学園祭編5
次の日、祐は前日の報告のために1人早く学校に来た。時刻はまだ7時半程度。今日の昼に西城家から協会に通達が行くということなので明日にはこの話は学校中に知られていることだろう。
「おはよう、祐くん。」
「おはようございます、校長。」
祐は今校長室にいる。
「さて、時間も限られているし早速報告から受けようかな。」
「はい、昨日の件は…」
祐は昨日の件、自分が西城家になったこと、苗字が変わったこと、クーデリアが側近となったことを話した。
「なるほど、最後の一つは予想外だったけど、あとは想定内だ。だったらこれから予測されるのは学籍変更の手続きと副校長からのお小言くらいかな、学校側からは。」
副校長はこの校長とは正反対で礼儀作法に厳しく書類を重視するタイプの人間だ。
「それは覚悟してます。」
祐も成績で小言を言われた経験があった。
「さて、それより問題なのは生徒たちだね。悪名高い西城だからね。」
「ええ、そうですね。」
そのとき、後ろのドアがノックされた。
「入っていいよ。」
「失礼します。」
入ってきたのはクーデリアだった。
クーデリアは少し驚いた様子だった。
「祐くんも来ていたのですか。」
「ええ、この後色々あることは確定でしたから。」
校長は少し不思議そうにしていた。
「2人の関係は主従なんだよね?」
「ええ、一応そうなります。」
祐は何事もなくうなずいた。
「なるほど。そう言うことか。」
校長はそれだけで理解したようだった。
「まぁ僕から言えることはそんなにないけど、2人とも何かあったら僕のとこ来なよ。」
「はい、ありがとうございます。」
「そうだ、祐くん、君生徒会に入ったらどうだい?」
「「えっ?」」
同時に目を見開いた。
「だってクーデリアちゃんは祐くんから基本的に離れられないわけなんだから、部活を一緒の方がいいんじゃない?」
「確かにそうですけど…」
クーデリアが難色を示した。
この学校の生徒会はかなりの面で学校運営にかかわっている。というよりも半分主体となって運営している。つまり生徒会にかかる負担はかなり大きい。クーデリアはそれでは祐が被る負担が大きすぎると思ったのだ。
「そうですね。その方が自分も何かと楽かもしれません。追及的なのからも逃げられそうですし。」
「ゆ、祐くん!?生徒会はそんなに甘い物じゃないですよ!?」
クーデリアが慌てて祐の前に立った。
「理解ってますよ。それでもその方がクーデリアさんが楽だと思ったんだけど。」
祐は至って真面目な顔でクーデリアをみた。
するとクーデリアは何度か瞬きをした。
そしてクーデリアがなにか言おうとしたとき、
「それじゃあ、祐くんは副会長とでもしておこうか。」
校長がクーデリアの言葉を遮って発言した。
「で、ですが…」
「わかりました。校長手続きを願いします。」
「うん、わかったよ。」
校長と祐はクーデリアそっちのけで話を進めていた。
それにクーデリア唖然としていた。
「それではまた何かあれば来てくれたまえ。」
校長はこの一言で話を終わりにした。
「失礼します。」
クーデリアはまだなにか言おうとしていたが、本人である祐が出ていってしまったのでついていかざるを得なくなった。
祐が校長室を出て少しあるくと後ろから小走りでクーデリアが近づいて来た。
祐が振り向くとクーデリアはあきれた表情をしていた。
「どうかしました?」
「…はぁ、もう諦めましたよ。」
祐は首をかしげた。
「…祐くんを副会長にするようはからいます。」
クーデリアは苦笑いを浮かべながらそう言った。
2人はそのまま各々の教室へと向かった。
「祐、今日はどうかしたの?」
教室にはいるなり話しかけてきたのは凛だった。
「まぁ…」
祐は辺りを見回し凛のほかに誰もいないことを確認した。
凛は何事かと首をかしげていた。
「誰もいないようだね。」
「そう…だね。」
凛も辺りを見て確認した。
「凛には隠しておけることじゃないからね。ただ今は内緒にしといてくれ。」
凛はよくわからないといった表情をしている。
「まずは結果から言うね。俺は西城家の人間になった。」
「えっ!?」
凛は驚いてほとんど声も出ていない。
「俺の名前は西城祐。西城本家に連なるウィザードだ。」
祐は本気の顔で凛の前に立った。
祐からは闘志が感じられた。殺気ではないがそれは今まで凛に向けたことのないものだった。
「ゆ、祐…?」
凛は数歩後ずさった。
「…こういうことにはなりたくないから先に説明したんだ。」
祐は闘志を消し、笑顔でこう言った。
「俺は確かに西城の人間になった。でもそれで俺自身が変わるってことはない。凛はどうだ?俺が西城になったらもう友だちでもなんでもないか?」
「そんなわけない!」
凛はかなりの声量で叫んだ。まだ時間が早いからいいもののこれがあと数十分遅ければ大量の生徒が集まっていただろう。
「ならよかった。これからもよろしくな。」
祐は安堵した顔でほほ笑んだ。
「あ、それとクー、会長が俺の従者ということになった。」
「へー……
えっ!?」
凛の驚きっぷりは今までに見たことが無いといっても過言ではなかった。
「ど、どういうこと!?」
凛は祐に詰め寄り言い放った。
「せ、説明するからとりあえず落ち着いて…」
祐は凛の肩を掴んで2人の間に距離を置いた。
「…まず会長の素性を教えないとね。彼女は西城家に仕えているそうだ。今までは俺の母さんの護衛が主任務だったらしいのだけど、今回の俺の西城家入りに際して俺の護衛役になったそうだ。」
祐はここで一旦話を切った。そして凛の顔色をうかがったが、まだ納得していないようだったので続けた。
「俺に護衛がつく理由は俺が西城本家に入ることをいいと思っていないやつがかなりいるからだ。そしてそいつらは検定にちょっかいを出していたやつと繋がっている可能性が大きい。このまま放っておけば次にどこに被害が行くかわからない。だがあいつらの目的はただ西城家の影響力を強くしたいということだ。西城家内にそれを妨げるやつが現れたなら意識はそちらに向く。俺は西城家に影響力はいらないと思っているし、本家当主もそのようだからな。だから俺は西城本家の人間となりそいつらの注意を引くことにした。」
「なんで祐がそんな危険なことをするの…?」
「俺は凛との約束を果たしたかった。だがあいつらはそれを邪魔した。正当な手段でなくな。俺はそれを許さない。」
祐の目は敵を排除することだけに向いているように見えた。
「私のためなら…無茶しないで。」
祐はそれに首を振った。
「確かに理由は凛のためだ。でも俺はもうあいつらを倒さないと気が収まらないんだ。」
凛は黙ってしまった。今の祐に何を言っても考えを変えることはないと思って何を言っていいかわからなくなってしまったからだ。
「っと、話がそれたな。それで俺だけだと負担が大きすぎるからって同じ学校の会長が護衛になったってことさ。」
キーンコーン。
「おっとそろそろほかのやつも来るな。俺が西城になったってことは明日にも広まるだろうけど会長のことは含まれてないから内緒で頼むよ。」
祐は凛に手を振って自分の席に戻った。
読んでいただきありがとうございます。今回は学校に戻ってきた初日の話です。まだ校長と凛だけですので騒ぎは小さいですが、次の日には学校中に広まることでしょう。そうなれば…
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