XX エピローグ 箸にも棒にもかからない話 1
短いですヾ(⌒(_*'ω'*)_
「――なるほどね。本当に何も無かったんだ……君には言うけど、その世界に勇者とか転生者とか行ってるんだけどね。会ってないのかい?」
「ええっと、気が付きませんでした……でも私達の傍には居なかっただけでは」
「ううん。話に出てきた学園だっけ。そこに勇者が入って、その後に記憶持ちの転生者が入ったみたいだ」
「へ、へぇ」
……ニアミスしてたのか。別に入学するつもりは無かったけれど、もし会っていたら何かあったのかな……。
いや、何も変わらないだろうなぁ。面倒そうだし。
「面倒だよね、きっと。普通の生活をしているヒト種からすればいい迷惑だ」
「……久しぶりに心を読まれました」
「まぁね」
何というか、この人が前の姿のままっていう事は、私の信仰は別段変わってないって事だな。不敬にも程がある。
「いいよ別に暇だし。良い娯楽だったよ。でも考えたねぇ、神との関わりを持っていたいっていう願いは、そうそう無かったよ。僕が送った人達の間でもね」
「生きて行くために必要な物は、ゲームの中にありましたから」
「そうだよねぇ。でも偶に居るんだよ、特別な、それこそ"世界"に一つだけの能力とか欲しがるヒトがね」
確かに、それは魅力的だ。
正直そう言われると欲しい部分も出てくる。
「別に手間じゃないし良いんだけどね。さて、願いは"僕"との交信。次は、交換だっけ?」
「それで宜しいのでしたら、是非に」
「さっきも言ったんだけど、暇だし良いさ。丁度送った勇者が魔王と国王倒して終わった所だし」
こ、くおう……?
「何か裏でこそこそしてたみたいだね。勇者視点で見てたけれどあからさまだったよ。とりあえず願いは何かな?もうすでに頭の中にあるソレで良いのかい?」
「あ……はい。後は関係者皆の記憶を……ソレらしいのにして頂ければ」
「ふーん。それだけで良い?まぁ良いよ。じゃ、また面白い物があったら言ってよ。基本暇してるからさ」
「ありがとうございます。また溜まったら、お伝え致しますので」
ふっと、強く感じていた気配が消えた。
防音にしていたってのもあるけれど、魔術的な隠蔽もしていた甲斐があった。まさか自室で神降ろしをするとは誰も思わないだろう。この為に純潔も保ってきたし、何とかなって良かったぁ。
一息ついてソファに俯せで寝転んでいると、アリエルさんがノックをして部屋中に入って来た。
「シズナさん、夕食の用意が出来ましたけれど……何かお疲れのようですね? 如何いたしましたの?」
「えっと、ちょっと趣味に夢中で」
ずっと続けているフィギュア制作のせいにして、この身に降ろした事は秘密にする。余計な事だしね。
「そうですの……お休みになられますか?」
「いいえ。お腹が空きましたので、アリエルさんの美味しい手料理を頂くことにします」
「まぁ。ありがとうございます」
「それで、ですね……」
「はい?」
ちょっと恥ずかしいけれど、もう大丈夫だろう。約束もしたし、対価もきちんと払ったし。最初は対価に見合うのか不思議だったけれど、暇なんだろうなぁ。
っと、いけない。アリエルさんに集中集中。
「今日の夜、良いですか……?」
「まぁまぁ珍しい。シズナさんの方からですの。大丈夫ですわよ?」
寿命による年齢の差なのか、アリエルさんの背は私より10センチくらいは高い。しかしそれくらいの差の方が、彼女曰く色々し易いらしい。
今も丁度抱き締められてしまった。
何か、もう男であった時の矜持とか、消え失せてしまったと実感できる。
「あ、あの……アリエルさん……」
「何でしょうか?」
さぁ、言うぞ。
「今日から……大丈夫、ですから……」
「……」
あれ?
「……」
「あのアリエル、さん?」
「そう、そう、そうですの……」
ん?
「我慢しなくても、良いの、ですね……?」
「え、ええ。もう"守る必要は"ありませんから」
「そうですの……では、今夜」
啄むように唇を奪われて、けれど夕食を待っている皆の元へ伺う。みんなの前でも、同じ事言わないとなぁ、と思いつつ。
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