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検定編1

バスの中は2年生や3年生で和気あいあいとなっていた。

選手として出場するのは9人だが、それぞれにデバイスのチューナー、(チューニングをする人のことを俗にそう呼ぶ)がついているためバスの中には17人の生徒と3名の教師が乗っていた。なぜ18人ではなく17人なのかというと、のちにチューナーを選ぶと言われたとき祐が自分でやったほうが早いとデバイスを見せて言ったからだった。

そのデバイスのチューニングを見たとき、半数のチューナーが祐は選手よりチューナーの方がいいのではないかと言ったが、事件を解決した戦闘能力があるなら選手の方がいいと選手一同プラス残りのチューナーが言ったので結局選手となった。

検定会場までは2時間もすれば着くのだが、第一学校は前日の朝に出発していた。

当日慌てないようにというのも理由の一つなのだが、現場の気象状態や、機械では計測できない肌で感じる圧迫感などを先に感じるのが一番の理由だ。祐は空気に干渉する魔道を使わないが、凛やそのほかにも使う人は大勢いる。なのでほかの学校も前日、学校によっては二日前から現地入りしているのだった。

これから検定期間中泊まるホテルに到着した第一学校の生徒は選手とチューナーに分かれ、選手は会場周辺、チューナーはホテルに機材を運び込み、使用する機材のチェックとデバイスの確認をすることになった。検定ではデバイスによって魔道に差が出ないよう一定の規格が決められている。祐のデバイスはもともと規格内だったが、ほかの生徒たちのは規格よりハイスペックだったのでエンジニアが低スペックのデバイスになるべく元のデバイスと遜色のないようにチューニングしている。(といっても一学生の域でスペックの違いを感じさせないのは無理に近い話なのだが)

そして祐はというと、選手なので会場周辺に行くつもりだったのだが、凛とアリシアによってホテルから会場とは逆方向の繁華街に連れていかれていた。

「はぁ…」

「祐、どうしたの?」

祐は気疲れしていた。ただでさえ凛との噂が立ち、いろいろ言われていたのに、そこにランキング4位で凛とはまた違って好印象を与えるアリシアまでもが近くにいつもいるのだ。周りから、(特に男子)からの視線が痛い。しかし、凛やアリシアにとってこの手の視線は慣れたものだ。全く気にしていないというかもともと気がついてもいなかったようだ。

しかも、気疲れしているなんて言えない。

「いや、なんでもないよ。」

結局このような答えしか返せないのだった。

凛は「そう?」とまだ少し疑問に思ったようだが、繁華街に入った途端店に目が行ってしまいすぐに忘れたようだった。

それから数時間。祐は店から店へと連れまわされていた。

「よし、次あそこね。」

「ま、まだ行くのか…少し休まないか…」

「そうですわね、そろそろ休憩しましょう。」

そういってアリシアが指さした方向には喫茶店があった。

3人はそこに入ると各々飲み物を頼んだ。凛とアリシアは買ったものがにああだこうだとずっと話していて、祐は多少体力が回復しただけだった。


そのあとも買い物は続き、ホテルに戻ったときには6時を過ぎていた。昼にはついていたのだからおよそ6時間買い物をしていたことになる。

祐は部屋に入ると、制服を脱ぐことも忘れてベッドに寝ころんだ。すると相部屋の権堂から声が駆けられた。

「大丈夫か?」

「まぁ、明日には回復してるさ。」

なぜこの二人が相部屋なのかというと、検定に出場する選手の中で一年生は祐、凛、の2人。そして二年生は権堂、アリシアの2人。残りの5名はすべて3年生だった。(アリシアは編入の段階で一年次の単位を超えていたため二年への編入となった)

3年生は男子5のため、3人部屋と2人部屋に分かれているが1、2年は各男女1名と学年で分けると男女が相部屋になり、男女を相部屋にするわけにもいかないので、凛とアリシアが相部屋となり、残った祐は権堂と相部屋になったのだった。

祐は凛とアリシアが相部屋でトラブルを起こさないと願っていた。

「ところで、会場周辺はどうだった?」

「あぁ、感じは変わらない。ただ、」

権堂の表情が曇った。

「ただ、悪意を感じた。ってところか。」

祐は権堂を見て言った。

「悪意というより、殺気だな。お前も会場に行ったのか?」

「いいや、行ってはいないが、繁華街にも悪意が欠片だが感じられた。泥棒程度のレベルじゃない悪意をな。」

「このことはほかのやつには?」

「まだ話してないぜ。心配を与えても検定に悪影響しかないからな。」

「そうだな。」

2人は自分たちも一生徒であることを棚上げにしてみんなにはこのことを黙っておくことにした。

「さて、あとは自分のデバイスチェックでもするかな。」

「そういや、お前は自分でするんだったな。」

祐は自分の持ってきていた大きめのケースを持ち出し、机の上に置いた。

ケースを開けるとそこには最新式の学校の物よりハイスペックのチューニング装置が入っていた。

「…それお前の私物か?」

「あぁ、正確にはうちの私物だな。」

「お前の家は富豪か何かか?」

「特に普通の一般家庭だが。」

権堂は「一般家庭でそんなの持てる家庭はないぞ。」と言いたかったが、祐の「何を言っているんだ、こいつは?」と言わんばかりの顔に「こいつに一般常識はきかないな…」とあきらめた。

そこから祐は自分のデバイスのチェックを始めた。権堂に会場周辺の体感気温等を聞きながら微調整を重ね、12時ごろには終えていた。

2人は作業が終わるとそのまま床についた。


一方、凛とアリシアは…

「どうしてあなたと一緒なのかしらね…」

「仕方がありませんわ。ほかに女子は居ないのですから。」

2人はすでにパジャマ姿だった。凛は動きやすそうなものなのに対し、アリシアのはフリルまでついた完全にお嬢様が着ていそうなものだった。

2人は先ほどまで口喧嘩、(といっても手が出る寸前だった)をしていた。どちらともなく部屋を出ていこうとしたが、時刻は11時を過ぎていた。この宿舎は軍の建物であるため当直兵が巡回している。こんな時間に出歩いていては呼び止められる可能性があったので出るに出られなかった。

そして、喧嘩が一時的にとはいえ終わり、

「私は先に寝るわ。」

凛はそう言って床についた。

凛が完全に眠ったのを確認してアリシアは携帯を取り出した。

画面に映っていたのはメールだ。そこには送信者名が無く、要件も時間と場所が書かれているだけだった。アリシアはそれを真剣な眼差しでみて、画面を閉じた。その時の彼女の顔は覚悟を決めた人間のものだった。


あくる日、ついに検定の日となった。

第一学校生徒は全員がそろったことを確認して開会式の行われる会場中心部にバスで向かった。

検定は去年とは違う場所で開催されている。それは対戦方式となったことでステージを広くする必要が出たことに加えて、時間の短縮のため数試合を同時に行えるようにするためだった。

そのため検定会場はかなり大きく、ホテルから中心部に行くにはバスを使う必要があった。

開会式は特に何もなく終了した。

長ったるい来賓のあいさつを聞き流しながら他校の生徒を見る。バスに乗っていた間にワンコーラムの顔写真くらいは確認しとけと言われたので見ておいたが1位の姿が見当たらない。今回は出場していないのだろうか、ということは1位から下がるのだろうがいいのだろうか。そんなことを考えているうちに開会式が終了して今は第一学校に与えられたスペースに建てられたテントにいる。ここで作戦会議やデバイスの最終調整などをする。

祐が何げなくほかのチューナーがチューニングをしているのを見ていると後ろから声を掛けられた。

「祐、一回戦の組み合わせが出たわよ。」

来たのは凛だった。

「わかった、今行くよ。」

作戦室に行くと、数名のチューナーと選手9人全員がいた。

「全員集まったな。」

話しているのはチューナーの中でも生徒会役員である、3年生だ。名前は確か神崎かんざきだった言ったはずだ。

「さっき発表されたトーナメント表を転送しますのでみなさん端末を用意してください。」

全員の端末にトーナメント表が送られてくる。

今回のトーナメント総出場者が9人×5学校=45人だが三校の1位の生徒のが欠場と発表され、8人のワンコーラムが出場しているのでその8人をシードとするしA~Dまでブロックが作られ、それぞれに2人ずつのワンコーラムが入る。

それで、祐たちのブロックは、祐がB―2、凛がC-10、アリシアがA―11、権堂がD-10、そのほかの三年生がA-3、B-6、C―5、D-6、D―8、となっていた。

そこからは個別にチューナーと選手に分かれての作戦会議となった。

といっても祐はチューニングもすべて自分で行っているので相手選手の情報をもらって1人ホテルの部屋に向かった。

そして試合開始時刻となった。全部で会場は8つあり、それぞれのブロックに二つ割り当てられている

つまり祐たちは全員別会場ということだ。

「さて、第一試合の準備をするか。」

同じブロックとはいえ戦う可能性もあるので同じ学校とはいえ一緒に行動はしない。

Bブロック第一試合、祐は第三学校の選手との試合だった。

敵は近距離タイプだった。武器は武装剣デバイス。祐の警棒は剣に比べるとリーチが短い。しかし、祐の速さに敵はついてこれなかった。試合は5分という短い時間で終了した。

第一試合、第二試合が終わるまで約30分かかった。

第一学校が勝利したのは祐を含めて2名だった。第二学校も2名、第三学校は4名、第四学校は1名、第五学校は5名という第五学校の快進撃となった。そして、各ブロック一人ずつ余ってしまった人間が各ブロックの二つ目の一回戦の勝者と当たる。その結果最終的に二回戦に進出したのは、第一学校2名、第二学校2名、第三学校3名、第四学校1名、第五学校5名だった。

そして二回戦まで1時間の時間がとられることになった、(これは選手の休憩と、戦闘によって壊れた会場の魔道による修復をするための時間だ)

祐は一度第一学校テントに戻ってきた。そこには3回戦からの出番となる凛、アリシア、権堂が1回戦の試合をチェックしていた。第一学校のテントには同時に試合を見るためにモニターが5台設置してある。

「祐さま!お疲れ様です。」

アリシアが祐に真っ先に気が付き飛びついてきた。

「あ、ありがとう、アリシア。」

「祐、お疲れ様。さすがだね、最短時間で勝利なんて。」

凛が笑いながら近づく。

「相手も近距離型だったからね、早く決着つけないとどう考えても俺が魔力の消耗負けするから。」

祐が少し照れながら応答する。

「それで、どうして5台とも第五学校の試合なんだ?」

「不思議でな、去年までは第五学校が検定に出ても5位、6位以外の選手が目立つことはなかった。だが今回は今まで見たことない奴らがほぼ無傷で勝ち上がっている。」

現在第五学校には5位と6位のワンコーラムが在籍している。前回の検定でもこの二人がワンコーラム入りしただけでほかの生徒はツーコラムに入った者すらいなかった。

「なにか裏があるってことか。」

権堂と祐が目を合わせる。権堂がさらに付け加えようとしたそのときだった

「あらあら、あまり滅多なことを言うものではありませんよ。」

全員声がした方を振り返ると皆が皆驚いた。

「クーデリア…お前は参加していなかったんじゃないのか?」

「いえいえ、私も参加してましたわよ。生徒会の仕事がありましたので合流は今日でしたが。」

その言葉で祐が気づいた。

「待ってください、たしか俺たち以外は全員3年のはずですよね?」

その通りだった。一度ミーティングが開かれたとき、そこにいた3年生以外は祐、凛、アリシア、権堂の4人だけだった。

「うふふ、さてどうでしょうか。」

そういうとクーデリアは去っていった。

「一体どういうことなんだ…気配すらなかった。」

「わからん、だがあいつも普通じゃないからな。気を付けたほうがいいぞ。」

祐はクーデリアが消えたほうをしばらく見ていた。

凛もさっきまでくっついていたアリシアもいつの間にか離れて扉、(というより幕)の方を見ていた。



読んでいただきありがとうございました。

今回から検定編(仮)となります。

今回は説明口調となりましたが、次回からは戦闘シーンが多めになる予定です。

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