冒険者ギルド
此処はヘイズ、煙の街。
巨大な鉄と炎の魔術、濛々と立ち上がる煙が支配する街。
「夜見てもすごかったけど、明るい時に見てもやっぱりすごいねぇ。」
「感想がすごいしか出てこないのは分かるが、あんまし口開けたまんまにすんなよ。こんな空気、美味くもないだろ。」
ポカンとしてたら、ゴブさんに口を覆われた。確かにここの空気は美味しくない。
絶え間なく動き続ける巨大な鉄達は、空すら煙らせ、全てを覆う。
空気中に漂うガスのせいだろうか?心做しか目がシパシパする。目だけではない、喉も若干の変調を訴えているようだ。
「主、とりあえず冒険者ギルドに、移動届けを出しに行きませんか?」
「うん、そうだね・・・」
ギルドかぁ・・・正直めんどくさいけど、これをしておかないと皆が危ない。
首に掛けてある銀色のカードをクルクルと指で弄びながら、目的地へ移動を始める。
この世界には冒険者ギルドなる物があって、世界各国で冒険者の活動をサポートをしているらしい。
まぁ、タダでそんな事をやっている訳では無く、現地の人間から依頼を受け、冒険者はその依頼をこなし、ギルドへ仲介料を納めている。
依頼の出来の善し悪しで、冒険者達はランク分けされており、ランクの高い程、難易度の高い、魔物の討伐依頼や迷宮の探索等の依頼を受ける事が出来る。逆に、ランクが低い内は、低レベルの魔物や街の近くにある薬草の採取、ご近所のお手伝いといった、簡単な依頼しか受ける事が出来ない。
冒険者のランクは、鉄、銅、銀、金、聖銀の5つだ。
鉄は駆け出し、銅になって1人前、銀で一流と呼ばれる。金と聖銀?もう国で抱え込むレベルダネ。金にしろ、聖銀にしろ世界で何人いる事か・・・金だって100に満たないし、聖銀なんて片手で足りる程だ。
まぁ、つまり、一般の冒険者は銀が最高ランクと言って、差し障りない。
そして、冒険者カードは冒険者のランクに合わせた色になる。
カードには、個人のステータスや賞罰なんかも記載されてるから、身分証明書にもなるし、街に入る際の審査だってオールフリーだ。
「主~、通り過ぎちゃうよ~?」
おっと、ボーッと歩いていたら、目的地に着いていたようだ。後ろの3人の視線が痛い。
「それでは、僕達は中に入れないので、ここでお待ちしていますね。」
「変なのに絡まれるなよ。」
3人は見たまま魔物だから、ギルド施設に入れない。私は、体内に埋め込んだ隠匿の魔術を更に重ねがけして、ギルドの扉を潜った。
ギルドの中には、様々な装備を身に付けた冒険者達と忙しく働くギルドの職員達がいる。
私が建物に入ると、皆チラリとこちらを振り返った。
私がこの街に来たのは初めてだ。皆、初めましての人達。
「初めまして!銀のアインです!!職業は魔物使いです!!」
「「「「「「はぁ・・・?」」」」」」
やっぱり、初めての挨拶は大切だよね?なんだか皆呆気にとられているように見えるけど、気にしないで移動届けを受付のお姉さんに渡す。
「あ、移動届けですね・・・あの、カードの提示をお願いしてもよろしいでしょうか?」
なんだか信じられない、と言った風にお姉さんがカードの提示を求める。
私は首にかかったカードをお姉さんに渡した。
名前:アイン
年齢:17
種族:人族
職業:魔物使い、使役:コボルト、ゴブリン、スライム
レベル:39
技術:魔術、操術、体術、槍術
賞罰:特に無し
お姉さんはカードを確認するとようやく信じてくれたのか、ニッコリ笑ってカードを返してくれた。
「ヘイズにようこそ、アインさん。何か困った事があったら、いつでもギルドにお越しください。」
どうやら、歓迎されたようだ。これで、安心してこの街で過ごす事が出来る。返ってきたカードを首にかけ直して、私もニッコリと笑った。
簡易キャラ紹介
アイン:迷宮主、主人公。年齢詐称も程々に。
コボちゃん:主1人で大丈夫ですかねぇ?心配性にも程がある。
ゴブさん:いやいや、たかが届け1つ出すだけだろ?心配性その2。
スーちゃん:主まだかなぁ?僕、お腹空いちゃったぁ。まだ食べるの?