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ヒーローへの憧れ

「え、ちょっと何言ってるのサディーちゃん!?」

 バルが驚愕の声を上げる。

「だってファングの方がかっこいいんだもん!!」

 私は即座に言ってやった。

確かにサディーの外見は文句がない程かわいい。洗練されていると言ってもいいだろう。

魔王はいい趣味していると言える。

しかし、それとこれとは別の話なのだ。

 私は小さい頃はヒーローに憧れていた。しかし勉強こそ少しはできたものの体力もなく、ひょろ長いだけの少年時代をすごした私は自分ではヒーローになれないのだと諦めたものだった。

 大学生活に入り、いろいろな物を考えることができるようになった私は、私なりにヒーローになる方法を模索した。

 見聞を深めると共に今まで学んだ知識を生かすため世界を旅した。

 ある国では井戸を掘り、またある国では地雷を撤去し、またある国では教師の真似事もした。そうして半年が経過したある日、砂漠の国で武装勢力の抗争に巻き込まれた。

 両者はお互いに正義と信じ、とにかく激しく戦ったのだ。私の前で。

 結果、ほぼ共倒れに近い形で彼らは引き上げていった。たくさんの屍を作って。

 再び私は無力を感じた。この世は所詮暴力の前には無常だと。全て虐げ、貶め、そうした方が得なのだと理解したのに。

 サディーに変身する力は実は気に入っている。魔法少女なのは困ったものだが、この力は私が昔憧れた正義の力に比肩し得るものだ。しかし、目の前にほぼ本物がいる。それも敵として。

「こんな理不尽なことを許せるか!!」

 私の葛藤など知らない目の前のアイツは

「おいファング、あいつは何を怒っているんだ?」

 状況がわかっていないのかファングに聞いていたりする。

「気をつけろ、俺にもわからんが何かあいつは危険だ!」

 しかもファングは警戒態勢。完璧に私の方が悪役のノリだ。

「二人共許さん!!ハラワタ引きずり出してそこら中にぶちまけてやる!!」

 怒りの力で魔力が暴走しているのか、今なら殺れる気がする!

「だめだよ!!そんなことしてたらますますヒーローじゃなくなっちゃうから!?」

 バルが喚いているが気にしない。

 こうなったらこいつらを皆殺しにして私が魔王になってやる!

 私が戦闘態勢を取った時、バールのようなマジカルステッキが明滅を始めた。

 ???

 何だか全くわからないが、魔力を流してみると……。

『モードシフト、ジェノサイド』


「?」

 次の瞬間、マジカルステッキの外装が弾けとび、中から飛び出した黒い触手が私の全身に絡みつくと同時にとげが飛び出し全身に刺さっていく。触手の表面は滑らかに解けて再硬化し、全身を黒い骨のような装甲が覆っていった。

 ゴキゴキ、ブチ、グジョグジョ、ゴキュゴキュ!!

「ああああああああああああああ!?」

 激痛がする。

 刺さっただけでなく、肉を、筋を、骨を、腱を、内臓を、焼くような、全身に針を打ち込まれて雑巾絞りをかけられている。そういう痛みがする。

 やがて、私の意識は失われていった。



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