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異世界生活の日常  作者: テンコ
第1章 彼の気持ち
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1-01

ステータス表記がありますが、演出の一貫です。この話以降あまり出しません。

(これが、ゲームのキャラなのか?……)


 神に願った通り、私としての自我が芽生えたのが6歳児頃だ。





 大体の分別が出来る様になったのを見計らって私として戻ったのである。

 元々が私自身なので致命的な齟齬もなく無事に戻ってこられたのだが、やはり戻った瞬間に混乱等は否めなかった。


 それまでの生活での常識や行動を、私として統括していたのだろう。

 奇妙な行動を取ることが多くなったらしい。


 ……男性として生活してきた私が、女性として行動する時の差である。


 そう、身体的特徴の認識の欠如だ。


 転生をする時は考えてもいなかったのだが、当たり前に使用していたキャラが女性の身体だったのである。

 これには心底驚いた。

 確認をしていなかったと言われればそれまでなのだろうが、これまでの常識が通じないのであろうことは、これから生活していく上で考えねばならなかった。


 この世界は総じて自立意識が高いのか、6歳の女児とは相応のレディ扱いになる。


 記憶の統括が始まった時は男としての意識が強く男児の中に混ざろうとしてしまったりしたのだが、それはシスターに止められて怒られてしまう。


 着替えは女児として女児と共にである。

 精神年齢35歳独身の男性としては犯罪臭がしたのだが、記憶の統括が上手くいったあとは表面的には落ち着くことが出来た。





 話は変わるが、シスターである。

 シスターが身近にいる生活には訳があった。

 私は捨て子だったらしい。


 この世界に妖狐(一応正確には天狐)族として生を受け、しかし仲間意識が強い亜人種のしかも妖狐族が子を捨てるとは考えられず、考えられるのは一つなのだろう。

 隔世遺伝だ。


 この世界(後で知ることになるのだが世界名は今のところなし、大陸や国の名前だけが決まっている)にはゲームと同じ様な種族が存在している。

 また、亜人やエルフとヒューマンで子が成せる為、長い歴史があるなか時たまヒューマン同士の子供に亜人やハーフエルフが生まれるのだ。


 常識として隔世遺伝があることは知られ広まってきてはいるが、それでも気味悪がる親は一定の数存在し、それを教会付きの施設に預けたり言葉は悪いが捨てるのだと言う。

 私もその一定数の中に入っていたのだろう、生まれた日付と名前が書かれた紙、銅貨5枚を入れた布袋、包まれていた動物の毛皮以外の所持品は何もなく教会の入口に置かれていたらしい。

 売り物として他の場所へ売られなかった事を幸運に思うべきだろうか。





「シズナ、ちょっと来てください」

「はい、なんでしょうシスタークラリッサ」

「新しい子が入ったの。ちょっと教会の案内をしていただけないかしら」

「かしこまりました。お手伝いさせて頂きます」

「いいお返事ね。それでは、宜しくお願いします」


 私を取り戻して4年が過ぎた。


 特に大きな事件などもなく、順調に成長をしていた私はいつものように新しい子供の案内をお願いされた。

 4年の間になんとか付け焼刃でも女性のマナーというもの覚えてはいるのだが、しかし前の人生の考えに左右される事が結構な頻度である。

 記憶と意識は統括されたのだが、35年分の思考回路。こればかりは変えられないのかもしれない。

 が、その経験があるからこそ少し大人びた行動が出来、こうやってお世話をする側に回る事も多いのだ。


 シスターが戻っていった。そして私はその場に残された女の子に話しかける。


「ようこそ、エンスリア教会へ。私はシズナって言うの。あなたのお名前は?」

「……ええっと、えっと、リンディってい、いいます。7歳です」

「そう、リンディちゃん。今日から一緒に生活するのよ。宜しくね?」


 そう言って目線を合わせて微笑むと、リンディちゃんは真っ赤な顔をして俯いてしまった。

 なにこれ可愛い。

 35歳男性会社員はすでに消えたのだ。

 これは正義の戦いなのである。


 決してロリコンではない。幼児を慈しむ心なのだ。


 一緒に手をつないで合計10年を過ごしている教会を案内をする。

 私の身長が10歳現在で150cmくらいで、リンディちゃんが120cmくらいだから丁度いい塩梅だ。

 お似合いであろうことは間違いない。





 私の容姿だが、身長は先の150cm前後。

 容姿としては、まず目に付く烏の濡羽色の様な漆黒の黒髪。それを背の中程まで伸ばしている。


 キャラ作成の時点で男のサガと言うべきか、黒髪ロングは外せなかったのである。

 これに狐耳は正義だ。

 それが現実になった今、髪の手入れに時間が取られているのは確かだが捨てようとは思えない。


 胸はこの世界の10歳女児平均はあるだろう、まな板ではないのは確か。

 こんな言い方はあれだが、男として今の自分の裸を見ると、淡雪のように白い肌の上を艶やかな黒髪が撫で、退廃的な美しさを見せているとは思う。


(自分の体がこうも変わるとは……しかし綺麗な髪だなぁ)


 手足は百合のように細く、典型的なお嬢様容姿だ。

 この容姿と現在の性格が相まって、落ち着いて見える為にこうやって年下と過ごすことも多い。





「……でね、さっきのシスタークラリッサはこの教会で一番最近入った、年若いシスターなのよ。相談事も増えると思うわ。あ、ここで最後ね」

「さいご?」

「そう、今年は外に出て行かれる方が多かったから珍しく部屋が余ったの。ちょっと狭いけど、貴女のお部屋よ」


 世界が違えば常識も違うのだ。

 この孤児院の子供たちは14歳前後で仕事を自分で見つけて出ていく。そして仕事先でお金を稼いで孤児院に送る。

 その為に稀にこうして部屋が空くことがあり、極稀に部屋が余ることがあるのだ。

 そして孤児院育ちの子供は皆逞しく、外へ出て行っても成功するのにあまり時間がかからないのである。


 そうして部屋の中まで案内し、ちょっと古いけどこれまでの卒院生の家具で普通に過ごせる事を確認し、足りないモノなど無いかリンディちゃんと話ながら過ごす。

 そう、この孤児院は比較的裕福な部類に入るのだ。


 教会に隣接する広い土地に建つ2階建ての木造宅。

 部屋数は子供部屋、シスターと神父用の大人部屋、内職場、調理場。全て合わせて20はある。

 それに庭や倉庫、井戸、厠等なども含めると結構な土地面積だ。


 これも全て教会の寄付と卒院生の仕送りで支えられているので、院生全員の意識が高いのも頷ける。

 ここで家族として生活し、卒院して子供たちを助ける側に回る。

 その為に学び、遊び、働き、鍛える場なのだ。


 粗方説明し終えたリンディちゃんを伴いシスターの元に戻ると、そのまま夕食の準備組に入らされた。

 他の女の子たちと一緒に、新しい子を紹介しながら姦しく準備をする。


 この時男子組は内職等の作業をしており、私がここのいることは別に可笑しくない。

 可笑しくないのだ。

 たとえちょっとボディタッチがあろうと、ちょっと笑顔を出すと顔を赤らまされようと、今は可笑しくないのである。

 35歳独身会社員は犠牲になったのだ。





 準備された食事を祈ってから頂き、その後はすぐに就寝となる。


 私の部屋は現在私しかいない。

 ルームメイトだったシリスさん(白虎族、現14歳、ケモノ度低、キス魔)が卒院されてから居ない。

 寂しがり屋なのは元の性格から引き継いでいるのでかなり寂しいのだが、こればかりは仕方ない。1人部屋のほうが色々捗るのである。


 例えば現在操作しているメニュー。

 これは転生時に神に授かったモノだ。

 具体的にはゲーム時の操作をスマホ感覚で同じように出来るようになるのだが、これが凄まじく便利である。

 着替えるときは装備画面で操作をすると、いつの間にか着替えてる。といった具合。

 ファンタジーからSFになったような感覚になる時もある。


 しかしこの操作中は周りから変に見られそうなので、なるべく1人の時しか出来ない。

 1人空中で指を動かしながら、時には笑いながら、時にはニヤニヤしながら空中を睨むのである。

 軽くホラーだ。


 なので1人部屋は都合が良い。ステータス等も閲覧でき、現在はと言うと、


 HP:1,045/2,000(9,000)

 MP:1,227/2,500(12,000)

 Str:25(99)

 Vit:19(99)

 Int:40(140)

 Def:11(99)

 Mat:38(140)

 Mdef:32(140)

 Dex:72(140)

 Agi:53(99)

 Luk:140(140)


 と、なっておりカッコの中の数字が最大で、成長、経験、若しくは鍛える事によってその数値に近づく事になるのだろうと予測できる。

 Dexなど少し前は45程度だったのが、高難易度の内職をするようになって著しく成長したのだ。ステータスばかりに気を取られてはいけないが、この上がりは嬉しい。


 後はHPなどは参考にできないと思った方が良いであろうとは思う。

 胴を切られたり首が飛んだりすると残りの数値の関わらず死ぬ可能性を考慮しないといけないからだ。

 こればかりは試す訳にはいかないが、ゲームと同じ様に考えていてはいつか大きな失敗をするであろう。





 と、部屋をノックする音が聞こえたので冷静にメニューを閉じて返事を返す。

 メニューは他人に見えないのは確認しているが、私の視線がついメニューを確認してしまう為、挙動不審になってしまうからだ。


「お、おねえさん、リンディです」

「はい、どうしたの?」

「えっと……い、一緒に寝ていいですか……?」


 何この可愛いイキモノ。

 大丈夫私はこれで10年持つ。


「どうしたの?お部屋が寒かったりした?」

「ううん……いままでお母さんとお父さんがいっしょだったの。で、でも、し、死んじゃって……」

「……いいのよ、いいの。これからは私たちが一緒にいるから」

「……うん」


 寂しいのだ。私も前は両親が居なくなる体験しているので、気持ちは分かる。


 健気な子だ。昼間は何も言わなかったのは、周りの子も同じような子供と分かっているからだろう。

 それまでの不謹慎な考えを払い、2人で一緒にベッドに入り身を寄せ合って少し話しをしながら、いつの間にか眠っていた。

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