未来を視る者
Dは走り、撃ち、殴り、また走る。撃つ撃つ跳ぶ。
四方八方からオーガのラッシュがくる中を駆け抜け、数を減らしていく。
「弾薬費がまずそうだ」
へらへらしながらいってみせるDではあるが、笑いながら言うような場合ではない。影の虚数空間から次々と代えのレイジングブル・フォルテシモを取りだし縦横無尽に駆け巡るD。一匹につき36連射の死神のキスをお見舞いして次々に葬っていくが、オーガの数は百を越えている。
キリがない。
Dは息も切らせず次々にオーガを撃ち殺していくが、あとからあとから出てくるのなんの……。ゴキブリは一匹見掛けたら……という話が人間界では常識のようではあるが、同じことを魔界ではオーガで表す。こいつらは数が多いのだ。
「ベル、一気に数を減らしたいんだが協力してくれるかい?」
Dがまた一匹のオーガを肉片に変えながら自分への協力を要請してくる。ここまでの段階ですでに30匹のオーガを仕留めている。オーガは近代兵器で完全武装した兵士が10人がかりで一匹倒せるかどうかといった程度の戦力である。やはりDは異常だ。
「もっと早く言ってくれても良かったのだがな」
そう言うと自分の影をDにまとわりつかせ、影のコートをまとわせる。
「近づく奴は自分が肉片にしてやるから攻撃に専念するがいい」
早速バカな一匹が背後から踊りかかってくる。影の槍を瞬時に生成し串刺しまみれにしたオーガを、そのまま切断し、細切れにして即死させる。Dは左右に両手をあげると次々にオーガを撃ち殺していく。ステップでかわしたオーガを自分が変化させたコートの裾に発生させた刃で切断、またあるオーガが飛び掛かってきたためそのまま虚数空間に取り込み、消滅させる。
10分程暴れたところでオーガを殲滅することができたようだった。
「で、これどういうことだい?魔王候補以外はこっちにきていないはずでは?」
Dには魔王バトルについて包み隠さず全てをつたえてある。しかし、会場になる日本に来てみればオーガまみれである。
「自分にもわからない。候補の誰かがルール無視で人間界を征服しはじめたとしか思えないな」
オーガの残骸を調べるが、元人間のようだ。よく見れば人間の頃の特徴として洋服やアクセサリーを纏っている。
「どうやら人間に無理矢理オーガを合成しているようだ」
自分は事実を伝える。
「どうも厄介な相手だね。魔王バトルってもっとシンプルかとおもっていたよ」
自販機でコーヒーを買って飲むD。
そのまま自販機にレイジングブル・フォルテシモを連射する。
自販機の裏にオーガが残っていたのだ。自分は言う。
「未来予知の能力か……お前本当に人間か?」
「さあね」
Dは空き缶をゴミ箱に捨てると血塗れの東京駅を後にしたのだった。