五月 噂話2
「なぁ、お前んとこのマンションってさ、霊が出るんだろ?」
ノロノロと外周ランニングしてる時に、真田が言った。
中村と真田、俺はバスケサークルに入った。もちろん中村がマネージャー。
真田に対して、さぁ、と誤魔化す。一緒に住んでるなんて言ったら、どんな反応をするか。
「俺の聞いた話じゃさ、入り込んだ空き巣が呪われたっての。本当に知らねー?」
むしろ当事者で命の恩人だ。
「俺、幽霊とかそんなん信じないんだよな。つーわけで、お前ん家行って確かめていい?」
結局はその話に繋がるのか。
走り終わって、中村からボトルを受け取ると一気に乾いた喉に水分を流し込んだ。
「ねー、中村ちゃんも竹田ん家行きたいよね?」
話を振られた中村はゴミムシを見る目付きで真田を見た。
実際は見た事ないけど、その強力さに一時俺を避けた中村だ。何を好き好んでレーコさんとご対面しなければいけないのか。
「お前ら、練習倍にするぞ」
上から声が聞こえた。植本先輩だ。
「時間は限られてるんだ。喋ってないで練習練習」
その日はそこで話が終わった。
翌朝、家の前に待機してる真田に気付かずレーコさんに行ってきますと言ってしまった。
もちろん真田に聞かれた。
レーコさんは真田に気付いたのか、何も言わず消えた。絶対不機嫌だ。
ピピッ、と携帯がメールを受信したので、チェックすると非通知から。
ちょっと!ソイツなんか嫌いだから早く連れてって!(♯`∧´)ムカプン
今日の晩御飯はカレーにしてよね。
PS 行ってらっしゃい。
レーコさんは見た目のわりに随分可愛いメールを打つようだ。
不覚にも吹いた。