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異世界生活の日常  作者: テンコ
第4章 彼女の仕事
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4-04

 虎族の集落を出て10日。その集団を発見した。


『距離はどれくらいですか?』

『そうですわねぇ……お嬢なら走って3時間と言う所かしら』

『かなり離れてますけれど迂回出来……ああ、場所が悪いんですか』

『ええ。王都に戻るなら、あの渓谷近くは通らないと戻れませんよ』


 盗賊……言葉にすれば彼らがどんな存在かは一目瞭然である。


 その性質、性格は千差万別だがやっている事は皆同じだ。

 人を殺し奪い貪る。

 義賊という言葉もあるが、それでも彼ら自身が強者と定義した者から搾取しているに過ぎない。

 そしてそんな彼ら彼女らは増える事はあっても減る事は無いのだ。


 この世界は比較的出生率が高い。

 魔力があり魔法がある。私はお目にかかった事がまだないが、呪術的な技能もあるらしい。

 魔物等のせいで全体的な発展は押さえられているが、技術の進歩と言う面では個々が底上げている。


 とりわけ回復魔術や身体能力向上等は、それ専門で代々引き継ぐ人が居る程の人気職で、結構な数が居るのだ。

 技術を持っていると、飯に食いっぱぐれる事がないから。

 その為事故などで亡くなる人が比較的少ない。結果、人口が増える。


 だがそれは、良い事ばかりではい。


 魔物が跋扈する地域から中々外に出れない、限られた土地の中で人が増える。それは供給が間に合わないのと同義だ。

 いくらその狭い範囲で生産力が上がっても、元々のキャパが低いので劇的には改善しない。


 ……ってのはギルドの情報課の基本資料にあった事。ここ数年の問題らしい。


『どれくらい居ますか』

『50人は居ないでしょうね。はい、視覚よ』


 召喚(呼び出)した子から覚情報を貰った。


『あ、本当ですね。かなり居る。来る時は見なかったんですけれど』

『あれじゃない?また湧いて出てきたんじゃないですか?』


 結果、自らの収益で暮らせなくなり、簡単に盗賊や野盗は増える。


 虎族の集落へ向かった時から約1ヶ月程しか経っていない通過点。この道程に湧いて出ていたのもそんな類いの者だろう。


『あー……若い娘さんが2、3人目かな。今、亡くなったわ』

『……ここは街から距離がありますし、連れて行くより簡単なそっちを選んだんでしょうね』

『面倒な話ねぇ。で、どうします?やっちゃいます?』


 さて、どうした物か。見た所強者は居ない様子。今のこちらの戦力なら殲滅は出来そうだし、被害も出ないだろう。見知らぬ彼女たちの仇を討つ事も出来る。でも……


『正直後始末が大変ですし、見逃せそうなら見逃せます。別に森中で一晩過ごしても変わりませんし、好き好んで人死には出したくないので』

『なるほどね。面倒なのは嫌だわ。じゃ、様子見だけにしときましょう』


 名も知らぬ彼女達には悪いが、見も知らぬ他人の為にどうこうする気はない。

 "生きている者"が優先だ。

 話していた彼女に監視だけ任せて、私は野営の準備を始める事にする。





 翌朝、夜中頃の不寝の番で少し眠気が残ったが、何とか覚醒。

 すぐに野盗の現状を確認する。あちらは大所帯の為に動作は遅いが、朝から移動の準備をしているとの事。後はこちらへ向かって来なければ良し。

 向かって来るようなら、叩けば良し。


 こちらは移動の準備が出来ているし、あちらがどう動くか待つだけだ。

 暫く待つかと、腰を落ち着ける準備をしていた時。彼女がこちらへ寄って来た。そして念話を飛ばしてくる。


『お嬢。そろそろ欲しいんだけれど』

『……そうですか。分かりました』


 今回はロッテを呼んでいない。いくら距離があると言っても向こうから観測されない保障は無く、そして性格的にあまり落ち着けないロッテだと位置がバレて危なくなる危険があったから。

 しかし彼女は違う。

 落ち着いており、森中での行動、索敵、支援と適任なのである。雰囲気も落ち着いているし、頼れる姉貴分だ。


 彼女、アルルはアルラウネである。名前のセンスは何時も通りだ。


 テイム当初は幼い容姿だったが、アップデートを重ねる度に姿と能力が変わった公式に愛された召喚獣。


 今の姿は古き良き時代を彷彿とさせる妖艶な美女風であり、肌は少しだけ暗めの若竹色。

 真紅の花弁のような頭髪に当たる部分は編み込んであり、まるで家庭教師のお姉さんだ。

 服、と言うか、装飾は身体の一部を蔦や花弁で覆っているのみ。

 一応2本の脚があるヒトガタ。

 そんな彼女は爛々と妖しく、そして髪色と同じ紅く輝く瞳でこちらの口元を凝視してきた。


『先日ロッテちゃんには差し上げたのでしょう?でしたら、私にもお嬢のモノを下さいな』

『まぁ何時も迷惑を掛けてますし。それくらいなら』


 かなり身長がある彼女に、片手で腰を引っ張られた。もう片方の右手は私の頬を覆って撫でている。


『ふふ、お嬢から直に頂くのは久しぶりです』

『そう、ですか。すみません。気が付かなくて』

『いいのです。これからたっぷり貰いますので、お嬢は気を楽に――』

「はい。わかりまし、っ……何を、……するんでひゅか……あっ……」


 私の頬を撫でていた右手、その親指。その指で徐に、唇を撫でてきた。


『お嬢。私は愉しみだったんですよ』

「んむっ……何、なにを」


 その指は止まらずに、まるで探るような手つきでゆるゆると表面を撫で回す。


 ぬちゃ……。


 野営後で渇いている筈の唇からそんな音が鳴った。理由は分かってる。彼女の手から滲んでいる蜜だ。

 ゲームでは草花の精霊扱いだったから、こんな能力なのだろうか。ちょっと製作者設定違くない?と今考えても仕方ない。


「やめてくだ、んあ、やめなひゃ……んっ!」


 遂にその指が……そのまま口内を這って、私の反応を伺ってくる。

 彼女の指の味を感じてしまう。

 そして念話すら満足に出来ないほど、彼女の蜜でとろとろにされていた。何と言うちょろさ。


『何って、準備ですよお嬢。お互い良い気分で済ませた方が楽しいでしょう?』

「ひゃのひぃって……ひぁ……やへっ……」


 逃げ出せない体勢で、お姉さんに指で口中を撹拌されている私。時折舌の表面を軽く撫で、そのまま蜜を舌表面に擦りつけてきたりもする。

 じゅるじゅると涎が撹拌される音が耳まで響いた。彼女を押し返そうとしても、腕に身体に足に力が入らない。


『お嬢なら、命令して止める事も出来る筈ですよね。何故止めないんですか?』

「らっへ……らっへぇ……ひっ……」


 突然告げられた言葉に返す言葉も無い。その言葉に少し驚いて、そして自身が拒否してない事実に驚愕して、アルルの顔を上目遣いに見上げてしまった。

 見上げた先にある、凛々しくも優しい顔は笑みを形作っていたのだが、それは捕食者の顔に見えてしまった。

 

 そう、別に抵抗などせずとも一言、彼女に還れと命じれば良いのだ。


『ふふふ、何故、でしょうね?』


 ちゅぽんっ、と指が抜かれる。

 あっ……と誰かの、物欲しそうな声が聞こえた気がした。

 気がしただけなのに頬が火照って、湯気が出そうなほど赤くなっているのが分かる。


『どうしたんですか?まだ私は魔力を頂いていないですよ?』

「はぁはぁ……はぁ、い、いい加減に……んあっ!」

『お嬢はイケずです。先程私にもくれると仰ったではないですか』


 気が緩み、抗議の声を上げようとした。しかし指が再度――

 私は、彼女に腰を掴まれているのだ。抵抗しても逃げられない。いや、私の身体はさっきから抵抗何てしてない――


『ふふ、良い塩梅ですね。美味しいですか?お嬢』

「ん……ちゅる……じゅる……あ、まひ……でひゅ……」


 そう、甘いのだ。


 その言葉を聞いてか聞かずか、中をねっとり撹拌していた指で、彼女は抜き差しを始めた。

 喉の奥に向かって突き入れてくるのだが、苦しくない絶妙なタイミングで引き換えし、そしてまた突き込まれる。


『あら嬉しい褒め言葉。お嬢、素敵な顔ですよ。これなら楽しめそうです』

「ひょんにゃ……まっへ、くだひゃ……」

『もう我慢出来ないです。頂きますわ』

「まっ――」


 私の腰を抱き寄せようとした彼女が、突然止まった。


「はぁ……はぁ……」

『ちっ、間の悪い事です。お嬢、少々お待ちを』

「はぁぃ……」


 回されていた左手が抜かれる。その途端、私は脚に力を入れる事が出来ずに座り込んでしまった。

 腰が、抜けとる……。


「ふー、ふぅ……アルル。どうしたんですか?」


 何とか息だけ整えて彼女に問う。いや変な意味なんて無いけど、別にさっきまでの行為が残念な訳ではないけれど、彼女が真剣な顔だから。


『野盗がこっちの方向へ向かうかもしれないので。頭らしき男が、そう方針を決めてました』

「なるほど……遭遇するのは半日後ですか、いや大所帯だから夕刻以降かな」

『そうですね。"何もしなければ"ですけれど』

『ふぅ、何とか落ち着きました。アルル後で話がありますけど、まずは現状ですね』

『あらら、でもしっかり魔力は頂きますよ?お話しは全部が終わってからで』


 彼女には敵う気がしないな。さて、どうしたものか……。





 結局、野盗は全員撃ち抜いた。


 アルルの能力はゲーム中だと主人のHP回復だったのだが、今はそれも使える、程度の認識である。

 何故なら彼女は、時間を掛ければ森などの相性が良い立地、それに魔力を合わされば面白い事が出来るからだ。

 流石公式に愛された精霊召喚獣。


 今回は野盗が居る付近の植物を利用して、眠り粉的な花粉を撒いたらしい。恐ろしい。

 植物と意思を通わせる事が出来るので、頼み込んで魔力を込めた花粉を飛ばして貰い、その粉にアルル自身の魔法を掛けて眠り粉にしたそうだ。

 恐ろしい。


 もちろん環境、自身の技量、相手の実力全てが良い方に合わさって出来た結果だろう。


 デメリットは細かく相手を指定できない事か。

 そんな訳で野盗全員に眠りを与え、更に追加で痺れを与えて一旦放置。私はギルドに連絡を取ったのだが、


『その人数の野盗なら、討滅依頼が出てました。ヤっちゃって良いですよ』


 少しだけ返答を待った後、イヴァラさんが調べた事を教えてくれた。

 

『そうなんですか、分かりました。処理します』

『お願いします。あ、娘さんが3人程連れ去られたらしいんですけれど、如何ですか?まだ"生きています?"』

『……3人程、お亡くなりになった娘さんが居ます。死体は目の前に。目ぼしい物は所持していません』

『そうですか。では、焼き払って下さい。訴えておられる村の生き残りさん達は、そこから随分と遠い場所ですので』


 そして、何とも後味の悪い結末になってしまった。

 昨日見つけた時点で全員亡くなっていたし、結果的に女性3人の仇は取れたから良いかと思いながら、1人1人丁寧に頭を撃ち抜いて行く。

 動かないので楽なもんだ。


 その後は娘さん達の遺体と野盗共の死体を分けて火葬。所持品で使えそうな物は貰っていく事に。


 最後に冥福を祈って事件は終了だ。

 いや始まってもいないが、何となく格好が付かなかったから。実際、安全な位置から勝てる勝負をする方が賢明だ。殴り込んで戦っても結果は同じだろうが、別段する必要はない。


 その後は何事も無く王都へ向かう事にする。後4、5日で着くだろう、早くアリエルさんの顔が見たい。




 と、歩き始めようとしたら、不満げなアルルに待ったを掛けられてしまった。

 ――結局、貪られる事になる。

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