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異世界生活の日常  作者: テンコ
プロローグ
2/99

0-02

 どうやら私は異世界に行くことが出来るらしい。





(どういう事なんだ?)


「言葉の通りだよ。君、間違って連れてきちゃった」


(ん?連れてきたって……ここは何処なんだ。間違いって?)


「ここは僕の領域だよ。君は今意識しかないんだ。君の身体はもう無いからね」

「え?」

「察しはあんまり良くないね、まぁ仕方ないか」


 ハァ……と溜め息をつきそうな表情で淡々と説明する眼前の年若い男性。

 欧米系だろうか?顔立ちが日本人には見えない。


「君の無意識化での私のイメージがそうなんだろうね。ま、気にせずに続けるよ。君はね、所謂勇者召喚に巻き込まれたんだ。巻き込んだ僕が言うのも何だけどね」

「はぁ」

「淡泊な反応だね?さっきの勇者たちなんてもろ手を挙げて喜んだのに。年齢のせいにしては随分と……まあいいや。それで君には謝らなきゃいけないだ。ここに来る前の最後の記憶はあるよね?」


 そう問いかけられて気付いた。自分は随分と動揺している。思考が追い付いていない。


(落ち着け……覚えている限りだと、仕事が長引いて最終近い電車に乗って自宅に戻っていた記憶がある。人はまばらで、私の近くには学生らしき数人がいたのみだった)


「そうそう、その学生たちが勇者だね。個人指定は面倒だから集まっていた空間ごと持ってきたんだけど、近くにいた君まで巻き込んでしまったんだ。勇者には別の世界で頑張って魔王を殺してもらうんだけど、君は失敗というかイレギュラーだからね。戻す方法とか用意してなかったよ。身体は消しちゃった」

「はぁ……」





(落ち着け、考えろ……身体が無いってことは戻れないって事かな?流れから考えると勇者たちは戻る方法があるって事か、なんだそれ……私はどうなるんだ?そもそもさっきから言葉に出してないのに会話?が続いてるって考えると、目の前の人は……)


「ようやく思い至ったね。そう、まぁ広く言うところの神だね。君の思考なんて筒抜けさ。まぁどんどん説明するよ。質問は随時受け付けるてるから、言うか考えてね?君が暮らしていた世界とは別の世界で勇者召喚の儀式が行われたんだ。どの世界かは知らなくていい事だけど、その召喚に該当する人物を送るのが僕の仕事って言うか、そういう一面もあるんだ。けどね?最近ちょっとそういうのが増えてて面倒臭くなっちゃって。個人指定の奇跡は本当に面倒なんだ。だから空間ごと送ったら君を巻き込んじゃった訳。そこで君がどうしたいか聞いておこうと思って。これでも一応失敗の責任は感じてるからね」

「大まかな事情は分かりました。あ、私の言葉遣い等は不敬に当たるのでしょうか?」

「変なことを聞くね。気にしないでいいよ?信仰とか信徒とか自分から集めてないし、僕は愉しむだけだから」

「ありがとうございます。では……身体が無くても元の世界に戻ることは可能なんでしょうか?」

「今までの君の身体が無い訳だから、新しく作り直すか、別の世界へ送るかだね。最初に言ったけど、別の世界に送るほうが君の為になるかなーとは思ってるよ。なんてったっけ、君がやってるMMOのキャラの性能で転生?させてあげられるし」


(よくある話だな……物語の中では……)


「転生ですか。その辺りの説明を詳しくお聞かせ願えますか?」

「いいよいいよ。時間なんて腐るほどあるしね。まず転生ってのはね、何時の頃からか全ての世界で流行りだした言葉なんだ。あれだよ、魔王を倒すため~とか、世界の治安の為~とか言ってその世界の偉い人が別の世界の人を呼ぶって事。さっき呼んだ学生たち4人は魔王を倒してほしいって国の王様の要請を召喚として僕に送ってきたから、適当に見繕った訳。僕の他にも多く神と呼称されるモノはいてね、各々が対応してるんだ。で、今回は僕の担当で君を間違っちゃったんだ」

「なんとなくは理解しました。すみません物わかりが良くないもので」

「知ってるよ。全部視えるから。35歳にしてアニメ玩具メーカーの係長。売上などの成績は大したことなく特出した才能は無いけど、温厚な対応で人当りが良く、聞き役に回ったりして多くの部下から慕われてるみたいだね。しかし話し上手ではない。結婚はしてない。趣味は流行りのオタク系っていうの?ここに来る人は大抵これだから何となくは分かるよ。人間って面白いよね、あ、ごめんごめん脱線しちゃったね」

「自分のことを聴くのは恥ずかしいですね……慕われてたんですか……あと才能が無いってのはちょっと心にキました……」


 平凡なだけの人生を思い返してちょっと感じ入るものがあった。辛辣な部分にちょっと泣きそうだ、身体は見当たらないけど。

 しかし軽く言ってくださる。


「そう落ち込まないで。慕われるってのは良い事だ。神のお墨付きだね。あー、ちなみにこの僕の性格も君が思い浮かべた神のトレースなんだ。さっきまで荘厳な髭のおじいちゃんだったからね。学生たちの総合なイメージだったけどあれは無いよねー、髭は好きじゃないし」


 確かに仕事がら多くの作品を見てるとそういう神も多い。それに影響されてるのか。

 別段宗教家じゃないしなぁ。


「そういう事だね。脱線しまくってるけど僕は楽しいから良し。でね?話は戻るけど君の趣味のMMORPGのキャラで転生させることが可能なんだ。所謂神の奇跡ってやつでね。まぁここだけの話、一から情報集めて人間を造るのが面倒だったりするときに良く使う手なんだよ。あ、ちなみに君の元の世界で君は行方不明扱いだから」


 さらっと爆弾発言をされてしまった。なんていうかどんどん荘厳な神のイメージが崩れていく。


「荘厳な?そんなのは勝手に君たちが思ってるだけだよ。もともと君の中にある神への想いが少ないし薄いからね。この世界ってのは意外にシステマチックなんだ。で、話は戻るけれど元の世界に新たな命として送るか、そのキャラの能力等に見合った世界に送るかなんだ。どうする?って話。ちなみに勇者たちは仕事が終わったら元の世界に戻れるように自動設定してあるけど、君はイレギュラー扱いだから用意してなかったんだ。って訳でまぁサービスとして転生時にいくつか加護を与えようとも思ってるよ」

「……なんとも……加護ですか?」

「加護なんだけどね、まぁ好きに言ってよ。どうせちょろっと付け足すだけだから。まぁ今まででよくある傾向としては、言語理解だったり、肉体強化、魔力上昇だったり、中にはユニークスキル?とかで言ってくる人間もいたなぁ。付け足すのは簡単だからゆっくり選んでいいよ。僕自身は今別の眼で勇者たちを見てるから暇は潰せるし。ちなみに0歳時からってのが転生だからね?」

「分かりました。少しお時間を頂きたいのですが」

「りょーかーい」





 そう言って時間を貰う。現状は一応理解した。ここで話を疑っても進まないだろう、一応前提として考えていく。


 生まれ変わりかぁ……記憶はあったほうが良いか悪いか。

 生まれて来るはずの命を奪うことになるのだろうか。


「あー……、大丈夫大丈夫。生命の誕生ってのは部下たちが担当してるんだけど、そこに君を入れるだけだから、命の上書き~とか気にしないで」


 ありがたいお言葉を頂いたが、考えを読まれるのは楽なのかどうか。思考を続ける。

 MMORPGっていうとアレだよなぁ。

 8年間ガチ後衛職のみで転生を繰り返したアレで私はゲームを楽しんでいた。

 パーティープレイが楽しかったんだ。35歳独身週休2日の趣味としては地味だよなぁ。


 多分よくある転生モノに必要な要素は揃ってるとは思う……アイテムボックスとか?元からあるんだろうか。


「あるよー」


 ……楽である。昔から熟考は得意ではないので、人と話ながら考えを纏めるのだ。今

 回もそれで行こう。


「何かな?」


 つーかーである。


「その世界というのはどんな世界なのでしょうか?想像は出来るのですが、詳しくお聞きしたいと思いまして」

「そうだね、魔物がいて、剣と魔法の世界で、そのせいで文化の発展はまちまちで、亜人がいて、治安はあんまり良くはなくて、王政帝政があってって感じだね?詳しい文化は行ってみないと感じることができないとは思うよ、考えとしてはあれだ、異世界召喚のテンプレ?だね」

「なるほど……ありがとうございます。加護の申請はいくつ提示して宜しいのでしょうか?」

「そうだね。願いによるかな?例えばだけど、不老不死がいいとか世界最強の力が欲しいとか、願いが強大だったり曖昧だったりすると1つ、若しくは無しになるかな。こればかりは言ってくれないと答えられないね」

「そうですか……いくつか考えてはいるので後程お伝えさせて頂きます」

「お、いいね、今考えてるのは大丈夫だと思うよ?まだ考えるのかー、わかったよ、こっちは謝罪の意味もあるからね。少し大目に言っても大丈夫」


 いくつか言葉を交わし、考えを纏めていく。

 自分の頭を良くしてとか回転を速くして欲しいとか考えたが、なんとなくそれは自分じゃなくなる気がしたのでやめた。

 物分りが良い自分なんて自分じゃないしね。


 自分で格好よくまとめてはいるが、この神に対しての怒りは当然にある。

 理不尽を突きつけられたのだ、感じないほうが可笑しい。

 私の想いが伝わっているだろう神はそのことについては掘り下げないだろう、なんとなく分かる。


 目の前?の存在にため口で怒りを表すほど、私も血気盛んじゃない。


 さっきから支離滅裂なことばかり考えては消えていくが、ようやく考えが纏まってきた。それを伝えようとした途端、


「いいよ、その願いなら何とかできるから」


 やはりつーかーである。


「でも面白い事考えたね。僕も暇だから付き合えるよ。あ、大丈夫、普段ばかり君を視る訳にもいかないけれど呼ばれたら関わるよ。ずっと視てるのはプライバシーに関わるしね」


 プライバシーとかあるのか……。

 そして段々と自分の思考の不敬度が上がっている気がする。


「プライバシーは大事だよ。でもまぁ本音は人間一人一人をずっと視るのは禁止されてるんだ。勇者~とかは覗いていいから娯楽なんだけどね。ちなみに思考が支離滅裂になったり、考えが甘くなっていってるのは、段々精神が若返っていってるんだ。なんせ0歳時だからね」


 なんとなく納得してきた頃、


「じゃ、頑張ってね……その世界で自由に生きるといいよ」


 その言葉を最後に自分が世界に落ちて行ってるのを体感して、意識が飛んだ。

冷めてる神のごとき存在に、冷めてる主人公です。

普通こんな物じゃないかなぁと。


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