学園祭編14
(何か私にできることはないの…)
その後ろで凛は見ていることしかできなかった。無論凛の魔道ならこの距離でも攻撃は可能だがヨハンのすぐそばには祐がいる。しかも2人は拳の届く距離で戦っているため下手をすると凛の魔道は祐に当たってしまう。
(でもこのままじゃただのお荷物だ…)
凛はどうしたらいいのかわからずその場に立ち尽くしていた。
一方祐は凛が悩んでいることなどわかるはずもなくヨハンと交戦していた。
戦況は祐の有利に見える。だが祐は違和感を覚えていた。
(さっきから攻撃は当たっているのに相手にダメージが残っていない…だが回復魔道は戦いながら使えるものじゃない…)
回復魔道はただでさえ使える者が限定される。詳しく言えば生まれつきごく少数の者が身に着けていてその中で訓練を受けた者の内のさらにごく少数のみが有益な回復魔道を使える。しかもその有益な回復魔道も相当量の魔力と集中力を使用する。戦闘中に使えるものは記録にもない。
(だが実際にはお前の攻撃はあいつにダメージを与えられていないようだな。)
(ルシファーか。あぁ俺があいつに今までした攻撃ならせめて一度距離を取ろうとぐらい考えるものなのだが。)
(おそらく、あの槍の力かと。)
会話にサリーが混じってきた。この会話の間も祐はヨハンと戦闘を続けている。
(あいつの槍はブリューナクだよな?神話武装はそれぞれ一つの固有能力を持っているだけだ。あれに回復能力があるとは思えないんだが。)
(ええ、あれが本物のブリューナクならばそうでしょう。)
(本物なら?つまりあれは偽物ということなのか?)
(いえ偽物ではありません。名前が間違っているのです。)
(名前?)
(まさか、光剣。あれはルーンだというのか?)
祐が疑問を口にし、ルシファーが苦々しい声で言った。
(おそらくそうです。9つの神話武装には含まれていない神話武装の『ルーン』だと思われます。)
(なんだと…あれは使用者するも攻撃する危険指定武装ですでに破壊されたはず。)
(記録上破壊されたことになっていますが実際は西城家によって持ち出されていたようです。)
(西城家か…それよりもルーンの特徴は何だ?)
(破壊、ただ破壊したいという衝動を使用者に与えるだけだ。)
(衝動を与えるだけ?たったそれだけなのか?)
(あぁ、たったそれだけだ。ただ己が壊れることもいとわない破壊衝動を与え、その結果人間自身のリミッターを解除させる。)
(人間自身のリミッター…まさか細胞の分裂速度すら上がっているということなのか!?)
(その通りだ。)
(だからあの回復速度か。だとしたら対抗策はあるのか?)
(あるにはある。だが…)
(槍を暴走させるのです。)
その言葉に驚いた祐は一歩出遅れ、ヨハンに攻撃を隙を与えた。
祐にはルシファーがいつにもまして人間らしく思え、その逆にサリーが人間ではないことを深く認識させられた。
次第にヨハンの方が優勢になっていく。祐はまだ余裕はあるが攻撃をする方ではなくさばく方になっていた。
(槍を暴走させる…だがそんなことをすればここ周辺は破壊されつくす…)
祐は一度さばけなかった攻撃のせいで後ろに跳んだ。
そのとき立ちすくんでいた凛が目に入った。
(そうか。凛がいる。あいつの魔道なら…そのためには一度あいつの動きを止める必要があるな。)
祐はヨハンの方に走り、相手の槍を弾き飛ばした。
「凛!」
読んでいただきありがとうございます。
いつも読んでくださってる皆さま遅くなってすいません。内容自体は書いていたのですが投稿が遅くなってしまいました。
今回はヨハンに対する祐たちの会話がメーンになってます。そのため戦闘自体は少なく物足りない感があったかもしれません…
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