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中間試験

月日は流れ今は10月の最終週。この日はこの時代でも好かれることのないテスト2日目だった。

「うーん、次は実技か…」

祐は背伸びしながらそう言った。

この日は筆記2時間、実技1時間がテスト内容だ。

「俺大丈夫かな…」

祐は横にいた凛にため息を吐きながらそう言った。

「大丈夫って祐には底知れない魔力があるんだから問題ないじゃない。」

凛が少し驚いたようにそう言った。

「それがそうでもないんだな…」

祐は苦笑しながら続けた。

「確かに俺の魔力は前に比べて比にならない量になった。でも、それで使える魔道が増えるというわけじゃないんだな…」

「あ…」

凛はここで思い出した。

2人の言った通り祐の魔力は桁違いだ。だが祐は加速、減速、振動に属さない魔道を未だ全く使うことが出来ない。そしてテスト出題される魔道は大抵が水の魔道といった基本中の基本のことが多い。(ちなみに加速や減速といった魔道は対象を厳密にしなければならないので難易度は必然的に上がる)

「いい加減この空気中の物質にアクセスできないのをどうにかしたいものだな…」

「ほんとだね…」

祐は目に見える相手に対する戦闘術を多く学んでしまったために対象は目に見えるものという固定概念が無意識下にしみついてしまっている。そのため目に見えない空気中の水分を操作したりする水の魔道といったものが使えないのだ。

そして魔道とは多くが戦闘に用いられる。そのため必然的に学科より実技のほうが配点が高くなる。祐は学科の方は平凡程度にはできるのだが実技がからっきしなので最下位というあだ名がつけられていたのだった。

「…また最下位なんてなるのかな。」

「…こればっかりはどうしようもないもんね。」

祐は再びため息をついた。

「そろそろ時間か…行こうか。」

祐は重い足を引きずりながら実技試験教室に向かった。

ついてから数分でチャイムがなった。

そのチャイムと同時に教室の奥の扉が開いた。普通ならそこから担当の教師が出てくる。

だが今回は教師というのは間違いなのだが格が違うというべきなのか出てきたのは校長だった。

「やぁみんな!元気かい?」

校長はかなりハイテンションだった。

というか今はテスト期間なのだ。テンションの高い生徒がいるはずもない。

「あはは、まぁいいか。」

こほんと校長は一息ついた。

「今日僕がここに来たのは試験内容に変更があるからだよ。そこの藤谷くんのように今までの方法だと能力を計りきれないということが今回の検定でわかったからね。今回からみんなには試験方法を選んでもらおうと思う。」

生徒みんながざわついた。とくに祐は驚きを隠しきれていない。

「選んでもらうのは次の2つからだ。今まで通りの基本魔道を使用するテストがひとつ。もうひとつは戦闘テストだ。今回ははじめてだからね、監督はぼくが勤めるよ。」

また生徒がざわついた。なんといっても校長はそこらのウィザードとは比べ物にならないほどの魔力をもつのだ。そして彼は魔道の上である魔法を使うと言われてすらいる。だがその戦闘を見たものはいないのだ。だからざわついたのだ。

「さて、従来通りの方法がいい人はそっちの先生のとこ、戦闘がいい人は僕のところにきてね。」

生徒たちが固まった。

いきなり選べと言われても簡単に選べるものではないのはあたりまえだ。だが一人だけ違う人がいた。

「面白いじゃないか。受けてやるよ。」

祐が一番奥から歩きだした。

そして校長の前に立った。

「受けますよ。その戦闘試験とやらを。」

「あはは、来ると思ったよ、藤谷くん。じゃあ第一演習場にいこうか。」

祐はそのあとに続いた。

それに他の生徒も続こうとしたが、

「戦闘試験に挑まない人はこちらに残ること。」

後ろから先生を冷ややかな声が鳴り響いた。


それから第一演習場に来たのは祐、凛とその他数名だった。

「うんうん、みんなよく来たね。」

校長は笑顔でうなずいた。

「じゃあ祐くん始めようか。他の人たちは上から見ててね。」

「祐!頑張ってね!」

凛を含め数人の生徒は上の見学場に向かった。

「うーん、モテる男はいいねぇ。」

「何をいってるんです?」

「いいやなんでもないよ。それじゃ始めようか。」

突如祐を気迫とでも言うべきものが襲った。

それは祐が今まで味わったことのないほどの恐怖を与えるものだった。

「あはは、流石ですね。怖くてすくみ上りそうですよ。」

祐が無理に作った笑みを浮かべた。

「君相手だけどこれでも半分だよ?」

校長はただ笑みを浮かべている。

「さぁ、来なさい。手加減はしてあげるから。」

祐は光剣を抜いた。

「せぁ!」

祐は加速の魔道を発動させて校長に飛び掛かった。

「速い!」

上で見ていた生徒がそう言った。

だが校長はまだ笑みを浮かべているだけだ。

(避ける気がない?だったら!)

祐は始め正面から切りかかろうとしていたがそれを直前で変更し横から切り上げた。

剣先を変えたとき一瞬だが校長の表情が変わったように見えた。

キーンという音が鳴り響いた。

祐の剣は残り10センチメートルというところで止まっていた。

止めているのは普通の障壁だった。そこにいた誰もが校長があらかじめ魔道を使っていなかったことを見ていた。つまり校長は祐が走り出してから魔道を使ったことになる。

そうなればほぼ一瞬しか時間はないはずだ。なのにもかかわらず障壁は祐の攻撃を完璧に防いだ。

「すごいね。まさかあの距離で攻撃位置を変えてくるなんて。」

祐はこの間も障壁に負荷をかけ続けているが障壁が壊れる気配はない。

「さて、ここで自分より高位のウィザードと戦う際の注意を教えてあげよう。」

校長は未だ笑みを浮かべて右手の人差し指を上げた。

「一つ、相手のウィザードが高速発動可能なのかどうかを一回の攻防で見極める。」

祐はその言葉の直後に大きな魔力を感じて後ろに飛び去った。

「二つ、相手の支配が及ぶ距離をすぐに計ること。」

祐がもといた場所から今いる場所まですべてに突風が巻き起こった。

「くっ!」

祐は両手で顔だけはかばった。

その結果制服がところどころ破れた。

「三つ、相手がどのように魔道を発動するか理解すること。」

校長が左手の指を鳴らした。

その瞬間祐の周りにドライアイスの弾丸が無数に現れた。

「くそ!」

祐は跳躍してなんとかそれを躱した。

「ほほう、これだけやって制服が裂けただけか。本当に君はすごいね。」

校長の顔が驚きに変わった。だがそれもわかっていて驚いているように見えた。

「…あんたほどではないよ。」

祐は冷や汗をかいていた。確かにこれは試験だ、殺されるということはない。だが相手の迫力に祐は完全に圧倒されていた。

(マスター、相手の能力が高すぎます。このままではあと数発でやられます)

(だよな…どうしたらいい?サリー)

(相手を解析したところ魔道の連続発動はほぼ無限にできるようですが障壁と同時には使用できないようです。その点が攻略の糸口かと)

(そうか…ありがとう)

「さて、まだ試験は終わってないよ。そうだね…僕に攻撃を当てられたらA評価を上げよう。」

この学校の実技試験の評価はA,B,C,D,Eの五段階で評価される。

(一か八か攻撃の隙をつくしかないか…)

祐が攻撃態勢を取った。

「さぁ来なさい。」

校長が左手を前に挑発した。

祐は加速の魔道で一気に相手の懐に入り込んだ。

「はぁ!」

キーンという音とともに祐の攻撃は障壁に阻まれた。

そしてその勢いで祐は後方に飛ばされた。

校長が左手の指を鳴らした。それと同時に祐を突風が襲う。

「くっ!」

祐はその突風を避けることなく受けた。

「まだだ!」

校長の顔が驚きに変わった。

なんと祐は身体を引き裂くほどの突風を自分の加速に利用したのだ。

「はぁ!」

校長が祐の攻撃に気が付いたときにはもう祐の剣は10センチメートルまで迫っていた。

(もらった!)

祐がそう確信したとき、校長の周りに衝撃波が生じた。

祐はそれに吹き飛ばされ床に叩き付けられた。

「はは、すごいね祐くん。まさかどの方向に吹いてるかわからない突風を加速に使うなんて思いもしなかったよ。おかげで予定外の魔道まで使っちゃったよ。」

そういうと校長は倒れている祐のもとに向かい、手を差し伸べた。

祐はそれにつかまり起き上がった。

「さて、本当なら君の攻撃は僕に当たっていたからね。君にはA評価を上げよう。」

「ありがとうございます。また戦えると気を楽しみにしてます。」

「そうだね。君と戦うのは面白いからね、またやろう。」

2人は笑って試験を終えた。

そのあと残りの生徒たちが試験を終えたが、A評価を得たのは祐と凛だけだった。


読んでいただきありがとうございます。今回は祐たちだけでなく学生なら誰もが直目する試験の話です。ですがまぁやっぱりというべきか祐くんが中心に話が進むので祐が有利なようになってしまいました…すいません。

この後の話は浮かんではいるのですがタイトルが浮かんでないのです…もう少しお待ちください…

コメントや評価よろしくお願いします。

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