天界来訪編11
「きゃあ!」
横に居たクリスティナが大きな悲鳴を上げた。
「どうした!?」
慌ててクリスティナの方を向くと彼女の後ろに3人の男がいた。
「いい体してんじゃねーか。」
クリスティナは後ろに手を当てて顔を真っ赤にして男たちを睨んでいる。
どうやら体を触られたらしい。
「おまえ、俺たちと一緒に来いよ。」
男たちが見下すように笑いながら言う。
「ふざけないで。行くわけないでしょ。」
クリスティナが睨んだまま言い返す。
「それじゃあ、無理やりでも連れて行こうか!」
男たちが首元からペンダントを取り出す。
ペンダントに触れると強い光が辺りを包む。
光りが晴れると祐の目の前に赤いソウルを身にまとった男たちがいた。
「それは…ソウル!」
クリスティナが驚いたように男たちを見る。
さらにポケットから何かを取り出そうとしたがその前に、
「…あの俺のこと忘れてないかな。」
祐がクリスティナの前に割って出た。
「あん?誰だてめぇ。男に用はねーよ。」
男が剣を振り下ろす。
祐はそれを余裕で躱す。
(こんなことならデバイス持ってくるんだったな…)
どうやらこの世界では魔力の回復速度が異常に遅いらしく、アイリスとの勝負以来魔力を使うことを抑えていた。そのためデバイスも持ち歩かないことにしていた。(デバイスを持っているだけでも微量ながら魔力を放出してしまうからだ)
「当たらないよ。」
祐は無表情で言葉を返す。
「てめぇ!」
男がもう一度剣を振り下ろす。
だがそれも祐に当たることはなかった。
だが、男の顔には笑みが浮かんでいた。
「西城君、後ろ!」
クリスティナの声が響いた。
祐が後ろを見ると、さっきまで男の横に居たはずの2人が祐の背後に回っていた。
そしてその2人はすでに振りかぶり終えている。
そして2方向から祐に剣が振り下ろされる。
「くっ!」
祐は斜め前に出ることでそれを何とか躱す。だがダメージはなかったが服が少し切れてしった。
さらに祐が躱した場所には、男が構えていた。
「その程度かよ!」
男が剣を握っていない左手で祐の腹を殴る。
「ぐっ!」
「ソウルも持ってない奴が出てくるんじゃねぇ!」
さらに右手の剣で祐を薙ぎ払った。
祐は普通ではありえない距離を飛ばされた。
(これが…ソウルの力か。)
祐は倒れながらにそう思った。
「さて、次はあんたの番だ。」
男がクリスティナに向かってそう言う。
クリスティナは目を細めて左袖をまくり上げた。
そこには真ん中で石がきらめくブレスレットが付けられていた。
「はは、お前一人で俺たち3人を相手にするってか?」
男たちはそろって笑い出した。
「…やってみなきゃわからないわよ。」
クリスティナの額には汗が流れている。
「そうかい、なら傷つかない程度に遊んでやるよ!」
男が剣を振り下ろす。
クリスティナも剣を抜いてそれを弾き飛ばす。
クリスティナのソウルは相手のソウルと似た青いソウルだった。
続いて後ろからきた相手を弾き飛ばした勢いのまま剣で薙ぎ払う。
だが3人目は対処しきれず、左側から攻撃を食らった。
直前に受け身を取ったようで、ダメージはほとんどない。
(1対1なら負けることはない。だが相手は3人だ…)
祐はなんとか体を起こしてその戦闘を見た。
そして立ち上がったそのとき、目の前にさっきまでいた露店が見えた。
(あれなら!)
祐は全速力で駆けだす。
そして露店に着くと、
「これ借りるぞ!」
店主の承諾を得る間もなく祐は一本の白い剣を手に取った。
目の前ではクリスティナがギリギリのところでダメージを回避している。
だが、またしても3連続攻撃によって追いつめられ、3激目を食らおうとしたそのとき、
祐がそれを剣で何とか防いだ。
「はぁ…はぁ…ギリギリだな。」
「西城君…大丈夫なの?」
「それはこっちのセリフだ…」
祐は思いっきり力を込めて男を吹き飛ばす。
「おうおう、やるじゃねーか。でもお前らじゃ俺らには勝てねーよ。早くあきらめろ!」
男が走って剣を振り下ろす。
クリスティナに向かって振り下ろされた剣だったが、祐がそれを受け止めた。
そして男とつばぜり合いになり、
「確かに今の俺じゃあお前たちに勝てないかもしれない。だがそれはお前らにソウルがあるからだ。今から見せてやる。俺のソウルを!」
祐は相手を吹き飛ばした。
そして剣を目の前に出すと、左手で鞘、右手で剣の柄を強く握るとゆっくり鞘から剣を抜き始めた。
抜かれ始めた剣は眩い光を放ち、辺りを包んでいった。
祐の目の前も同様に白一色だった。
そして目を開くと、そこは辺り一面が花で囲まれた庭園だった。
祐はその中心にあるガゼボにいるようだ。
祐の奥には一つ椅子があり、そこには誰か腰かけているようだった。
「また、別世界か…」
「また?」
座っていた人物が疑問を持ちながら立ち上がった。
その背中には2枚の白い翼がある。
「あなたは天使なのか?」
「ええ、そうです。」
ふわりと翻る。そこには長い薄緑色の髪を伸ばした、美しいというよりもまるで絵に出てきそうな女性がいた。格好は足先まで届きそうな長いワンピースだ。
「私の名前はラグエル。あなたは?」
「俺は西城祐だ。」
「西城祐…それが私を久しぶりに解き放ってくれた方のお名前なのですね。」
ラグエルは慈愛に満ちたほほ笑みで祐をみながら言った。
「そして、どうやらあなたは今力を求めているご様子。」
「あぁ。」
「気になることがいくつもあるでしょうが、今は時間が無いようです。力をお貸ししますので、時間のある時に剣に呼びかけてください。」
ラグエルがそういうと祐を再び光が包み込んだ。
読んでいただきありがとうございます!
予定通り更新することが出来ました!