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検定編9

一番に着いたのは凛だった。続いてランキング6位の生徒が来る。

2人の間に会話はもちろんない。

そして少しして祐がやってきた。

凛は笑顔で話し変えようとしたがそれをやめた。

祐の顔が一層厳しいものになっていたからだ。

凛にはさきほどの相手のように猛犬に見えた。

そして最後にやってきたのはもちろんヨハンだ。

ヨハンはあえて祐の横を通っていった。

「なにかな?」

ヨハンは睨んでいた祐に挑発するような態度で問いかけた。

「こんなこと早く終わらせたいんだけどなーアリシアとの日取りも決めなきゃいけないし。」

ヨハンはわざと祐に聞かせているようだ。祐は危うくその挑発に乗りそうになった。

「祐、我慢して。祐の気持ちはわかる。でもここで殴ってもアリシアは喜ばないよ。」

アリシアが祐に囁く。

祐はその言葉で思いとどまり拳を握りしめるだけで終わった。

「どうかしたのかな?藤谷くん?」

それを見てヨハンはさらに挑発を繰り返した。

祐がついに爆発しそうになったが先に声を発したのは凛だった。

「ちょっとあんたふざけすぎじゃない?こんなところで挑発染みたことしないでくれる?」

それを見てヨハンは笑ったように見えた。

「そう見えてしまいましたか、それは申し訳ありません。」

ヨハンの口調には笑っているように見えたが表面上は文句のない謝りかただったため凛はそれ以上何も言えなかった。

それからしばらく静寂が訪れる。

そして協会の人間がやってきた。

「それではこれから決勝トーナメントの組み分けを決めます。この箱の中から一枚とってください。1番を引いた方が第一対戦、2番の方が第二対戦です。」

真っ先に動いたのは祐だ。

祐は箱の中から一枚の紙を取り出す。

四つ折りにされた紙を開くとそこには2とだけ書かれていた。

続いて凛が引く。

凛が引いた紙には1と書かれていた。

凛は内心ほっとしていた。今の状態の祐と当たると思うと恐ろしかったのだ。

だがそれと同じくらい違う気持ちもあった。

(これで祐か私のどちらかがヨハンと当たる…そして祐がヨハンと当たれば祐は確実にヨハンを殺す勢いで行く…)

凛は自分が戦うのがいいのか祐が戦うのがいいのかわからなかった。祐が戦わないで自分が勝つ方がいいのだろうがアリシアをあそこまでにした人間に勝てるのかという疑問があった、自分も同じ目に合うのではないかと。

次に引いたのはヨハンだ。

「お、1番か。」

凛はビクッと震えた。

「そうか、君か。よろしくね。」

その顔は人気のある貴公子然とした顔だ。

「…えぇよろしく。」

ということはランキング6位が祐の対戦相手だ。

祐と6位の選手はお互いに一度相手を確認しただけで言葉を交わすことはなかった。

「それでは決勝トーナメントの組み合わせを発表します。第一試合、ヨハン・アルフォード対東峰凛。第二試合、藤谷祐対オーロ・フェルダ。試合開始は1時間後です。みなさまはこの後転送される控室に時間までに来てください。」

そういって協会の人間は去っていった。

それに続くように祐、6位の生徒が去っていく。

凛もそれに続こうとしたがその前にヨハンが立ちふさがった。

「なんですか?」

ヨハンは不敵な笑みで言った。

「君もかわいいね。僕のコレクションにしてあげるよ。」

ヨハンは凛の顔に触れようとした。

だがその手は凛にはじき返された。

「ふざけないで。」

凛は足早に去っていった。

「はは、おもしろい。君も叩き潰してあげるよ。」


祐は人を避けるように一番に控室に入っていた。控え室は4人とも別の部屋なので祐は今一人である、周りから見るとだが。

祐は今一人ではない。自分の中にもう一人の自分と、光剣『Suction』の霊体|(?)がいる。

「さて、どうしたものか…」

いつもの祐が表に出ていたのはアリシアが負ける直前までだ。アリシアが炎の矢で撃たれたとき祐の感情が一気に高ぶった。

 「アリシア!!」

 そう言ったとき祐の辺りは暗闇だった。

 「これはまた光剣の中なのか?」

 祐は辺りを見回してみるが、前回のような光は見当たらない。

 とりあえず進んでみる。だが一向に景色は変わらない。

 祐は一度立ち止まる。

 (この場所はどこだ…可能性は光剣の世界にまた飛ばされた、現実世界でどこかに連れ去られた、はたまたまたどこか別の世界…

 二つ目の可能性は低い。あの会場で連れ去られたなら俺にも少しはわかるはずだ。だとしたらあとは光剣の世界か別世界ということか。この2つなら光剣の世界の方が可能性は高いか。なら)

「そういえば名前聞いてなかったな…まぁ今はいいか『Suction』!いるんだろ。」

目の前に一筋の光が走る。

そこに白い服の少年と少女のどちらとも言えない人間が現れた。

「お呼びですか、マスター。」

「…お前の性別はどっちだ?」

「私に性別という概念はありません。マスターが持っている知識によって姿形を創ります。」

「そ、そうか…ならなんで幼い体形なんだ?」

「そのほうが話がしやすいと思ったからです。大人の体型だと敵と認識される可能性がありましたから。」

「なるほどな。まぁこの話はこれくらいにして、ここがどこかわかるか?」

光剣の霊体|(?)は辺りを見回す。

そして考え込むように目を瞑った。

「…ここはマスターの心の中とでもいったような場所のようです。」

「心の中?」

「ええ、マスターの心には2つの目の魂のようなものがあるようです。そして今それがマスターの身体を支配しているようです。」

「…つまり俺の身体は乗っ取られたということか。それは取り返せるのか?」

「申し訳ありません。それはわかりません。ただ言えるのは、あそこにいる者が何か知っているのではないでしょうか。」

そう言って霊体|(?)は祐の方から右に向き、指をさした。

そこには重々しい仮面と鎧をつけたやつがいた。

「…あれは人間なのか?」

「人間かどうかはわかりませんが、魔力はマスターのものと似ています。」

「…そうか。とりあえず近づいてみるか。

 そういえば、お前のことは何て呼べばいいんだ?」

「マスターが呼びやすいもので構いません。」

「そうか…ならサリーとかどうだ?」

「わかりました。これからはサリーとお呼びください。」

「よし、じゃあサリー行くか。」

「はい。」

2人は鎧に向かって歩き出す。

鎧は近づくにつれてその様相がわかるようになっていった。

顔を額から鼻先まで覆う後ろに角のようなものが2つ付き、風になびくトサカのついたマスクをつけ、骸骨をモチーフとしているかのような鎧に悪魔の手、そしてそれを覆うほどに大きいマントをつけた者がいた。

「…おいおい、あれは漫画とかに出てくる奴じゃないのか?」

「漫画の始まりはこういうものを見た人間が書いたといわれることもありますので。」

「そっか、まぁとりあえず。

 おい、そこのごついの、俺をここから出してくれないか?」

鎧は何も言わない。

「…聞こえてるのか?」

祐は近づく。

そのとき、

「マスター攻撃きます。」

祐は驚いた顔で上を見た。

鎧は無表情のまま剣を振りかざしていた。

祐は右手から振り下ろされた剣を左に跳ぶことで何とか躱す。

受け身を取り立ち上がったところで

「話し合う気はないってことか…サリー剣はあるか?」

サリーはスッと後ろから現れ光剣を差し出す。

「どうぞ、どうやらここでは私を介さなくても武装変更ができるようです。」

「そうか、ありがとう。」

サリーを一度見て祐は敵の方を向いた。

よく見ると敵の剣は祐と同じ光剣に見える。柄の部分は同じで剣の部分が実剣のようだ。

祐は光剣を抜き、構えを取る。

だが敵に動く様子はない。

「俺が動かない限り何もしないってことか。なら!」

祐は柄のスイッチを押し加速の魔道を発動させ敵に向かった。

祐は一瞬で距離を詰め、剣で相手の胴を振り切ろうとしていた。

だが、相手の剣は祐よりも先に祐の頭上にあった。

「なっ!」

祐は胴を狙っていた剣の軌道を頭上の剣と自分の間にいれる。

キン!という金属同士がぶつかる音が鳴る。

その音は金属が擦れる音となり、2本の剣がせめぎあう。

だが祐は頭と剣の間に無理やり剣を入れたため体勢がかなり悪い。

それに対して相手はまっすぐに剣を振り下ろしただけだ。このままでは確実に祐が押し切られる。

そこで祐は振動の魔道を剣を起点に発動した。

その兆候に気が付いたのか敵は剣をすぐさま離す。

人間の身体はある一定の振動でけいれんを起こすことがある。そしてけいれんを起こしたとき腕の力は弱まる。敵はその隙を突かれるのを恐れうまく逃げた。

だがそれが祐の狙いだった。

(やはり、敵は俺のことをよく知っている。だから今俺が振動を使ったことが分かった。つまり、)

祐は剣を下した。

「やっぱりか、お前俺だな?」

敵が驚いたように固まる。そしてすぐに口元が笑う。

同時に剣も下された。

「さすがだ。そうその通り、私はお前だ、ほとんどな。」

そう言って敵は仮面を外す、するとそこにあったのは祐とうり二つの顔だった。

だがその顔には亀裂が走っていて、目もどこか焦点が合っていないというかどこも見ていないように見え、髪も白い。

「ほとんど?」

祐は見逃さなかった。相手が言った言葉の中に自分が推測したものと違う言葉があることを。

「そうだ、私はお前の膨大な魔力の元の悪魔『ルシファー』だ。そしてその魔力は今お前のものだ、だから私はお前だ。だがその私の意識はお前と一つではない。だからほとんどということだ。」

「それで、ルシファー、お前はなぜ出てきた?」

ルシファーは笑って言った

「それはお前が求めたからだろう、私はお前が怒りによって強い力を求めたのを感じた、だからわが力を解放してやったのだ。今のお前では勝てないお前が殺したい敵を殺すためにな。」

つまりこいつはアリシアがやられたときに祐がヨハンを殺したいといつもより強く思ったがために出てきたということだ。

祐はヨハンが自分よりも強いとわかっている。あいつの力はおそらく普段の祐なら片手でひねることが出来るだろう。だから強い力を求めた、その結果こいつに意識を奪われたということだ。

「なるほど、ではなぜお前の意識はここにある?」

「ふっ、それはお前の力が私の予想をはるかに上まっていたからだ。私は今回使った力でお前の支配できると思った、だが実際には私の力だけがお前の戦闘意識に取り込まれた。その結果今お前の身体はただ殺したい人間を殺すということだけで動いている。」

「つまりお前にもコントロールできないということか。」

「あぁ無理だ。まさかお前がこれほどとはな。」

「それで、これをどうにかすることはできるのか?」

「私には無理だ。今の状態で私が力を使えばお前の体ごと私も消え去る。お互いの干渉に耐えきれなくなってな。」

祐がどうしようかと悩んだ、このままではたくさんの人間を殺すことにになってしまう…


読んでいただきありがとうございます。

今回は少し短めです…すいません。

どうしても土日はすることがあってあまり書くことが出来ません…


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