五月 友人関係
友達がウザい、と思った事は何度かある。そのせいで友達は少ない。
真田はその点では最高にウザい奴だった。同時に一番仲の良い奴でもあった。
ことあるごとに、ウチに来ようとする。その度に俺も必死で説得する。
原因はレーコさんだ。あの部屋は元々レーコさんの"家"でもあるから、俺以外の人間が入ろうものなら全力で祟る。一度泥棒に入られた事があったけど、その時は首から血を流して倒れていた。救急車で運ばれて、命に別状は無かったから良かったものの、俺が止めてなかったら多分彼は死んでいた。自業自得だけど。あの部屋に幽霊はレーコさん一人で十分だ。レーコさんが最強のセコムすぎて辛い。
最近は中村と喋れるようになった。彼女も霊感持ちらしく、俺にレーコさんの力を感じたから怖くて近付けなかったそうだ。
彼女が言うには、爪の痕は"あなたは傷付けない"という印なんだと。まぁその痕は三日で消えたけど、傷は関係無いらしい。
「でもそのレーコさんだっけ? 何で死んだんだろうね」
中村のその言葉に少し引っかかった。
『おかえり』
「ただいま」
最近のレーコさんは話しかけても消えないし、行ってらっしゃいとおかえりを言ってくれるようになった。
レーコさんは俺の下げてるレジ袋を見た。中にはミカン缶とバナナ、牛乳が入ってる。
それらをミキサーにかけてる時も、レーコさんは俺の背後に立ってずっと見てる。
ははぁ、さては。
「はい」
レーコさんは不思議そうに俺を見た。
彼女の目の前には作りたてのミックスジュースを注いだコップ。
「あれ、嫌い?」
レーコさんは首を横に振った。
じゃあいいや、と俺は自分のを飲み干すと、ベッドに横になってレーコさんに背を向けた。
翌日コップを見ると、空になってた。