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嫉妬する主人公!かっこいいは男の子の正義!!

 ……校長を倒した私を目撃したのは、よりにもよって未来だった。

 どうやら完全にテロリストと間違われているようだが、面倒なことこの上ない。

「サディーちゃん、あの子から魔力を感じるよ」

 横に浮いてたバルが不吉なことを言い出す。

 因果の鎖の効果はこっちか!このパターンは嫌な予感がする。未来と戦闘になる前に候補は殺してしまおう。

「魔法のバールを食らわせよう」

 ちなみにデザインこそ魔法少女っぽいエングレービングがほどこされているが、このバールのような物の重量はすさまじく、はっきり言って鈍器というのも生ぬるい。釘で紙をひっかけば引き裂けるように、このバールのような物は振り回せば鋼鉄すらも同様に引き裂いてしまうだろう威力がある。未来が何かと喚いている。昔はお利口さんだったのにすっかりおバカになってしまった。

 む、候補らしき猫が出てきた。殺そう。

「サディーちゃん、相変わらず発想が危険だよ!もっとヒロインらしくしてよ!!」

 バルが何か言っているがでこピンで吹っ飛ばして猫に狙いを定めたが……未来が邪魔で攻撃できない。

「その猫捨ててくれない?」

 果たして返事は否だった。……いっそのこと両方というわけにもいかないのが面倒すぎる。


そうこうしてるうちに未来が変身してしまった。おまけに私でもわかるくらいの魔力を持っていながら……すさまじくコントロールがへたくそだった。

 立て続けに2回校舎を破壊する未来。我が妹でなければあいつ敵でいいよね……と、言いたくなるくらいの破壊ぶりだった。同僚の増田さんは魔力ないけどやたら頑丈だし。今度調べとこう。

 なんだかまったりしてきてしまった。早くあの猫の魔王候補を殺して帰ろう。

 む、未来が魔力を集中し始めた。

「もう許さないんだから!!次の一撃は私の最強の魔法よ!くらいなさい」

「いや、これ以上学校壊したら駄目だろ」

 突っ込みを入れたら未来が切れた。

「うるさいうるさいうるさい!!テロリストなんか消えちゃえ!アトミックメギドフレイム!!」


 明らかに危ない魔法だ。

しかしバールのようなものを突っ込んで止めようとしたところで黒いコスチュームのヒーローが現れ、鮮やかな手際で魔法を止めた。

 そう、なんというかヒーローなのだ。

「ねえ、バル?魔王の趣味で私この格好なんだよね?」

「うん、そうだよ。魔王は魔法少女大好きって言ってたし」

 あいつが魔法少女になってないのがムカついた。私は取り乱したり、特にサディーの姿でデメリットは感じていないが……どうせならヒーローの方が良かったのだ。

「不公平だ。あいつは絶対やっつける」

 私の中で魔王関係無しにあいつをライバルにすることが確定。

 それにあいつはちゃんとした魔法が使えるらしい。更にいらいらする。


「なんか厄介なのが出てきちゃったねー。せっかくこの子の魔法で街ごと消滅させてあげようと思ったのにさ」

 猫の魔王候補は物騒なことを言い出す。

「とりあえずどっちも倒すから」

 私はそう言うとバールのようなものを次々に取り出しては地面に刺していく。どうやらこれはいくらでも取り出せるらしい。

「全部俺が倒してやる」

 ヒーローっぽい奴が気障な台詞を言った。勘に触る奴だ。猫より先にこいつに不意打ちしてやる!

「二人まとめて相手してあげるよ、かかっておいで」

 私がヒーローっぽい奴に攻撃を仕掛ける寸前で未来に付いていた猫が未来と同化していた。さっきまでのハイレベルな魔王の趣味ではない、銀髪の長髪、猫耳、トラの模様、間接にはファーが巻いているが、全体的に長身になり、子供らしさが消えた。というかほぼ別人である。乗っ取られたってことだろうか?さっきの校長といい、2段変身が少し気になる。……まだ1日目……。そう、この物語は始まってから1週間経っているが、中の時間軸は1日しか経過していないのだ。話数的に折り返し地点だからといって、2段変身とかそういうのは早すぎないかな?私なんかマジカルステッキですら出てきたばっかりだっていうのに!!主人公が誰かこいつらわかってないよね!!


「あんまりメタなこと言っちゃ駄目だよサディーちゃん!」

 バルが頭の中まで突っ込みを入れてくる。ええい、うるさい奴だ。

「ふん、粋がるなよ、悪魔め!」

 ヒーローっぽい奴が負けじと言い返す。

 うわ、こいつ本当にイチイチ気障でむかつく。協力するふりをして後ろからまとめて串刺しにしてやろう。

「魔界の森の王者ビャッコに対して粋がってるのはどっちかな?」

 ビャッコと名乗った魔王候補はまるで本物のトラのような咆哮を挙げるとヒーローに向かい突進していく。その手には先ほど未来が変身して使っていた高温の光球。

「アイシクルランス!」

 一瞬の交錯の際にヒーローっぽい奴は氷の杭を作りビャッコの光球にぶつける。

 次の瞬間爆発!おそらく氷柱が高温に接触して水蒸気爆発を起こしたのだろう。ここからでは二人とも煙の中で見えない。

……見えないんだよね。

 中からは、激しい攻防と小爆発音がする。時折光ったり暗くなったり、吼えたり叫んだり。まさに死闘の様相である。

 重ねて言うが私は煙で見えない。完全に蚊帳の外である。

 あっちも見えないよね?

 ヒュン……ガスガスガス!ズドン!!ガキィン!ブシュウウウウ!!

 手当たりしだいにバールのような物を煙の中に投げ込む私。10本ほど放り込む頃には煙が消えていた。

「ふざけたマネしてくれたね、ボクを怒らせたね!!本当に街ごと消し飛ばしてやる!アトミックバーニングストーム!!」

 ビャッコはそこら中傷だらけになりながらも、全部かすり傷ですませたらしい。吼えると再び先ほどの核魔法、否。更に悪化させた核魔法に集中し始める。

「そんなことさせてたまるか、アイスコフィン!」

 ヒーローっぽい奴もそこら中から血を流しながらも致命傷は回避していたらしい。しかもビャッコを止めるためにさっきよりも強烈な冷気を集めているようだ。

 こいつら気に入らない。

「止められるものなら止めてみるんだね、滅びの炎をくらうがいい!!」

「止めて見せる!!」

 氷の塊でビャッコの両手を封印していくヒーローぽい奴。それを力押しではじこうとするビャッコ。だが、ある一定のところでお互いの魔力が干渉試合、光と光、力と力のぶつかりあいとなる。

 ……あー、なんか私のこととかどうでもいいみたいだし?こっちも勝手にやらせてもらうわ。

 走って懐に飛び込んで即死急ワンツーを叩き込む私。

 内臓破裂パンチと肋骨粉砕キックのコンビネーション。

 そのまま蹴り抜いてビャッコを粉砕する。

「な!?バカな!?」

 ぐしゃぐしゃになった肋骨と内臓では立っていることすらできないだろう。ビャッコは受身を取って立ち上がろうとしたところで仰向けに倒れた。

 即座に分離するビャッコと未来。

 思った通り、ビャッコだけが瀕死になっていた。

「なんで、未来ちゃんは君の妹だろう?もう少し労わる気持ちとかないの?」

 ビャッコが不満そうに言う。

「いや、ほら結局ほぼ無傷だし?この技って中の感触わかるから、ひょっとしたら狙い撃ちできるかなーって思ったんだ」

 私は正直に言ってやった。どうもこのスキル、魔力が捩れてスキルとなっているようである。操作することができれば、任意の内臓や骨を粉砕できるらしい。

「滅茶苦茶だね……」

 そう言うとビャッコは動かなくなる。

 ヒーローっぽい奴に仕掛けようと思ったところで思わぬ相手から声がかかった。

「さすがだな。魔法少女サディー!」

 そう言って飛び掛ってきたのは黒い狼。

なんとかかわしたものの、スカートの一部を食いちぎられてしまう。

「大変だよサディーちゃん!あいつファングとその契約者だ!!……あとパンツ見えてるよ!!」

 あいつ狼に変身できるのか!?しかも契約してても戦闘できそうだ。こっちのバルなんか戦闘ではまったく役立たずなんだぞ!?こいつの頭の中パンツばっかりだし! 

「おい、ファング!私は怒っている!!」

「怒っているのは俺の方だ、人間の分際で俺に傷を負わせた罪を償わせてやる。貴様を倒すために契約し、この狂戦士タイソンを作りあげたのだ、貴様は倒される運命なのだ!!」

 怒り心頭のファング、しかし私の怒りはそれどころではない。

「なんでお前が私の契約者じゃないんだ、そのかっこいいの私と交換しろ!!」

 私の言葉に全員が沈黙したのだった。


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