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浪人ゲーマー

監察一日目。



サエキアカネの朝はそう早いわけではない。



組織の諜報部がサエキアカネのアパートに設置した監視カメラと盗聴器を使い、家の中を監視する。特別難しいことじゃない。



サエキアカネはあまり朝食をとらないタイプらしかった。今日もプレーンの食パン一枚で済ませている。







身の回りを調えたあと、サエキアカネは特に何かするわけでもなく、床に片肘をついて寝そべりながら何かの雑誌を読みふけっていた。



サエキアカネ19歳、女性、無職。

親族は既に亡くなっており、兄弟姉妹もいない。

一年前に県内の某大学に入学したが、とある事件により校舎は壊滅。

現在は親の遺した財産とアルバイトでの収入で生活しながら、他の大学の編入試験に落ちまくっている。



…………いわゆる浪人生。



こんな百合のゆの字も無さそうな女性、あんまり興味湧かないな。



まったく…………。







さらにしばらくして、彼女は携帯ゲーム機を起動させた。



僕自身、百合ゲームをするために人に自慢できるくらいにはゲーム機を持っているけれど、見たこともない機種だった。



往年のテレビゲームのコントローラーのようなシルエットや中心部の左右に取り付けられた二つの画面が一年半前に発売された機種に似ているが、あれには画面の間にあんな円柱状の透明なパーツは無かった。



イヤホンをしている上にカメラの死角に入ってしまい、何のゲームをプレイしているのかはわからなかった。







夕方。ようやく彼女が動いた。



いよいよ、恋人の所に行くのか?胸が高鳴る。







…………絶対違う…………!



彼女が訪れたのは、自宅付近の漫画喫茶だった。



ここで恋人と待ち合わせ…………?ムードの欠片も無い。



僕も客として入ろうとしたが、このお店の会員証を持っていなかったため、新しくつくることになった。



まずい、このままだと見失う…………!



「店員さん。ちょっと待っててください。すぐ戻りますので」



そう言って、僕は無線を使ってMr.サンクスマンに応援を求めた。



『オーケー、すぐにそちらへ向かおう』



「お願いします」



通信を終えてカウンターに戻ろうと振り返ったまさにその時。



「なんだこりゃ!?」



店員さんの素っ頓狂な声が聞こえた。



その途端、猛烈な爆風が起こった。



「うわっ!」



僕の体は簡単に吹き飛ばされ、地に伏した。



カウンターの上では、異形の怪物が咆哮している。



「アァァァァァァァッ!」



何だ、この怪物…………!まるで、レジスターをそのまま擬人化したような奴だ…………!



「フンッッ!」



怪物は紙幣の模様をした翼を広げ、天井を突き破って飛んで行った。



「ああもうっ!なんでこんな時に出るのよっ!」



サエキアカネが怪物を追って駆けて行った。



ああ、どうしよう。もう、失敗かな…………。



警察に、捕まるのかな…………。



「大丈夫かね!?立てるかい?」



「み、Mr.サンクスマン…………」



「安心したまえ。我々の組織はそんな簡単に見捨てない。少なくとも、私はそう思っているよ」



「ありがとう…………ございます…………!」



「さあ、早く追いかけよう」



「…………はい」



「あれえ、もういなくなっちゃったの?」



女の子の声が、聞こえた。



「君か……………………!」



今まで僕を支えてくれていた腕に、力が入る。



「あのいかにも百合百合しい少女は…………?」



「…………今詳しいことはあまり言えないが、我々の『敵』とだけ言っておこう…………」



「敵…………?」



「…………もう、走れるかね?」



Mr.サンクスマンの目が、本気だった。



「…………はい」



「そうか」



そう呟くと、彼は持っていた杖を思い切り地面へ叩きつけた。



「…………超杖変身(ちょうじょうへんしん)!」



刹那、Mr.サンクスマンの周りの瓦礫が重力に逆らって浮き上がり、白スーツにウエスタンハットを身につけた中年男性の身体は、杖から発せられた不思議な波動によって黄金色の戦士に変化した。



「おじさんもいたんだあー。久しぶり♡」



「帰国していたのか…………!」



「うん。那緒ちゃんと一緒にね。おいで、なーおーちゃん♡」



ドシンッ!



「あ、ああ…………!」



何コレ。



何処からか飛び降りてきた「ナオちゃん」らしき人物は、もう人間の姿をしていなかった。



一言で言うと、まるで神話に登場するミノタウロス。



三メートル以上はあるその巨体が、徐々に近づいてくる。



「早く対象の元へ行きたまえ!このままだと二人揃って肉塊だぞ!」



「…………すみませんっ!」



僕は、後ろを振り返ることもなく、一心不乱にその場を去った。

自分でも疑問ですが、「いかにも百合百合しい少女」ってどんな感じなのでしょうか?


ご意見いただければ嬉しいです。今後の参考にさせていただきます。

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