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天界来訪編6

すごいところまで来てしまったな…」

祐がどこか遠くに意識を向けていたが、周りに誰かの気配を感じてそちらを向いた。

そこに居たのは女子生徒だった。祐が急に顔を向けたからか女子生徒は身体をビクッと震わせて立ち止まっていた。

「どうかしたかな?」

「…あ、あの。」

女子生徒は祐の顔を何かと比べるように見ている。祐も女子生徒の顔にどこか身覚えがあった。

「…もしかして藤谷祐くん…ですか?」

祐は驚いて目を見開いた。ここに来てから一度も藤谷の名前を使ったことはない。

「…どうしてそれを?」

「やっぱり!藤谷祐くんなのですね!」

女子生徒は目を輝かせていて質問が耳に入ってないようだった。

そして、

「兄さん!」

そういって肩ほどまでのシルバーの髪を激しく揺らして祐に抱き付いてきた。

「あらあら、あなたは本当に…」

タイミングよく両手に飲み物を持ったクリスティナが返ってきた。

「えっと…これは…」

祐は抱き付いている女子を見る。女子は目に涙を浮かべて抱き付いたままだった。

祐は女子の肩をもって少し距離を取り、

「兄さんってどういうことかな?」

「覚えていませんか?私です。藤谷愛花です。」

「なっ!!」

祐は驚いて女子の顔を近づける。

女子の顔はどんどん赤くなっていく。

そして呆れたクリスティナが、

「祐くん、その子気を失うわよ?」

そういったのを聞いてハッと離した。

「お前…本当に愛花なのか…?」

「はい!兄さん!」

もう一度涙を浮かべて愛花は祐に抱き付いた。

「…どういうことか説明してもらえるかしら。」

呆れたままのクリスティナが祐に尋ねた。

「こいつは、俺の従妹だ。10年前に会ったきり家族全員が行方不明になっていたんだ。」

「従妹…なるほどね。ということは彼女もここの人間ではないってこと?」

祐がどう答えようか迷っていると、泣き止んだ愛花が、

「いえ、私はこちらの人間です。そして兄さんのいた世界の人間でもあります。」

「それはどういうこと?」

「私の父はこちらの、天使側の人間です。ですが母はあちらの、悪魔側の人間です。」

「つまりハーフということね。」

「はい、そう言うことになります。」

「私たち家族と兄さんのお父様は悪魔側の監視に天使側であることが見破られました。そのため私たちは天使側に逃げることを決めました。」

「ですが、悪魔側の追跡者たちがそれに気がついて襲ってきました。そして私たちを守るために兄さんのお父様が犠牲に…」

祐はその話を知らなかった。自分の父は戦死したと聞いていた。

「待ってくれ。それなら俺はなんであっちに居られたんだ?」

「それは今の兄さんの苗字があるからです。」

「!」

「西城。あちらの世界では最大勢力の1つです。そこが兄さんの天使側の能力を封印して守ったのです。」

「どうして俺だけ…」

「兄さんは産まれた時点で膨大過ぎる魔力とマナを持っていました。西城家には魔力しか計れませんがその魔力のみを欲しました。。」

「くっ…!」

祐は西城のことをわかったつもりになっていたが、それは甘かったことを痛感させられていた。

「兄さん、お母さまを恨まないでください。お母さまは私たちを守ろうと必死になってくださいました。ですが西城家の決定を覆すことはできませんでした。なにせ結婚すら反対されていたのを押し切ったのですから。」

祐は黙って聞いている。

「ただし、このままでは兄さんが物として扱われることになったのを知ったご両親は西城家に条件を付けることで身を引きました。それがお父さまが世界を去り、お母さまが西城家の企業で働くことです。今お母さまがどのような仕事をしているのかはわかりませんが仙蔵さんがまだ長なら大丈夫でしょう。あの方だけが最後まで私たち全員を守ると言ってくださったのですから。」

「…」

祐は黙っていることしかできなかった。自分は両親が必死にかばってくれたのにも関わらず、その西城家に助けを求めたのだ、無理もない。

愛花の目には涙がたまっていた。いや、堪えきれなくなって流し始めている。

「愛花、もういい。それだけ聞ければ十分だ。」

「兄さん…すいません。」

「お前が謝ることじゃないさ。」

祐は愛花の頭をなでる。愛花は安心したように祐の胸で眠りに落ちて行った。

「彼女にとっても思い出したくない記憶だったようね。」

「あぁ…」

それから少しの時間が流れた。

「そろそろ、午後の授業の時間ね。」

愛花が眠ってしまったので祐は動くことが出来ず、クリスティナは祐の横に腰かけていた。

「もうそんな時間か。愛花、そろそろ起きないと。」

祐が肩を軽くゆする。

「ん…」

愛花はゆっくりと目覚める。

「大丈夫か?」

「はい…兄さん。」

「そうか、じゃあそろそろ行こうか。授業が始まるよ。」

「はい。あの…」

愛花は名残惜しそうに祐をみる。

「また放課後な。」

「はい…!」

愛花は満面の笑みで教室に走り出していった。


読んでいただいてありがとうございます。

詳しいことは活動報告を読んでください!

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