邂逅!?遭遇!?因果の鎖の効果
自分とDはオーガまみれの東京駅から出ようとしたところで、妙な気配を感じて警戒を強めた。
「D、何か見えたのか?」
いつもヘラヘラとしている余裕のDにしては余裕がない。
「まずいね、外の人もほとんど今の化け物だ」
どうやら駅構内だけではなく、外部も同じ有様らしい。機内のニュースや新聞ではバイオハザードによる警戒態勢と発表されていたがアウトブレイク状態のようだ。
観光客が出入りできるようにするな、と思ったところで妙な引っかかりを覚えた。
これだけの異状状態にも関わらず、アメリカでも全く取りざたされないばかりか、日本国内の他の地域の連中が騒がずにこれを受け入れている状態。
何らかの力が働いていると考える方が自然だろう。
認識を狂わせるスキルを持つ魔族の存在は聞いたことがある。
しかしこれだけの規模でそれができる人物となると……ただの魔王候補というわけではなさそうである。
「Dこれはひょっとすると初戦の相手は一筋縄ではいかないかもしれないぞ。私の想像が正しければ相当強力な相手だ」
Dは、何を言ってるんだ?とばかりに間抜けな表情をさらす。
「ベル、魔王候補が相手なんだぜ?一筋縄で行ってもらっても困るさ。それじゃあ楽しめない」
この状況下で楽しめないと言い出すこの感性は頼もしい限りだが、相手の戦力はDの想像の上を行くだろう。
「お前の力は信頼しているが、集中していけよ?油断すればあの世行きだ」
説教くさい忠告をしてしまったが、この先用心しておいて損はないだろう。
グゴアアアアアアア!
Dに気づいたオーガ共が殺到してくる。
「骨が折れるね」
嘯くDだったが、果たして何が骨が折れる……やら。
ひたすら殺しまくり、1時間もするころにはほぼ全てが死んでいた。
血まみれのベンチに腰を下ろすと、近くの自動販売機から買ってきたコーヒーで一服をする。
「ベル、今のオーガって元人間かな?」
まるで明日の天気でも聞くノリで聞いてくるD。
「ああ、元人間だ。ああなったら戻る方法はない。パンを小麦や卵に分解することができないのと同じで、オーガ召喚の素材になれば直ることはない」
「やっぱそういうもんだねー」
この男なりに考えるところがあるのか、少し感傷的な雰囲気を感じる。
「これをやった奴を倒してやれば浮かばれるだろうさ」
この男に気休めなどいるはずもないが、なぜか言っておきたくなった。
「あ、勘違いするなよ?これもし捕まったら懲役何年分の刑になるのかなーって考えたら鬱になっただけだ」
「安心しろ、間違いなく死刑だ」
その後もDと馬鹿なやりとりをしつつオーガを倒すうちに、自分とDは国会議事堂まで来ていた。
「D,ここで決戦か?」
「たぶんね、この建物の中に親玉がいるね」
グゴアアアアアア!
何度目になるだろうかわからないくらい聞いたオーガの咆哮、しかしその耳障りな騒音は、直後に水がはじける音と同時に消えてなくなる。
「ビューティフル」
「D!!なぜお前がここにいる!?」
オーガを瞬時に倒した少女にDが見とれる。
だが、少女の方はDを知っているようだった。そして少女の後ろには……。
「弟よ、なぜそこにいるのだ?」
我が弟、バルがふよふよと浮いていたのだった。