醜い姫
ここに人々から恐れられるほど醜い姫がおりました。
姫に仕える人達も姫を恐れ、距離を置いていました。誰もが姫の身分というものだけにしがみつき、彼女に取り入っていたのです。
姫はそれを知っていました。
それでも姫は良かったのです。
たとえ自分の価値がそれだけで、誰も自分を愛してくれなくても、自分の傍にいてくれる−−−、
それだけで良かったのです。
姫には地位も権力も富もあるのに、その醜さゆえに、誰も姫に求婚するものはおりませんでした。
いえ、何度か姫の富ほしさに近づいたものもおりました。ですが、姫の醜さに堪え切れず、皆逃げて行きました。
それほどまでに姫は醜かったのです。
姫は365日毎日泣いていました。
幾日も幾日も…、泣いてばかりでした。
「自分が醜いばかりに誰も私を相手にはしてくれない」と。
そんな姫の元に、1人の美しい少年が現れました。
彼は姫に言いました。
「よかったら僕と結婚してはくれませんか?」
姫は驚きました。
自分の醜さを見ても、逃げずに求婚してくれた人がいたのです。
姫はすぐにでも「はい」と答えたかったのですが、でも少し、不安になりました。
こんな美しい人が私なんかに結婚を申し込むなんて−−−…
あるわけがない。
今までの出来事を思い返せば、猜疑心が生まれても仕方ありません。
疑いたくもなるでしょう。
でも姫は、その申し出を受けました。
どんな裏があろうとも自分の傍にいてくれるのなら、
それだけで嬉しかったのです。
美しい少年は躊躇なく姫の手を取りキスをしました。
「行きましょう」
そういって、姫をある場所へ連れて行きました。
美しい少年は姫を見ても全く怖じけづく様子がありません。
姫はそれが不思議で仕方ありませんでした。
今までそんな風に自分に接してくれた人は、ただの1人もいませんでした。そう、ただの1人も…、自分の親さえもです。
姫にとって初めての事ばかりで、姫は戸惑う事しかできませんでした。
少年が姫を連れて来た場所は、姫がいつも泣いている所でした。
「僕はいつもあなたを見ていました。毎日あなたがここで泣くのを」
美しい少年は膝を折り、姫の手を両手で優しく包んで微笑みながらいいました。
「姫、あなたは全然醜くなんてない。あなたはとても美しい」
姫は涙が止まりませんでした。
今まで365日毎日泣いていましたが、それとは違う涙でした。
少年は姫を慰めるように涙を手で拭いました。
美しい少年からは、なぜか枯れ葉の匂いがしました。
2人の寝室は別々でした。
少年がそうしようといったのです。姫は納得しましたが、少し気になりました。
皆が寝静まった頃、姫は少年の部屋を覗きに行きました。
するとベットの上には少年はおらず、1枚の枯れ葉だけがありました。
********
僕は毎日彼女を見ていた。
春、夏、秋、冬に差し掛かって皆落ちていってしまったが、僕だけが残っていました。
するとある魔法使いが通りかかり、僕に聞きました。
「何で君はいつまでも落ちないんだい?」
僕は答えました。
「ここからじゃないと彼女が見えないんです」
「どうして彼女が気になるの?」
「彼女はいつも泣いています。彼女を1日だけでも泣かずに過ごさせてあげたいのに…、でも僕には見る事しかできないんです」
「そう。なら君の願いを叶えてあげよう。君があと3日、そのまま持ちこたえたら君を人間にしてあげるよ」
僕はもう限界だった。
少しの風が吹けば簡単に落ちてしまうだろう。
でも僕は彼女と話したかった。だから僕は頑張った。
だが、僕に試練を与えるかのように天候は悪かった。
激しい雨が降り激しい風も吹き嵐になった。
それでも僕は落ちないよう踏ん張った。
あと1日という所でネコが登ってきて、僕を不思議そうに突いた。
僕はネコの攻撃にも堪え、あと少しで魔法使いとの約束が守れた。
あと本当にちょっとだったのに…、
僕はあとちょっとという所で落ちてしまった。
落ちていく時にまた彼女が泣いているのが見えた。
落ちた僕を魔法使いが拾い上げる。
「惜しかったね。でもよく頑張ったから1日だけ人間にしてあげるよ」
そして僕は人間になれた。
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姫はその枯れ葉を抱いて、ベッドの上に横になりました。枯れ葉の匂いがほんのり漂ってくる。
目を瞑ってその匂いを嗅ぐと、まるで少年が自分を包んでくれているかのような感じがしました。
姫はとても幸せな気持ちになれました。
そしてこのまま、自分も枯れ葉になりたいと思ったのです。
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朝、姫を起こしに使用人が部屋へ行くと、どこにも姫はいませんでした。
少年の部屋にも行ってみましたが、少年も姫もどこにもいません。
ベッドの上にはただ、枯れ葉が2枚あるだけでした。
その枯れ葉は重なり合っていて、まるでハートの形みたいでした。
何だかとても、幸せそうに見えた。
『醜い姫』を読んでくださってありがとうございます。気に入ってもらえると嬉しいです。
いつものごとく誤字脱字があるでしょうが、そこはご愛嬌という事で見逃して下はい。
これ、何が言いたかったの?と思われるかもしれませんが…、
私にも解りません(笑)
ただ何となく思いついたので書きました。