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学園祭編3

「初めまして藤谷君。私が西城家当主西城仙蔵だ。」

仙蔵は立ち上がって祐に名乗った。彼の身長は祐よりも大きく体格もかなり大きかった。

そして頬には大きな傷跡が残されていた。

(これが西城家当主か…魔力量も桁違いのようだ。)

「それでは私はこちらで失礼しますね。」

明日香は祐たちに一言掛け、仙蔵に深々と一礼すると部屋を後にした。

「それではこちらに、応接室があるので。」

仙蔵は隣の部屋の扉の前に移動し扉を開けた。

2人は仙蔵に続いて応接室に移動した。

「どうぞおかけください。クーデリアも座ってくれ。」

クーデリアはその言葉に少し驚いた様子だったが一礼して腰かけた。

祐も一礼し、仙蔵の前の席に腰かけた。

仙蔵は座るとすぐに目の前にあったボタンを押した。すると今入ってきた扉から使用人が1人入ってきた。

「お飲み物は何がいいかな?」

「ではコーヒーを。」

「クーデリアは何かな?」

またクーデリアは驚いたようだった。どうやらここではクーデリアは親戚扱いになっているようだった。

「それでは私は紅茶をお願いします。」

「俺はコーヒーだ。」

仙蔵は最後に使用人に自分の飲み物を伝えた。使用人は一礼して部屋を後にした。

「今回はわざわざすまないね。」

「いえ、自分も一度お会いしたかったので。」

祐は表情を崩すことなく淡々と言葉を返した。

「そうかい、それならよかった。」

そう言ったとき使用人が部屋に入ってきて3人の前にそれぞれ飲み物を置いて出て行った。

クーデリアはまだ恐縮そうに使用人に一礼していた。

「さて、それでは呼んだのは私なのだから私の方から話すべきかな。」

仙蔵は一度コーヒーを飲むと祐の目を見た。

その眼力には祐も一瞬のけぞりそうになった。

「まず今回の作戦ではありがとう。君の能力の高さはよくわかったよ。」

「いえ、あの男程度でしたらたいしたことではありませんでした。」

「そうかい。それでも敵を一人で討ったというのは大きな功績だよ。」

「ありがとうございます。」

祐も仙蔵もお互いの目から目をそらすことは一度もなかった。

お互いがアルカーダという名前を出していないことには2人とも気が付いている。

祐はあの程度の男が一組織のボスだとは思えていなかったし、仙蔵はあれがボスでないことを知っていた。

「さて、詮無い話はこれくらいにしてそろそろ本題の方に入ろうか。」

祐は一度背筋を伸ばした。

「今回は君を西城にいれるという話だ。これは聞いているな?」

「はい。理由は聞いていませんが話は聞いています。」

「そうだな。理由を知っているのは私と石塚だけだからな。」

祐は驚いた。外から西城家に人を入れるというのにその理由を説明していないということに驚きを隠せなかった。

「流石の君も驚くか。」

祐はハッとして表情を戻した。

クーデリアはまだ横で驚いているようだ。

「さて、少し待ってくれ。」

そういうと仙蔵は音もたてず立ち上がり祐たちが入ってきたのとは違う扉を急に開けた。

だがそこには誰もおらず、祐には理由がわからなかった。

扉を閉めると仙蔵はまた席に座り直し、

「すまないな、どうやら会話を聞かれているようだったから。」

「気配を消していたということですか。」

「私は産まれつき戦闘より諜報に向いている魔道が得意だったからな。」

(ルシファー、こいつはもしかしてサーベイなのか?)

(うむ…私が感じる限りは戦闘方面もかなり高いようだが、本質はサーベイのようだな)

サーベイとはsurveyという英語から来たもので調査という意味が示す通り産まれつき諜報に特化した魔道を使える者のことを総称した言い方だ。

そして仙蔵はサーベイの中でも特質していた。

彼だけしか持たない魔道、それは相手の心理の上層を読むことを可能にする魔道だ。ただしこれは対象を選べず、一度発動するとオフにするまで魔力を消費し続けるという暴力的なものだ。

「ふっ、その通りだよ。私はサーベイだ。」

祐は仙蔵の目を見てしまった。

(こいつは深層心理を読めるのか!?)

「まぁ私のことはいいだろう。話を戻すぞ。

 君を西城にいれる理由だったな。その一番の理由はアルカーダを潰すためだ。」

祐は顔を顰めた。なぜ祐が西城に入ることがアルカーダが潰すことに繋がるのか全く理解できなかったからだ。

「そういう顔になるのも無理はないな。」

仙蔵は笑みを浮かべて祐を見ていた。

祐は顔を下げて考えた。

(俺が西城に入ることとアルカーダを潰すこと…)

(マスター、深く考える必要はないのではないでしょうか)

(サリー?どういうことだ?)

(アルカーダが部外者だけだとは限りません)

サリーはこのあとも続けていたが祐はその部分だけで仙蔵の言った意味が理解できた。

そして舌打ちをしそうになった。こんなことに気が付くこともできなかった自分に。

祐は顔を上げて仙蔵の目を見た。仙蔵はそれを見て口元に笑みを浮かべた。その笑みは先ほどまでの笑みとは意味が違っていた。

「なるほど、そういうことでしたか。それは確かに自分が西城になることに意味がありますね。」

「君は本当に理解がはやいな。」

仙蔵は祐が理解したことはわかっているが、その理由が祐の中の別の思考だということまでは読み取れていない。

「自分はエサということですね。」

「形上はそうなるな。だが私は君をただのエサにする気はないよ。」

祐と仙蔵はたがいに笑みを交わした。

その横でクーデリアだけが何が起きているのか理解しかねていた。



読んでいただきありがとうございます。

今回ようやくタイトルが決まりました。まだタイトルの学園祭については本編では出てきていませんが、このあと盛大に登場する予定です。よければ読んでください。

コメントや評価よろしくお願いします!

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