学園祭編9
クーデリアが祐の従者となってからクーデリアは祐の家の一角に部屋を借りて住んでいる。男女の学生2人が同じ屋根の下に暮らし居るというと余計な想像をする人間もいるが、この2人は同じ屋根といっても入るドアから違う。もともとこの家は祐の母が父に西城家の負担を掛けないようにと別々のドアを設けたため一つの屋根の下に2つの家族が住める二世帯住宅となっていた。一応部屋同士を行き来できるようにはなってはいるのだが鍵を開けるともう片方の端末に連絡がすぐ行くようになっている。
そして今クーデリアはその勇とは別の部屋に居る。
「はい、こちらはまだ何も起きていません。そちらはどうですか、石塚さん。」
クーデリアは大きなディスプレイの前にいる。そこには西城本家にいた石塚がいる。
「こちらも大きな動きはありませんね。いつも通りネズミがうろちょろしている程度です。」
「そうですか…」
クーデリアはうつむいた。だがそれも普通の人間には気づかれない程度の事だった。
だが石塚は普通の人間ではない。西城という表でも裏でも名の通った家の筆頭執事なのだ。相手の顔色や行動は敏感に感じることが出来なくてはならない。
「祐さまに何かありましたか?」
石塚がモニター越しでもわかる眼差しでクーデリアを見つめた
「…さすがに石塚さんには隠せませんね。はい。どうやら西城の名前に反応した生徒の一部が過激な行動に出ているようです。」
「それは由々しき事態ですな。十分お気をつけなさい。」
そういって通信は切れた。
「十分お気をつけなさい、ですか…」
石塚ほどの男が一学校の生徒のことなど気にするわけがない、まして攻撃を受けているのは祐なのだ。あんな奴らでは傷一つ付けられはしないだろう。
つまり石塚は大きな動きはないといったがその裏では活発になっていると言ったのだ。
「少し私の方も探りを入れないとですね。」
そういってクーデリアは別のところに通信をかけた。
それから時は過ぎ、日付はついに学園祭の日を迎えていた。
祐は生徒会役員ということで各所の状況の確認、風紀委員が手に負えなくなった事態の対処に当たることになっている。
一日目は生徒会役員としては難なく終わった。
なぜ生徒会役員なのかというとアリシアがここぞとばかりに祐の引っ張りまわしたからだった。
祐は凛とは毎日顔を合わせていたがアリシアとはかなり顔を合わせていなかった。その結果祐は待ち伏せしていたアリシアに捕まり、各クラスや部活が行っている出し物をすべて回るという事態になったのだ。これには生徒会役員としての仕事が一つも来なかったというのもあっただろう。
「はぁ…アリシアそろそろ休ませてくれ…」
時刻は夕方。祐とアリシアはすべての出し物を回ったところだ。そしてアリシアが気に入ったところにもう一度行こうという話が出てきたところだ。
「むー、わかりました。カフェで休みましょ。」
アリシアは口を尖らせながらもカフェに向かった。
2人とも好きなものを頼んで喋っているとそこに声を掛けてくる人がいた。
「あら、祐くんじゃないですか。」
声を変えてきたのはクーデリアだった。
彼女は彼女で生徒会長として各ステージ上に引っ張りだこだった。
「会長。もうステージは終わったんですか?」
「ええ、今日の分はこれで終わりです。祐くんは…あらお邪魔しましたね。」
クーデリアはクスッと笑ってその場を後にした。
「祐さま、最近会長と仲がよろしいですわね。」
アリシアの目が痛かった。別に祐とクーデリアにはあんなことやそんなことはないのだが、その理由を説明するとそれはそれでややこしくなりそうだった。
「まぁこれでも生徒会役員だからね。」
「…それ以上にも思えますけど。」
「そ、そうかな?それよりも次行こうか。」
祐は半ば強引に会話を切った。
読んでいただきありがとうございます。
今回の話は学園祭編と言っていますがあまり学園祭の内容については触れていません…どちらかというとその裏で行われていることがメーンとなります。
タイトルで誤解させてしまった方申し訳ありません…
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