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検定編5

そして次の日、検定第3回戦が開始された。

「まずはアリシアか。相手は第五学校の生徒…何もなければいいんだが…」

「どうかしたの?」

横にいた凛が祐の言動に首を傾げた。

「いや、第五学校の生徒たちが他よりかなり強いから大丈夫かなって。」

「大丈夫よ、あれでもランキング3位なんだから。」

「そうだね。」

祐は凛に笑って見せた。

昨日のことは皆には言えない。西城家の名は知れば危険が及ぶ可能性のあるものだ。何かあっても俺だけで対処しなくちゃ。

アリシアの試合が始まった。

祐の心配をよそに試合は一方的な展開になった。

相手は中距離型だったが、アリシアの遠距離魔道に手も足も出ていない。

稀にアリシアに魔道が届くこともあったが、その魔道もアリシアの障壁によって阻まれる。完全にアリシアの独壇場だった。

そこかしこで「あれが3位か…」「やっぱりワンコーラムに勝つなんてむりなのよ…」という声が聞こえる。

確かにこの試合を見ればそう思うだろう。だが、明らかに機能クーデリアが言ったこととは違う。今の相手からは殺気は愚か、闘志すらも感じられない。一体どういうことなのだろうか。何か裏があるのだろうか。

祐がそんなことを考えているうちにアリシアの完勝で試合は終わった。

そして、次は祐の番だ。相手はランキング5位、第五学校の生徒だ。

祐はみんなから激励をもらい、控室に向かった。

今回は誰もいないようだった。まぁ毎回居られても困るが。

「さて、相手が何をたくらんでいるのか見極めなくちゃな。会長は敵の狙いはおれだと言った。なぜ俺を狙うのだろうか。」

試合の時間になった。

祐は未だ考えに耽っていた。

それが敵に隙を見せていたとも知らずに…

「僕の事無視しないでほしいな!」

祐はハッとした。すでに相手は眼前に迫っていた。咄嗟に警棒を前に出し守る。

しかし、相手の技の衝撃が激しく壁まで吹き飛ばされる。

「あれ?君の武器は光剣じゃなかった?もしかして出し惜しみしてる?それはちょっと許せないな!」

声はかなりほんわかしていたが後半急に声が荒くなった。そして相手の速さが倍増した。祐は跳躍で逃げ出した。

しかし

「遅いよ。」

相手はもう目の前にいた。

祐は再び壁に叩き付けられた。

俺は何をしていたんだ。相手は5位だぞ。考え事してて勝てるわけがない。

祐は左ポケットから光剣を取り出した。

「お!やっと本気?今まで手加減しててよかった。」

また初めのほんわかした声に戻った。

「すまないな。おかげで目が覚めたよ。」

祐は光剣に警棒をはめた。

そして光剣を引き抜いた。

「へぇ、真っ黒な剣なんて見たことなかったな。じゃあ僕も。」

そういうと相手は今まで使っていたナックルを捨て、光剣を取り出した。

「これはね、『Thunder』って言うんだ、意味は雷だったかな。これのおかげで僕はあの速さが得られてるんだ。」

相手が引き出した光剣は黄色だった。

引き抜いた途端に相手は直進してきた。

相手の速さが尋常でないことはもうわかっている。ならよけずに受けるしかない。

祐は剣を前に構えようとした。しかし、咄嗟に後ろに構えなおした。

「へぇ、よくわかったね。」

相手は祐の後ろにいた。それを祐は受け止めていた。

「お前は殺気を殺していると思ってるのかもしれないが微量ながらも殺しきれていない。そしてその微量な殺気でも俺にはわかる。」

相手は驚いた顔をした。

「すごいね、君は。ボスの言ってた通りだ。」

「ボスだと?」

「なら僕も本気を出そうかな。」

また声が荒々しくなった。さらに剣の重さが倍以上になった。

「くっ!」

「まだまだだよ。」

さらに相手の剣が重くなる。殺気も濃くなる。

このままの態勢では殺られる!祐は柄のボタンを押し、加速の魔道で敵から距離を取った。

「へぇ、君も速いね。」

相手の口元は笑っている。だが目は全く笑っていない。

この試合を見ていたアリシアが驚いた顔をしていた。

「なに…あれ。」

「どうしたのよ。」

「あのひと、この前はあんな人じゃなかった。一体何があったの…」

「もしかすると、第五学校の生徒が急に強くなったことと関係があるのかもしれないな。」

このとき凛は思い出した。祐が「まずはアリシアか。相手は第五学校の生徒…何もなければいいんだが…」と言っていたことを。つまり彼は何かを知っているのだ。そして今の彼の相手は第五学校、しかもワンコーラムである。応援したい。しかしここから何を言っても彼には聞こえない。会場では試合開始と同時に上級のウィザードが試合の技が観客に被害を出さないように透明な障壁を展開している。それによって内部からの音は聞こえるが外部からの音は完全に遮断されている。

はずだった。

突然相手の動きが止まったと思ったとき相手の光剣の大きさはステージの端まで届く長さになっていた。

そしてその剣が祐目がけて振り下ろされる。

祐はギリギリのところで回避したが、その剣は奥の障壁を引き裂いた。

幸い観客に被害は出なかったが、ステージの端が削れ、観客はパニックを起こした。

しかし、そんなことはお構いなしに相手は剣を振り下ろし続ける。障壁は一部でも破壊された瞬間に効力を無くす。つまり今会場にはステージと客席を分けるものは何も無い。

その状態でも相手は剣を振り下ろす。そのたびに会場が破壊される。


これ以上逃げるのは観客にまで被害がでる可能性がある。祐は光剣を前に出し魔力を集中させた。

「初めましてマスター。私は光剣『Suction』に宿る者です。」

脳に直接声が響いてきた。

「今は自己紹介とかはいい。あいつを止められるか?」

祐は脳内でそう言った。

「マスターであれば可能です。」

「なら頼む。」

「わかりました。モード“ウィップ”に移行します。」

光剣が剣の形からしなやかな鞭になった。

「この鞭はマスターの込める魔力によって最大10メートルまで伸び、触れた者の魔力をマスターの意志によって光剣に吸収します。それではマスター頑張ってください。」

そう言って脳内から声が消えた。

祐はその鞭をひるむことなく振り下ろされる光剣の刃に向かって打った。

鞭はみるみる長さを伸ばし光剣に巻き付いた。

祐が力を込めると鞭が一度光を発し、その瞬間剣の長さが縮んでいった。

「なに!魔力を吸収するだと!?」

相手は光剣を一度消した。

祐は間髪入れず、自己加速で走り出す。

同時に脳内で呼びかける。

「鞭を剣に戻してくれ。」

「わかりました、マスター。モード“ソード”に移行します。」

相手の目の前に着いたとき、光剣はすでに剣に戻っていた。

祐は容赦なく剣を振り下ろした。

相手は防御が間に合わずまともに切られ、地面に倒れた。

「くっそう…」

しかし相手はまだ意識があった。


今回の検定では相手のHPヒットポイントを0にするか相手を気絶させなければ勝敗は決まらない。HPは祐が70/300、相手が60/250と、まだ残っている。

祐はもう一度剣を振り下ろした。

そのとき相手はすでに起き上がる寸前で、その剣は相手の光剣に受け止められた。

「少し予想外だよ…君がこんなにもやるなんて…」

つばぜり合いをしながら相手が言った。

この状態なら一度剣を消してもう一度出せば相手を切れる。しかし剣を消した瞬間に着られる可能性もある。いまだ何秒で剣が出せるかわからない状況で試すことはできなかった。

「お前らのボスは誰だ?」

相手が少し驚いた。

「おやおや、戦闘中にそこまで考えているとは。でも残念だけど教えられないな。」

最後の言葉と同時に相手は祐を弾き飛ばした。

それから数秒間会場に静寂が生まれた。

観客はすでにほとんどいない。いるのは凛、アリシア、権堂の三人と残り数名だ。

おそらく次の一撃で勝負が決まる。そして今の状態では先に動いた方が勝つだろう。しかし、その一撃に失敗したとき確実に負ける。

両者ともに、動くことが出来ず数十秒が経った。

片方の選手が先に動き出した。それに焦ったのかもう片方の選手も動き出した。

しかし、これは愚策だ。この状況ならカウンターを狙う方が効率的だった。

その結果、中央よりややずれたところで、激しい音が鳴り、砂埃が舞った。

砂埃が消えたとき、立っていたのは祐だった。

残りHP20/300対0/250でBブロック3回戦第一試合は藤谷祐の勝利となった。



読んでいただきありがとうございました。

今回は3回戦、ワンコーラム戦です。

祐くんはギリギリまで追いつめられます。でもまぁ、主人公なので勝ってしまいます(お約束ですね、あきりたリですいません)

次回は凛と権堂の試合とその続きを書くと思います。

よければ読んでください。


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