検定出場編1
「えー、今から300年前に世界は大きく二つの勢力に別れました。それは政治的ではなく武力そのものです。西側は天使ウリエルを先導者とし、東側は悪魔メフィストを先導者としました。双方ともにもう片方の勢力を無くそうと戦闘を繰り返しました。はじめは銃火器などを使用した白兵戦でしたが、まもなくして天使側から武装をしていない5人が戦場に出てきました。悪魔側の兵士はそれを容赦なく撃ち殺そうとしました。しかし、彼らに銃弾が当たることは一度としてありませんでした。これは障壁を展開していたためです。5人は手を前に出すだけで悪魔側の兵士をほとんど壊滅させました。それを受けて悪魔側からも5人が出撃し、どうように天使側の兵士を壊滅させました。このあとはこの10人での戦いとなりました。これが第一次魔天対戦です。
この対戦のあとに双方は条約を結びました。そして西暦から法歴へと変わりました。さらに争うように学校を建てました。」
キーンコーン
「そしてその学校がここです。この続きは次の授業で。」
教師は自分のタブレットをもって教室を後にした。
「うーん。」
「祐、相変わらず寝てたね。」
「ん?まぁな、こんなこと誰でも知ってるだろ。わざわざ授業する必要ねーよ。そういう凛もあんまり聞いてなかっただろ。」
「げ、見てたの?相変わらずそういうところだけには目が行くんだから。」
凛こと東峰凛はそういうとそっぽを向いた。
それをみて俺、藤谷祐は笑った。
「仕方ないじゃない、もうすぐ検定なのよ。そっちに気が行っちゃって授業所じゃないわよ。」
「おうおう、さすが優等生様だ。今回もまたワンコーラムかな?」
「祐だってきちんと戦えばワンコーラムに入れるでしょ?」
「俺には無理だよ。俺には凛と違って魔力ほとんどないんだから。」
ワンコーラム、One column、一桁という意味だ。
今の時代、大規模な戦闘はほとんどなくなった。そこで魔力の高さや技のキレを判断するために検定という名目で実力が図られる。そしてその順位は学校だけでなく、幅広く公開される。そしてその1ページ目10人の中の上位9人はワンコーラムとして様々な特権を得る。
凛は今だ1年ながら卓越した技術と膨大な魔力で現在8位である。
それに対して俺は2ページ所か3ページ目にもいない。この学校にいるやつは少なくとも1度は2~3ページ目に入ったことのある人間だ。
その結果俺についたあだ名は
「最下位」
「それは検定の審査基準が祐に合ってないだけでしょ?実戦なら祐は私よりも強いじゃない。」
「今どき実戦なんてないよ。合ってないって事はダメってことなんだよ。」
「もうそうやってすぐ諦めるー」
「いや別に俺は」
そのとき
「藤谷祐君は至急校長室まで来てください。」
放送が流れた。
「ゆーう、なんかしたの?」
「いやいや、そんな呼び出されることなんてしてないから。とりあえず行ってくるわ。」
そう言って俺は椅子から立ち上がり教室を出た。
廊下を渡り階段を上っているとき前から大柄な男が取り巻きを連れて前に立ちふさがった。
「よう、ついに退学先刻か?最下位。」
「お前には関係ないだろ、権堂。」
「てめぇ、呼び捨てにするなと何回言えばわかるんだ。俺様は2年で唯一のワンコーラムだぞ?」
「9位だけどな。」
その言葉を聞いた瞬間、権堂は右手で祐に殴り掛かった。
祐はそれをよけることなく左手だけで軽く受け止めた。
「なっ!」
「急ぐから。」
それだけ言って祐はその前を後にした。
「失礼します。」
祐は重々しい扉を開けた。その部屋は奥に広く飾り付けもかなり豪華だった。
そして一番奥に机と椅子がある。祐が机の前に来たときその椅子はくるっと周りメガネの男が姿を現した。
その男は決して屈強には見えない。しかしどこにも隙は無く攻撃を仕掛けることはできそうにない。そしてその顔はかなり整っているがこの一言に尽きる。「胡散臭い」
「やぁ、祐君。久しぶりだね。」
「ええ、権堂との一件以来ですから2ヶ月ぶりくらいでしょうか。」
「相変わらず君たちは仲が悪いねぇ。」
「しようと思ってませんから。」
俺はこいつを信用していない。しかし、この男は20代後半という超若い年齢でこの魔道学園第一学校の校長なのだ。その力は計り知れない。
「それで、俺をここに呼び出した理由は何です?」
「相変わらず世間話には付き合ってくれないのね…」
落胆したような顔をしているがそれが本当なのか俺にはわからない。
「まぁ、いいか。じゃあ早速本題に入ろう。君には来月の検定に出てもらう。」
俺は驚きのあまり固まってしまった。当然だろう、前述のとおり俺は一度もランクインしていない。
「…俺が出ても勝てる見込みはないと思うんですが。」
「まぁ、検定が今まで通りならね。これを見てくれたまえ。」
そう言って校長は右手を机の上にかざした。するとそこから半透明のディスプレイが現れた。それを俺の方に向けた。かなり細かい字でいろいろ書いてある。
上からざっと見ていくと下の方に○で囲まれた場所があった手でスワイプして拡大するとそこに書いてあったのはこの一文だった。
『今回より検定は対戦方式とする。』
俺はまた驚きに包まれた。
検定は今まで個人が競技場の中央に立ち、指定された魔道を使用し、そのキレと規模を判定するものだった。
しかし、ここに書かれているのは対戦。つまり魔道を用いて対戦するということだ。
「これは…どういうことでしょうか。」
「最近、天使たちとの戦闘が活発になっているのは知ってるよね?」
俺は頷く。
「それで協会も焦ったんだろうね。すぐに主力として使える人間を集めようとしているみたいだ。」
その説明はまだ裏がありそうで納得できなかったが天使側との戦闘が増えているのも事実だったので言い返せなかった。
「それで、なんで俺なんです?凛や権堂だけじゃない、この学校にはツーコラムだってたくさんいるじゃないですか。」
「もちろん東峰さんや権堂くんにも出てもらうつもりだよ。でも君の実戦能力は卓越しているからね。」
「しかし、ここにも書いてありましたけどこの対戦っていうのはあくまで魔道を用いたものであって格闘戦は禁止とかいてありますが。」
「まぁ、それはどうにかしてくれたまえ。」
「いやしかし、」
「それじゃあこうしようか、藤谷祐、君は来月開催される魔道検定会に参加せよ。これは学校長命令である。」
校長が笑みを浮かべた。
学校長命令、これはこの学校にいる限り逃れることのできない命令だ。これを撤回するには職員会議を開き、全職員の賛同を得なければならない。もちろん校長のもだ。つまり撤回は不可能だ。
「はぁ…」
「仕方ないじゃない、もう決まったことなんだから。」
祐はそのあと重い足を引きづって教室に帰った。席に着くと凛がやってきた。
「仕方ないって言ってもなぁ、格闘戦禁止ってことは武器で直接攻撃できないのに俺にどう戦えと…」
「うーん、相手の背後まで近づいて魔道で攻撃とか?」
「それしかないかぁ…」
俺がうなだれていたそのときだった。
教室のドアが大きく開け放たれ、その衝撃で大きな音が教室に響き渡った。しかし、この音の大きさはドアがぶつかった音だけにしては不自然に大きかった。
「振動を増幅したのか…」
俺が小声でそう言うと、
「最下位、てめぇどうやって校長に取り入った!?」
入ってきたのは権堂だった。入るなり俺のところ目がけて一直線に、それもかなりイラだった顔でやってきた。
「取り入るって何をだよ。」
「しらばっくれるんじゃねぇよ。なんでお前みたいな最下位が検定に出るんだよ!」
権堂の声はかなり大きく教室中だけでなく、廊下にまで響き渡っていた。
「なんでって言われてもなぁ、権堂、お前今回の大会要項読んだか?」
「要項?そんなもん毎回変わらねぇんだから読む必要ねぇだろ。」
俺は「はぁ…」とため息をついた。少し大げさにやったのだが権堂はやはり掴みかかってきた。
「てめぇ、俺を馬鹿にしてんのか?」
俺が言い返そうとする前に横から手が伸びていた。その手は俺につかみかかっている腕を思いっきり掴んでいた。
「権堂先輩、その辺にしてくれませんか?」
凛の顔はかなり怒りに満ちていた。この瞬間、俺の頭からは権堂のことは消え失せていた。…これは後処理のほうが大変そうだ。
凛の体格は決して屈強ではない。というより、容姿端麗という言葉が似合いすぎるほど似合う。赤いロングヘア―にすらっとした体つきはモデルとも見間違われるほどだ。
それにワンコーラムと来ている。そのため学園のアイドルとまで言われている。本人は気に言ってはいないが。
「離せよ、東峰。俺が用あるのはこいつだけだ。」
「俺は用ないんだけどね…」
「てっめぇ。」
権堂の俺をつかむ手がより強くなった。そのとき教室が異様な魔力上昇に包まれた。
やったのは凛だ。凛は膨大な魔力を持つがゆえに大きな魔道を得意としているが、そのコントロールはまだ甘く、感情の起伏で周辺に変化を及ぼしてしまう。今はその状態だ、周辺の魔力が上昇すると、その魔力に耐えきれなくなった者は乗り物酔いに似た症状が出る。まだ教室の中で倒れた者はいないがそろそろ出てもおかしくない。よって俺がこれを収めるしかなかった。なんとも損な役回りである。
「凛、落ち着いて。」
そう言って肩に手を当てると凛はハッとした様子で我に返った。当然周辺の魔力も収まった。
それを確認してから俺は権堂に向き直った。
「権堂、今回から検定は大きく変わる。」
驚いたのは権堂だけでなく凛もだった。つまり凛も要項は読んでいなかった。
「今回から検定は対戦方式となる。格闘戦は禁止されているが今までのように技の規模やキレだけでは勝ち抜くことはできない。だから俺が選ばれたんだとさ。」
教室もかなり騒めいた。本当に誰も要項を読んでいないんだな…そう思った。まぁ俺も読んでいなかったのだから人のことは言えない。
「対戦…」
「そう対戦だ。俺は確かに魔道単体ではこの学校の誰にも勝てないだろう。だが、対戦となれば魔道を使うタイミング、発動するまでのプロセスや使用する魔道の選択まで多種多様なものが求められる。俺は分析が得意だからな、そういうのはよくわかってる。」
権堂は納得していないようだった。しかし、俺の言葉に反論することはできなかったようだ。
乱暴に俺を解き放ち、早足で教室を出ていった。
そのあとに待っていたのはクラスメイトからの称賛の嵐だった。権堂は9位という実力者だがその人間性はかなり悪いので結構嫌われている。しかし、あいつに勝てるものはほとんどいないので逆らうことが出来ていなかった。その結果、権堂を追い払った俺に称賛が来たのだった。
そしてその称賛が終わった後、凛が話しかけてきた。
「対戦って具体的にはどんなものなの?」
「さぁな、俺が見せられた要綱には『今回から検定は対戦方式とする。』としかなかったからな。」
「そっかぁ、ツーマンセルなら一緒にやろうね。」
「あ、あぁ。」
凛は笑顔で席に戻っていった。周りからはかなりの嫉妬の目が向けられている。
(学園のアイドルだもんな…まぁ仕方がないか。)
ツーマンセルとは二人一組で戦う対戦方式の事である。魔道は互いに影響を及ぼすことはないが、敵味方の指定はない。術者が決めた方向、場所に発動するだけなので、多人数での戦闘になると味方にも当たる可能性がある。なので、団体戦というものはまずない。多くても三人一組、だいたいの場合は二人一組か単独となる。
その日はこれ以上何もなかった。いつも通り凛と帰っていると、(凛とは幼馴染なので済む場所も近い)後ろから奇妙な気配を感じた。
俺に対する嫉妬や凛に対する願望の眼差しはよくあることだが、今回のはそれとは違っていた。
明確な悪意。その一言に尽きた。
「凛、少し急ごう。」
「どうしたの?」
最初は疑問に思っていた凛だが、俺の真剣な顔を見て気づいたようだ。
俺が凛の手を握り、魔道を使用して駅まで走った。
この町は魔道にかなり寛容だ。この町以外では魔道を使うこと自体が刑罰の対象になっていることも多い。しかし、この町では相手に危害を加える魔道でない限りは刑罰の対象にならない。
今使ったのは加速の魔道だ。高位の魔道士や俺のように分析が得意な者には魔道を使用しただけで相手の位置がわかる。それを相手も理解しているようで俺たちをこれ以上追ってくることはなかった。
いつもは20分はかかる道のりを5分もかけずに駅にたどりついた。
そして手を放して凛の方を向いた。
「凛。」
「な、なぁに?」
凛もこちらを向いたのだが、顔を決して上げようとしない。しかし頬が少し赤くなっているように見えた。
「さっきのやつは俺と凛のどちらを狙ったものかわからない。だからこれからしばらく一人での行動は避けてくれ。」
「う、うん。わかった。」
いつもより弱弱しい声に少し疑問を思えながらも俺たちは目の前にある車両に乗った。
法歴300年の現在、昔の電車というものはなくなった。2~5人乗りの個別車両が駅には所せましとあり、その個別車両に乗って目的の駅まで行くというのが現代の交通だ。この結果電車待ちという言葉はなくなった。
最寄りの駅に着いた俺は個別列車に乗ってから一言も話さなかった凛を家まで送り、自宅に着いた。
家と言っても俺以外には誰もいない。父親は軍務での戦闘先で戦死し、その結果母親がその分の稼ぎを得るという口実の元夜遅くまで働いているので、(母親は大会社の重役なのでそこまで働く必要がないことはわかっているのだが)この家はほぼ俺一人の場所だ。
表向きは二階建ての普通の家だが、地下二階まであるという大きな家だ。もとは姉もいたのが姉は学園を卒業するとすぐにどこかへ行ってしまった。
俺は二階にある部屋に荷物を置き、制服から着替えると地下の練習場へと向かった。
地下二階にあるのはそこらの練習場よりも高機能な設備を整えた練習場だ。そのコントロールルームに入ると、まずコンソールで敵のレベルをマックスに設定し、コンソールにつながれているHMDを取り外し頭に付ける。練習場に入るとHMDから「それでは演習を開始します。よろしいでしょうか。」という機械音声が聞こえた。それにもう少し抑揚に改良ができるなと考えつつ同意すると目の前にプログラムの敵が出現した。
演習を3回ほど繰り返し、(一度も負けることはなった)シャワーで汗を流してからダイニングへと向かった。
現代は料理の必要がほとんどなくなっている。簡単な料理は家に取り付けてある調理器でボタン一つでできてしまうからだ。
調理器で適当に料理を選びそれを食べ終えると食器を台所に戻した。台所もなくてもいいのだが母親の要望により取り付けられている。(ちなみに食器も自動洗浄があるので皿洗いなどというものはなくなっている)
そして部屋に戻るとすぐに夕方のことが頭に浮かんだ。
「さっきのやつはなんだったんだ…狙いは俺か、凛のどちらかだと思うんだが、凛は8位の実力者だ。それをたった一人で狙うのはかなり危険だし、俺を狙うにもわざわざ凛のいるときを狙う必要はないはずだ。一体なんなんだ…」
次の日、学校に行ってみるといつにも増して騒がしかった。
そして皆が一様に俺を見ている。そこに朝からワンコーラムの特権を使って学校では教えられていない魔道を練習していた凛が走ってやってきた。
「祐!大変なことになっちゃったよ…」
「どういうことだ?」
「権堂先輩が祐が検定に出場するのは不当だと特権を使って正式に抗議したみたいなの…」
「それは、それは…」
祐にとってみては嬉しい出来事だった、検定出場は校長の半ば強引な技がなせるものだったからだ、この言葉が出るまでは。
「せっかく、祐と同じ舞台に立てると思ったのに…」
祐は昔一度大ケガをしている。それは凛が不良に絡まれたときそれを助けたためだった。それを凛は今も自分のせいだと思っている。それを見ているのが辛かった祐は「いつか凛と同じ舞台に立つから大丈夫だ。」と言ってなだめた。その結果この凛の一言で祐は検定に出る以外に道はなくなったのであった。
そのとき、人垣が急に開いた。そこから出てきたのは権堂だった。
顔に隠すことのない笑みを浮かべながらこちらに向かってくる。
権堂が祐の目の前に立った瞬間、凛が何か言おうとしたがそれを手で遮る。
「おはよう、権堂。」
「よぉ、最下位。残念だったな、お前これで検定に出られない。」
笑みがさらに強くなる。凛がまた何か言おうとしたがそれを手で遮る。
祐は権堂の目を見ていった。
「そうですね、これは残念です。このままでは俺は検定に出られませんね。ただ一つを除いては。」
周りがざわつく。権堂の目にも驚きが見て取れる。
そう、この状況を打開する方法が一つだけある。それはこの学校の校則の一文を用いたものだ。
『上位者が下位者になにか命令を下した場合、言われたものが言ったものに模擬戦で勝った場合のみ下位者がそれを受け入れんとすることが出来る。』
これを使うと悟ったのだろう、権堂は顔を顰めて言う。
「てめぇ、俺に模擬戦を吹っ掛けようってのか?」
「あぁ、そういうことだ。」
「いいだろう、いまここでぶっ潰してやるよ。」
権堂が戦闘態勢を取ったそのときだった。
二人の前に一人の男が現れた。
「朝から揉め事かな?藤谷くん、権堂くん。」
「校長…」
「聞いたところによると模擬戦をしたいようだね。でも模擬戦には教職員の許可がいる。」
その通りだった。ここで教職員が模擬戦を拒否すると問答無用で俺は検定に出られなくなる。
俺が顔を少し顰めたのを見て笑みを浮かべたのか校長が言った。
「いいだろう、その模擬戦この僕が許可しよう。時間は今日の放課後、第一演習場にて行う。ルールは今検定と同じとする。それまで相手に対する一切の危害を与えることは禁止だよ。」
「いいだろう、受けてやるよ。お前をぶっ潰してやるよ最下位。」
そう言って権堂は去っていった。
「じゃあ頑張ってね。祐くん。」
そういって校長も去っていった。
祐は凛を連れて教室に戻っていった。
その日は模擬戦の話をされるかと思って覚悟していたのだが、教室で模擬戦の話をされる事はなかった。
そして放課後、第一演習場に向かう途中、
「ごめんね、私が一緒に検定に出たいって言ったからだよね、今回の模擬戦。」
凛がついてくると言ってきかなかったので一緒に居る祐は首を横に振ってこう言った。
「凛のせいじゃないよ。俺が出たいから戦うんだ。だからごめんじゃないよここで俺がほしい言葉は。」
それまで下を向いていた凛は顔を上げて言った。
「…そうだね。頑張ってね祐。私祐が勝つって信じてるから!」
「あぁ。」
祐は笑顔で凛に答えた。
そして第一演習場。
今俺の目の前には権堂がいる。格好は実技に使用する高軌道スーツだ。俺も同じように高軌道スーツを着ている。
凛は俺側の監督席に居る。
「さぁて始めようか。準備はいいかい?二人とも。」
向かい合った魔道の戦闘では基本的に先に相手に魔道を作用させた方が勝つ。
そして権堂は確信していた、最下位たる藤谷に自分が劣るはずはないと。
「それでははじめ!」
決着は一瞬でついた。しかし大方の予想とは違い立っていたのは祐だった。
権堂の後ろに回り右手には伸縮性の警棒を持っている。そしてその警棒にはトリガーがついていてそのトリガーには指がかかっていた。
校長は笑みを浮かべて言った。
「勝者、藤谷祐。」