盲目の少女
「姫様ーー!」
ガサガサと草が音をたててうざったい。
暖かい陽が照らしている森はとても綺麗でこんな事情がなければ、観光でもしたい気分だ。
呼び声に返事はなく、騎士――ミラルは肩を落とした。
(もう、ランネットは何をしてるんだ・・・)
ここまで探しても見つからないとなると、流石にイライラがつのる。
思わず、ミラルはため息をついた。
(どうせ、僕が行ったって文句を言われて駄々をこねられるだけなのに。)
どんどん大きくなっていくイラつきを抑えて、足を再び進めた。
「姫様ー!どこにいらっしゃいますかー!?」
敬語で姫――ランネットのことを探しているとミラルはいつもあのときの言葉を思い出す。
『最っ低!!!』
その言葉を思い出すとミラルは吐き気がした。
(仕方ないじゃないか。僕だって・・・。)
考え出すと止まらなくなってしまうのでミラルは思考を一時停止させた。
「~♪・・・♪〜」
森の奥から歌声のようなものが聞こえてくる。
なんだろうと耳を澄ましてみると、時々、獣の鳴き声まで聞こえてきた。
「・・・!もしかして、魔物に襲われてるんじゃ・・・っ!」
そう考えると、ミラルは歌声の方へと足を進めた。慎重に。
段々と大きくなっていく澄んだ声はとても軽快で、襲われているようには聞こえなかった。
着いた所は少し拓けた場所だった。
その真ん中で目に包帯を巻いた華奢な少女がいた。
歌声の正体は彼女だった。少女の周りには獣から小動物などがいる。鳴き声は彼らだが、少女を襲うつもりはないようで、むしろ少女の歌声を聴く観客のようだった。
木の陰からその様子を伺っていたミラルは安堵し、道を引き返した。
音を立てないように慎重に歩いたのだが、気が抜けたせいか植物と靴の擦り合う音を響かせてしまう。
かなり小さな音だったが、獣たちには届いたようで、彼らの視線が刺さった。
「グウゥ」と彼らは威嚇をする。それを少女は止めさせ、こちらに詰め寄ってきた。
「だれ・・・ですか?」
「あ、えぇっと・・・」
返答に困っていると、少女は手を伸ばし、その手を変則的に動かし始めた。
「どこ、に、います・・・か?」
その言葉で少女が目に包帯をしているのをミラルは思い出した。
きっと目が見えないのだろう。
ミラルはゆっくりと少女に近寄り、ゆっくりと驚かせないようにその手をとった。
「・・・あ、みつけた。」
少女は嬉しそうに笑顔をこちらに向けた。
「あの、わたしの、なまえ、しってますか?」




