天界来訪編15
祐は愛花から受け取ったばかりの剣を見る。
すると、
「すいません、やり取りが面白くてつい声が出てしまいました。」
ラグエルが姿を現した。
「ええ!?」
愛花は急に現れたラグエルに驚きかなりの速度で壁まで下がっていった。
「お前な…」
祐は呆れた顔でラグエルを見ている。
「愛花、こいつはラグエルっていうんだ。理由はわからんがこの剣に宿っているらしい。」
「宿っている…?ラグエル…?」
愛花の頭の上は?マークでいっぱいだった。
「はい。私はラグエル。あなた方の言う七大天使の一人です。」
愛花は開いた口が閉じないという言葉が合いすぎる表情だ。
「…ラグエル、すぐに信じろというのは無理だと思うぞ。」
「そうですか?あなたはすぐ信じたようでしたので。」
「俺は似たようなのを知っているからだよ。」
「あ、あの…」
やっと整理がついたのか愛花が会話に入ってきた。
「ラグエルさんはそのソウルに宿っているというのは本当ですか?」
「はい。私たちは大戦時に力を使い果たして消え去るところだったのをなんとかソウルに宿って今生きながらえているのです。」
「なるほど…」
そう言って愛花は自分の腰に手を持っていった。
「とりあえず今の私にわかることは。」
愛花は腰から短剣を引き抜きラグエルに飛び掛かった。
「あなたが兄さんを騙しているということです!」
「なっ!」
祐は愛花の右手に短剣が見えて咄嗟に持っていた剣を両手で持ち掲げてラグエルの前に割って入った。
鞘と短剣がぶつかり愛花は飛び掛かる前より少し前の位置に着地した。
「兄さん!なんで邪魔するんですか!」
「いや、なんでって言われても…」
愛花は今にも飛び掛かりそうな目をしている。
祐はとりあえず止めたが、ラグエルが騙していないという証拠も騙しているという証拠も持っていないことに気が付いた。
祐が振り返るとラグエルも戸惑ったような顔をしている。
「兄さん!退かないというなら兄さんごと切ります!」
「いや、まて。それじゃ本末転倒だから!」
祐の必死の制止にも耳を傾けず愛花は短剣を振りかざした。
それをなんとか受け止めると、
「そうですよね。」
祐の後ろから声が聞こえた。
「いきなり何を言っても信じてもらえませんよね。」
ラグエルがうつむきながら話し始めた。
「ラグエル?」
「ですが、私には祐さんしかいないのです。私を扱える人は限られています。そして私は祐さんと離れると実体化もできません。この悪魔王が復活しようとしているときに仲間を探さなければならない私には祐さんの力が必要なのです。」
ラグエルはそこで間を置いた。そして愛花を見た。
愛花は何も言わず黙ってラグエルを見ていた。すでに短剣は下げている。
「愛花さん。私を認めなくても構いません。ですが祐さんのそばにいることだけ許してもらえませんでしょうか。」
ラグエルは腰から頭を下げた。
「あの、えっと…」
それを見た愛花はどうしたものかと動揺している。
「愛花。」
祐は愛花に話しかける。
「落ち着いたか?」
「う、うん。」
愛花の肩に手を当てて語り掛けると愛花は動揺も取れたようだった。
「俺はラグエルを信じる。お前も認めてやってくれないか?」
「は、はい…」
祐が肩から手を外すと愛花はラグエルに向かい、
「ラグエルさん…」
愛花は下を向いていた。その顔は恥ずかしいのか赤くなっていた。
「すいませんでした!」
「…はい?」
ラグエルはポカーンとしていた。
「私すぐ頭に血が上って考えられなくなっちゃうんです…だから、」
愛花は顔を上げて、
「信じてみようと思います。ラグエルさんのこと。」
「ほんとですか!ありがとうございます!」
ラグエルは笑顔で愛花に駆け寄った。
2人は手を握り合った。
「兄さんのことよろしくお願いしますね。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
祐はその光景を観て安堵と共に疲労感を覚えた。