨1枚に、大銅貨10枚で銀貨1枚、銀貨10枚で金貨1枚、金貨10枚で白金貨1枚、白金貨10枚で紅貨1枚になる。

 因みに、平均的な4人家族の一月の収入は金貨2枚程だ。



「やっぱり、オーク肉はウメェな。」


「歯ごたえもしっかりしてますしね。」


「俺はもうちっと、がっしりした歯ごたえの方が好みだがな。」


「歯ごたえも何も、貴方は岩だって齧るでしょうに。」


「スー程じゃねぇよ。」


 もう食べ切ったのか、2人はそんな事を言いながら、残った串をスーちゃんに渡す。スーちゃんはその串すらも取り込んで消化していた。


「ごちそうさまでした。」


 私もスーちゃんに串を渡す。清浄の魔術を使い、手に僅かに付いていた脂を洗い流し、未だ舌戦を繰り広げる2人に向き直る。


「ほら!喧嘩しないの!今から、新しいお洋服買いに行くんだからね!!」


「げっ!この前、新しく買ったばっかじゃねぇか!」


「あぁ!この街の服も主によく似合いそうですねぇ!」


「僕もお洋服見る〜!ヒラヒラした主、すっごく可愛いもん!!」


 あからさまに嫌な声を上げるゴブさん。コボちゃんとスーちゃんはウキウキと行く気満々だ。


「じゃ、ゴブさんだけここの迷宮潜ってる?夕方に迎え行くよ?」


「俺としても、そっちの方が有難いな。どうも、女の買い物は肌に合わねぇ。」


 それじゃあと、ゴブさんに従魔の証を渡す。これさえあれば、魔物と言えど、無碍な扱いを受ける事は無い。ただし、その魔物が何かしらの問題を起こした際の責任は魔物使い(テイマー)が負うことになるのだ。

 それ故、従魔の証を持っていたとしても、従魔と魔物使い(テイマー)は共に行動するのが一般的だ。まぁ、私達は色々、例外だからね。


「じゃあ、後でな。」


 ゴブさんは少しだけ背伸びをして、私の頭をポンポンと撫でると、一瞬で、その姿を消した。

 恐らく、宿に戻って装備を整えてから、迷宮に向かうのだろう。流石に、小さな迷宮とはいえ、装備も無しに潜れば、擦り傷位は出来るだろうし。


「じゃあ、私達はお洋服屋さんに出発だぁ!!!」


「「おー!!!」」


 可愛いお洋服があるといいなぁ・・・あ、アクセサリーも!!!

 鼻歌も高らかに、私達は商業区へ足を向けるのだった。



簡易キャラ紹介


アイン:オーク肉よりコカトリス肉の方が好き。食べ道楽より着道楽。


コボちゃん:肉なら割となんでも好き。しかし玉ねぎ、お前は駄目だ。


ゴブさん:口に入るならなんでも食べる。毒も無機物も関係ない。


スーちゃん:この世で消化出来ぬものなぞ無い。

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