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マジカルステッキ登場、ただしバールのような形!!

 

 果たして私が襲うことにしたのは校長だった。


 五大達也ゴダイ タツヤは今月から癌で入院している前校長に代わり教育委員会の送り込んできた校長だったが、私は前々から排除したいと思っていた相手だった。息がくさい、見た目が気持ち悪い、明らかに魔物っぽい。そう、とにもかくにも人間ではない印象がして嫌悪感を感じる相手だった。


「校長先生、お話したいことがあるんですけどよろしいですか?」

 サディーに変身し、女子生徒に化けると駐車場へ歩いていく校長に声をかける。

 かわいい女子生徒のふりをしてこっそり暗殺作戦だ。

「ん、なんだね、言ってみなさい?」

 校長が、脚を止めたその瞬間


ゾワ

 と、鳥肌の立つ感触がして私は高速で後ろに跳び下がった。

 予感は的中した。私のいた場所に無数の黒い羽が刺さっていたのだ。校長は悔しそうな顔すら見せずに話す。

「私も話をしたいと思っていたところだよ。魔王候補の契約者さん」

 ばれていたか。接近して脳髄押し出しで勝負を決めてやろうと思ったのに。

「なんのことですかねー?」

 一応しらばっくれてみたが、校長はのってこない。ノリの悪い校長だ。

「バトルの進行具合も気になるところだし、とりあえず手足をつぶしてからお話といこうか?」

 ねちっこく言う校長は、直後に変身を始める。

 メキメキと骨格が変形する音、同時に皮膚がボトボトと零れ落ち、真っ白い骨が露出していき、奴の体はその骨に覆われていく。ねじれた一対の角を生やし、校長は白骨の鬼と化していた。

「おいバル、契約者っていうのは魔王の趣味で魔法少女になるんじゃなかったのか?」

 そう、私と祥子はそういう変身をしていたのに目の前の校長は特撮ヒーローの怪人側の変身をしたのだ。

「わからない、けど強敵だよ!」

 バルがそういうと同時に空から黒い塊が落下してくる。

それは大きなカラスだった。ただし2本のねじれた角、羽は6枚。脚は3本の化け物ガラスだった。

「はじめまして、それがしの名はグリムリーパーと申します。グリムとおよびください。突然ですが死んでいただきます」

 おそらく魔王候補と思しきカラスはそういうと、黒い霧となって白骨鬼にまとわりつき、なんと2段階目の変身をしたのだった。白骨鬼は黒い骨の鬼となり、背中や間接にカラスの翼を生やす。そして額の角はカラスと同じデザインで4本になっていた。

「準備完了致しました。攻めてこないようならこちらから行きますよ?」

 呆気にとられて攻めるチャンスを失ったことに気がついたのはカラス=グリムがデスサイズ、大鎌を放り投げてきてからだ。

 一般にゲームやアニメで見る死神の鎌というのは、見栄えはするが実用性には疑問が残る。正面から向き合ったとき、相手の背中側に回しこんでからひき切らねば最大威力が出ないからだ。振り下ろし、横なぎ、正面から相対するには単純すぎる軌道でとても武器としては優秀とはいいがたい……と思っていたのだが。

「ハアハアハアハア……、校長の癖にどれだけ校舎を破壊するつもりだよ!」

そう、奴の放つデスサイズは、本体を高速回転させて、遠心力による極大質量弾としての投擲、至近距離であれば魔力で作る真空刃で全く隙を見せなかった。その上、投擲鎌は、フルサイズの鎌なのに、召喚されているのか無数に生まれてくるのだ。

ズガンズガン!!

 校舎の壁に鎌が立て続けに刺さっていく。こちらは回避するので精一杯だ。

「サディーちゃん、こっちも武器だ!意識を武器のイメージに集中するんだよ!」

 横でバルが大鎌を避けながらアドバイスしてくる。

 普通に考えれば魔法のステッキや、せいぜい剣、槍、弓あたりが妥当である。

 しかし私の頭ではそれらは最善の武器に思えなかった。

 武器か……結局頭の中に浮かんだんのは巨大な『バールのようなもの』

 であった。一種のファンタジーにして最強装備、がんばれば魔法の杖とも、一種の槍とも、バールとも言い張れるマルチプルウェポン!

 重量は……50キロくらい。サディー本体よりやや重いが、筋力と運動神経でバールのようなものを構え、回転大鎌を弾き飛ばしていく。

「何ですかそれは!生意気です!!」

 グリムは鎌の投擲を止め、大鎌でラッシュをかけてくる。大型武器にありがちな鈍重さはかけらもなく、まさしく猛攻である。しかし私もそのラッシュにバールのようなものを打ち合わせていく。


ガキン、ガキィーン!!


と、金属同士の重い音を響かせながら戦いは続き、衝撃は地面を割り、空気を裂く。奴の刃が私を捉え、腿を、わき腹を、胸を、肩を浅く切られるようになってきたころ。疲労はしたが、狙い通りの現象が起きた。


「馬鹿な!」

 グリムの鎌が金属疲労で折れ飛んだのだった。

 刃を硬質の金属にぶつければこうなることくらいわかることだろうに。

「馬鹿はお前だ」

 その隙を逃さず、飛び上がりざまにバールのようなものを腹部につき入れ、地面まで串刺しにする。


「く、こうなったら奥の手です、街ごと消し飛ばしてやります!!」


この攻撃はまずい予感がする。


「させるか!!」

 バールのようなものを12本展開した私はそれぞれを取っては投げ、取っては投げを、12連続一瞬で行う。一本一本が必殺の投げ槍は、全段命中し、見事カラスのイガグリ風が完成した。

 食べないけどね。


「だめだ、絶命してる」

 尋問しようとしたところ、ピクリとも動かないのでバルが死亡を確認した。

「まあ、一匹減ったしいいんじゃない?」

 何かわだかまりはあったが、特に言葉にはならなかった。

「どうでもいいけどサディーちゃん、露出狂みたいだよ?」

 さっき切られた傷はどこにもないが、服だけは切り刻まれていた。バルがハアハア言いながらこっちを凝視している。……さすがにこれは私でも引く。

「こっち見るな!!」思いっきり明後日の方向にぶん投げられるバル。

 しかし、因果の鎖とやらの効果でも大した敵が出てこないものである。校長は知った人物だったが、私的には重要ではなかった。だがこれが甘かったとしるのはこの後のことだった。


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