幕開けのエイチャー
同著者作「育みのエイチャー」とは登場人物及び設定が異なっております。
「この子を目覚めさせたいなら、『ヤクソーン』を手に入れなさい」
「…………は?」
さも当然といったように、目の前の巨乳おばさんこと「閻魔」は私にそう言った。
◇
その時は、突然やって来た。
街にたくさんの怪物が現れて、破壊の限りを尽くした。
私達は、偶然そこへデートに来ていた。
私の恋人は、私がトイレに行っていた間に怪物に襲われた。
急いで病院に搬送されたけど、体中が傷だらけで、瀕死の状態。
私が怪物に復讐を誓った直後のことだ。そんな突拍子もないことを言われたのは。
閻魔と名乗る彼女は、怪物達の調査を行う機関のエージェントだそうだ。
彼女の言う「ヤクソーン」とは、怪物達のボスが持っている対怪物用の薬草らしい。
待っててねチヅル、必ずヤクソーンを持って帰ってくるから。
◇
「うわ、凄い数…………でも、やらなきゃ」
これは、私に課せられた天からの使命なんだ。失敗は許されない。
敵の軍団を前に、私は閻魔から受け取ったプランター型のベルトのバックル「エイチャープランター」を腰に巻きつけて、タンポポクリートシードリングとチェンジクリートシードリング・エナジーザイという二つのツールを装填した。
“チェィンジ・エナジー!”
“愛の、神託!ダンダンダン・ダダン・ダン!ダン・デ・ライオォォォォォン‼︎”
軽快なリズムで変身待機音声が流れる。
その音に気づいた植物の姿をした怪物、スピリンテント達がこちらに向かってきた。
さあ、狩り…………いや、刈りの時間だ。
私は力強く、バックルを右手の掌で左向きにスライドさせた。
「変身!」
“タンポポ・ラァァァンド!”
地面からツタが伸びてきて身体に巻きついて、ほのかな光を灯して爆散した。
「はあぁぁぁぁぁぉぁぁぁぁっ!」
私は、黄色い異形の戦士へと姿を変え、軍勢の中に飛び込んだ。