つかの間の休日1
つかの間の休日
「んー!」
祐は自分の部屋で背伸びをした。
今日は久しぶりの休日だ。今日は検定から戻り約3日間の学業を終えてやっと訪れた休日だった。そして今日は凛と出かけることになっている。
それはこのような経緯だった。
学校に戻ってから1日後の放課後のことだった。
「ねぇ祐。」
「どうかしたか?」
普段昼休みは一緒に居ることが多い祐と凛だが、放課後は凛は自主訓練。祐は図書館に籠るか自宅で演習という風になっていたので授業終了後すぐ別れることが通例だった。
「あの…さ。」
今日の凛は朝から少し変だった。
朝あった時に祐が挨拶をすると、
「お、おはよう。」
と少し挙動不審になっていたのだった。
これは昼休みも同様で昼食は一緒に取ったのだが食べている最中は一度も会話はなく、食べ終わるとすぐにどこかに行ってしまったのだった。
「うん。」
祐はそんな凛のことが少し心配だった。凛が何かに悩んでいるのではないかと。
「その…」
だが祐には凛が何に悩んでいるのか見当もついていなかった。
そのせいもあってか祐は凛のことを一点に見つめている。
そのとき一瞬だが2人の目が合った。
凛がすぐに顔をそらす。耳まで真っ赤だった。
祐は首を傾げた。
(凛…どうしたんだろう。そうだ。)
祐は何かをひらめき首を上げた。
「凛。」
「な、なに?」
「次の休日空いてる?」
「うん…」
凛はまだ顔を上げていない。
「なら一緒に買い物でもどうかな?」
「…えぇ!?」
凛は驚いた顔で急に顔を上げた。
祐は瞬きを何度か繰り返してしまった。
「ご、ごめん…」
凛はまたすぐに顔を下に向けてしまった。
「い、いや大丈夫だけど…それでどうかな?買い物。」
「う、うん。大丈夫。」
「そっか。なら、次の休日の9時に迎えに行くね。」
ということだった。
「さてもう8時か。誘った方が遅れるなんて恥ずかしいしさっさと用意するか。」
といっても祐の準備に1時間もかかるはずもなく30分程度で終了した。
祐の格好はいつもの制服ではなくTシャツにパンツ姿というまぁこれもありふれた格好だがそんな感じだ。
そしてその上に内ポケット付きの上着を羽織り、そのポケットに光剣を入れた。
「さて行くか。」
祐と凛の家は最寄り駅こそ同じだが、その距離は決して近いというわけでもない。1キロほどの距離がある。こんな距離は加速の魔道を使ってしまえばすぐなのだが、今の世の中は魔道に寛容ではない。よって祐は1キロの距離を普通に徒歩で行くことになる。
そして各家庭に自家用車というのも燃料代が前時代に比べて10倍を超えるという破格の価格になっているため、持っている家庭はほとんどない。祐の家庭は例外で持っている家庭なのだが魔天対戦後の再建によって家と家の間に車が通行するだけの大きさの道はほとんど残っていない。簡単に言うと凛の家まで車で行くのは無理だったということだ。
そして時刻は8時59分。約束の1分前に着いたのだから上出来だろう。
祐がインターホンを鳴らす。この時代においてもこのシステムに代わる物は生まれていない。
「はーい。」
返事をしてきたのは凛ではない。凛よりは少し穏やかな女性の声。これは凛の母親だ。
「祐です。」
2人は親ぐるみの付き合いであるのでいつもこれで通じる。(といっても祐が凛の家に来るのは実に2年ぶりなのだが)
「あら、祐君。お久しぶりね。」
「ご無沙汰してます。」
「凛ね?ちょっとまってて。」
祐は「はい。」と言いかけたがその前にインターホンの接続が切れた。
それから5分。
「まだ出てこないのか…」
祐の記憶では凛が約束に遅れたという記憶はない。
さらに5分。
ガチャという音ともに凛がドアから飛び出してきた。
「ごめーん!」
その後ろには凛の母親の姿も見える。
その顔はどうみてもほほ笑んでいる。
「それじゃあデート楽しんできてね。」
その言葉を凛の母親が発した瞬間、凛の顔が真っ赤に茹で上がった。
「デートじゃないって!」
うふふと笑いながら凛の母親はドアを閉めた。
「はぁはぁ…」
凛の顔はまだ少し赤い。
「だ、大丈夫?」
「う、うん。」
凛は一度深呼吸するといつも通りになった。
…いやいつも通りではない。
化粧をしているわけではない。ただいつもの制服とは格好が違い過ぎたのだ。
第一学校の女子制服は昔からのひざ下まであるスカートにブレザーといった感じだ。それでも昔と違うのは肌の露出が基本的に禁止されているのでタイツなどで素足をさらすことはなくなっているということだ。
それに対して今の凛は、素足を晒していないという点は同じだが、ひざ上までしかないスカートに黒いタイツ、上はワイシャツ風の格好だ。デバイスは…まぁこの際どこにあっても構わないが、この格好は確かに露出はしていないが男の目を引くか引かないかで言うと確実に引く。ひざ上のスカートだけでなく、決して大きいわけではないが小さいわけでもない胸部も柄のない上の服によって強調されている。
祐は目のやり場に困って目をそらしてしまった。
「…祐?」
「ど、どうした?」
「…どうかな、今日の格好。」
「居、いいと思うぞ。可愛い。」
祐は少し照れながらも答えた。
「ほんと!ありがとう!」
凛は満面の笑みで喜んでいた。
その喜んだ顔で少し祐も落ち着いたのか、
「さ、行くか。」
2人はそろって歩き出した。
読んでいただきありがとうございます。新編というわけではないですが今回から少し休日編になります。基本的に戦闘シーンはないのでまったりとした感じになりますが今まで戦闘一色な感じだったので違いを楽し出もらえたらうれしいです。(かけるか怪しいですが頑張ります)
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他にもこんな感じに書いたら?などコメントよろしくお願いします!