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異世界生活の日常  作者: テンコ
第2章 彼の変化
33/99

2-11

 平和な日常を壊す、突然の襲撃。



 


 私達が屋敷の護衛を受けて約3ヶ月。平穏だと思っていたいつも(日常)が、呆気なく崩れ去った……そしてすぐに戻った。





 それは、1日の仕事の終わり間近の、夕暮れ時に起こる。


 その日は私が室内でアリエル様の護衛、虎姉御のフレイツさんが外の巡回、ベティさんが休み兼、離れでの休息。そんな配置だった事もあり、最初に気付いたのはフレイツさんだった。


 私がアリエル様と楽しくお茶をして、最近アリエル様が積極的になって来たのか若干セクハラ?(この場合はパワハラなのか?)を受けていた時、


 ッ!


 予め決めておいた警戒兼緊急時に使う合図の魔術、それが屋敷の庭で炸裂した。


 前衛を務めるからと言って魔術が一切使えない訳でもなく、魔術師だからって体術が出来ない訳でもない。要は慣れであり、使えば使うほど熟練度が上がる。

 フレイツさんもベティさんも魔術が使えると分かったので、簡単な、ギルドでも覚える事を推奨している合図魔術を覚えて貰っていたのだ。


『ご主人!虎殿が曲者と戦って……!』


 その合図と切羽詰まったようなソラの声を聞いて、私はディアと一緒にアリエル様をその方向から庇う為に前に出つつ、部屋の扉から遠ざかろうとした時、


『……虎殿が全て倒した』

『……』

『……』


 ソラ、私、ディアの順である。ちなみに烏丸は隣の屋根裏に居るのは感じるが、無反応。流石草の者。


「シズナさん。この音は?何が起こったんですの?」

「ええ、アリエル様。ちょっと曲者が入り込んだ可能性がありまして……」


 そう言うしか無いだろう……普通ここは私の大立ち回り的な、活躍的な。そんな話ではないのだろうか。まぁでも護衛対象が危険にならずに済んだと思う事にする。

 アリエル様の母親の対応は烏丸にお願いしているし、打ち合わせ通りならベティさんがそちらへ向かうはずだ。


 警戒態勢を解かずに次の合図を待っていると、すぐに先程の合図魔術と同じ音が3回連続で起こった。敵、制圧。の合図である。


『ベティさん、こちらシズナです。外の確認に行って頂いても宜しいですか?奥様は私が預かりますので』


 そう念話で伝えて少し、暗号として作ったリズムのノック音が扉から聞こえた。私が開けると奥様を背にしたベティさんが入ってくる。


「了解だ。フレイツの所へ向かうから、カーリレルさんを頼むよ」


 ベティさん自身は念話を使えないので、部屋に入って来た彼女から先程の返答を返された。


「お願い致します。合図は決めた通りに」

「うむ」


 遣り取り手早く、ベティさんは窓から外へ出る。


「お母様、御怪我はございませんか」

「アリエルさんも、大丈夫ですね?」

「問題ございませんの」


 私の後ろで母娘はお互いの無事を控えめに喜びあっている。錯乱等しないのは有難い。


 そのまま待っていると、合図音が2回響いた。問題無い、である。その事を母娘に伝えてベティさんが戻ってくるのを待つ。その間は緊張が解けたのか2人は椅子に座り込んでしまったが。


「フレイツが7人程倒していたよ。他の気配はしないから、あとは曲者に"聞いて"終わりだ」


 再び戻って来たベティさんの言を最後に、私が体験した襲撃事件は終わった。





 これ以降の話は、事件後にスルドナさんから聞いた話である。って言うか何やってんのこの人。


 敵方の実行犯達には、そこまでの力量は無い事を早くに調べていたらしい。組織内のスパイを通して、ほぼ敵内部の情報は集まったそうだ。そこからがスルドナさんの厭らしい所。


 まずスパイを通して、館の護衛に関する偽の情報を流す。

 私の場合だと、『シズナと言う若い娘は寝返りそうだ。親がおらずお金が欲しいらしいので、接触してみる』この様な情報を流して、襲撃前までには私が裏切る予定であると確信させたと言う。


 他2人もそのような雰囲気であると、敵に信じさせるように時間を掛けて仕込んでいく。


 当然、そんな好機な状況を敵方が利用しないはずもなく。でも敵方の情報源はこちらのスパイらしくて、良いように踊ってくれたのだとか。スルドナさんが良い笑顔で言っていた。


 後は、貴族地区の近くに襲撃を企む不審や輩が居ると衛兵らに情報を流し、前後して屋敷の襲撃を本当に画策する。護衛の私たちが裏切るという偽情報が前提の計画。


 もちろんその計画は……言っては何だがフレイツさんただ1人に阻止される事に。弱すぎるやろーと思ったが、実際問題そんな実力を持った人はそうそういないし、いても給料も待遇も良い所とか、ギルドとかに入るそうだ。


 カタギじゃない人だって多いけれど、そんな人が一成りあがり商会の幹部の依頼を聞くはずもなく。と言う事までスルドナさんは調べていたらしい。ほんと何なんだこの人。


 かくして王都で、しかも貴族院近くを襲撃しようとした商会の一派は、計画通り?捕まってしまった。襲撃犯も危なげなく捕えて一緒に渡し、この事件は一応何事も無く終了したのである。


「スルドナさんは何時からこの計画を?」

「そんなの全部初めからに決まってますよだって間者を紛れ込ませていたのにも気付かない人達だったんですよ倒して欲しいと言ってる様な物です」

「……そうですか」

「本当は間者を利用しての情報戦が始まる予定だったんですけれど」

「……」


 話を聞いて疑問に思った事を聞いたら、辛辣な言葉が戻ってきた。


「私たちに教えてくれなかったのは何故だい?」


 ベティさんの疑問も尤もである。


「そんなの貴方達が使えないからに決まってますこう言う情報戦はその道の人がやるべき仕事なのですよ傭兵さん」

「……頭が痛いな。確かに専門ではない」

「ええ。適材適所です今回は貴方達の実力が相手方を確実に上回っていたのでこの様に強引な方法を取らせて頂きましたありがとうございます」


 なるほど。でもスルドナさんただの商人見習いじゃない様な気がしてきた。


「……この護衛は終わりなのか?」


 フレイツさんが問う。確かに敵がいなくなったなら、護衛は必要ないのか?


「いえ。旦那様が無事お戻りになられるまではお力をお貸しして頂きたく他の商会などからも同じように狙われないとも限りませんので」

「……分かった」


 あ、結構恨みを買ってたって初日に聞いてたな。なら求心力や統率力、他能力が高いと聞く旦那さんが戻らないとお話しにならないか。

 ちなみに旦那さんの居場所は私達にも伏せられている。スルドナさん他数名しか場所を知らず、薬か治療師を待っている状態だと言う。


「質問が無いようでしたら引き続き護衛をお願い致しますね今回の撃退の報酬は全員に等しく高額をお支払しますのであしからず」

「……」


 私を含めて全員無言。


 かくして本当の本当に、私が関与するまでもなく、襲撃事件が終了したのだ。





「シズナさん、わたくし……怖かったですの」

「もう大丈夫ですよ。フレイツさんが曲者を倒して下さいましたので」

「なるほど……フレイツ様。誠にありがとうございます」

「良い……オレの仕事だ」


 虎姉さんがまとめて倒してくれたのは事実だ。ソラから状況は聞いた。7人中5人が短剣を持って残り2人が弓を持って襲ってきた所、フレイツさんがすごい、それはすごい速さで弓2人を文字通りぶちのめしたらしい。

 後は千切っては投げ千切っては投げを5回繰り返した、と。


 すごい活躍だな……フレイツさんはクールに返し、屋敷外へ見回りに行かれた。確かに夕方だけどまだ仕事時間だしね。


 私は念の為アリエル様とカーリレル様を護衛しながら、けれど何事も無かった様にお茶を楽しむ。

 これでも一応護衛してるんですよ?





 平穏な日々?は続く。

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