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学園祭編17

その人物は屋上から中庭にいる4人を見ていた。戦闘前からずっと。

「…あれが魔神か。そこまでの強さはなさそうだが。」

その人物の顔はわからない。なぜなら顔を仮面で覆っていて見ることが出来ないからだ。

だが声から判断すれば男なのだろう。

男は氷漬けのヨハンの運び出し作業が始まるときには姿を消していた。



ヨハンたちの侵入事件は祐たち生徒会の活躍により収束したということになった。(事実祐とクーデリアは実際に倒し、ほか2人は全校生徒や来校者たちの安全確保に努めていた。)

相手はテロリストではなく暴徒化した来校者と言うことになった。前にテロリストが侵入したばかりだというのにまた侵入されたというのは学校の面子に関わる問題なのだろう。

ヨハンはというと学校地下にある研究施設という名の魔道使用不可監禁所に連行されすべての武器を没収、そして背後関係を尋問されているらしい。

といった話を祐とクーデリアは校長から先ほどまで聞いていた。

学園祭は次の日の半日ほどは行われなかったがそのあとは再開された。ただの乱闘事件として処理たのだから再開しないのはおかしかったんのだろう。

そして現在の時刻は午後18時。直前に学園祭は終了しこのあと18時半より後夜祭が予定されている。

「それにしても校長は隠すということをしないのでしょうかね。」

祐が苦笑気味にクーデリアに言う。

「私たちは当事者ですから隠せないですし、共犯にでもしようと考えているのではないですかね。」

クーデリアも祐に苦笑で答えた。

「酷い話ですね。」

祐は苦笑があきれ顔に変わっていた。

そして2人は同時に笑い始めた。

笑うこと数秒、クーデリアが真剣な表情に戻った。

「祐くん、今回の件で本家の方から護衛をつけるべきだとお話が来ていますよね?」

「ええ、来ました。」

「そしてそれを断ったと聞きましたが本当ですか?」

「はい。」

クーデリアは驚きを隠せなかった。西城本家が長である仙蔵以外に護衛をつけると直接言うことはほとんどない。言われるのはよほど重要な人物だけだ。そして今回のことで祐がその重要人物だということが分かった。西城本家の護衛はクーデリアの比ではない。それ専門に訓練されたエリートたちだ。祐はそれを断ったのだ。

「なぜですか!?あなたが狙われているのは明白です!護衛の方たちは私より強い!というより私だけでは守り切れません!」

珍しくというより祐は初めてクーデリアが声を荒らげるのを聞いた。

「…だからですよ。」

祐は驚いて反応に遅れてしまった。

「だから?」

「ええ、俺の目的はもともと俺を狙ってくる敵を潰すことです。ですが相手はヨハンを含め侵入者たちの誰にも情報を与えないほどには慎重なようですからここで俺に護衛をつけてしまっては出てくるものも出てこないでしょう。」

「自分を囮に使うということですか…?」

「はい。ですから護衛の方には俺以外を護衛してもらうことにしてます。」

「それであなたの身に何かあったらどうするんですか!」

クーデリアは再び声を荒らげた。

「クーデリアさん、あなたは何を恐れているんですか…?

俺も自分に被害があることは百も承知です。敵をあぶりだすのですからそれくらいの覚悟はあります。」

祐は驚きながらも理屈をクーデリアに返す。

「…私はもう見たくないのです。自分を犠牲に誰かを守ろうとする人が死ぬのなんて…」

クーデリアがうつむき、聞き取れるか微妙な声で言ったそれは祐に衝撃を与えた。

彼女が感情を荒らげる表情をしたのは見たことが無いが荒らげている様子が見て取れることはあった。だが彼女が泣いている姿など一度も見たことが無かった。

「クーデリア…さん?」

祐がクーデリアの方に触れようとしたがそれは不発に終わった。クーデリアが避けたのではない、祐の胸に飛び込んできたからだった。

「お願いです。自分を犠牲にしてもいいなんて考え方はやめてください。あなたが傷つくことでほかの人が傷つくことを考えてください…!」

それはクーデリアの心の底からの声のような気がした。

祐はあっけに取られて手が空を舞っていたがクーデリアはまだ胸の中だ。

「祐くん、お願いです。護衛をつけてください。」

この言葉で我に返った祐は両手をクーデリアの肩において自分から少し放して首を横に振った。

「おれはじぶんを犠牲しようなんて考えてませんよ。約束します、必ず無事に帰ってくると。」

祐は真剣な顔に少しの笑顔を混ぜて目の前のクーデリアにそういった。

「…約束ですよ?」

クーデリアは涙をぬぐいながら祐の目を見た。

「はい。…ところでこの格好はそろそろまずいと思うんですが…」

祐が返事をした後に顔をそらして言うとクーデリアは顔を真っ赤にして祐から離れた。

幸いなことに時刻は18時半直前ということもあって校内に残っている生徒はほぼいなかった。

「と、とりあえず後夜祭にいきましょうか。」

祐が歩き出すとクーデリアはいつもより少し離れてついてきた。


読んでいただきありがとうございます。

戦闘が終わり、後夜祭へと突入した学園祭編ですが、いきなり意味不明な男が出てきています。彼は次の編で活躍?する予定です。


PVが合計1000を超えました!これもいつも読んでくださる皆さまのおかげです!本当にありがとうございます。ブックマークも9件といつの間にか増えてうれしいです。

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