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月の光に導かれ  作者: カムイコタン
第1章 月の光教団
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1/14

プロローグ

毎週金曜18:00頃更新に変更いたしました。

 アヴァリスィア王国王都グラントにある冒険者ギルドのスイングドアを勢いよく開け、姦しい(かしましい)ギルドの中を確認し、今しがた切削してきた迷宮核を右手に掲げ、私は大声で言った。


「英雄の凱旋だっ!」


 私こと、白銀等級*冒険者ソフィア=ライナサウスが所属する同級パーティ『白鳥の歌』が銀等級迷宮『巧断の泉』を踏破し、迷宮核をギルドに持ち帰ったところだ。


(*:この世界において個人等級、PTパーティ等級、迷宮格を示す等級があり、全て同じ指標を使用している、カッパー青銅ブロンズ真鍮ブラス鉄鋼アイアンシルバー白銀ミスリルゴールド白金プラチナ王鋼オリハルコン神鋼アダマンタイトとなっている。基本的には同等級の冒険者でPTを組み、同級程度の迷宮に行くのが常識とされる。ちなみに迷宮において深度及び発生する魔物により等級が変わり、最低等級は銀等級からとなっている。)


 迷宮とは自然発生する魔物の巣のようなものである。迷宮内の魔物が多数繁殖し、その中から突然変異による強個体が発生すると、興奮や恐怖などにより『迷宮氾濫スタンピード』が起こってしまう。その結果、近接する町や村が呑まれてしまう災害になってしまうのだ。しかし迷宮内最奥にある核を切削することで、迷宮自体が縮小し、スタンピードを未然に防げる。


 そういった訳で迷宮攻略は冒険者にとって誉ある業務の一つなのだ。


「「白銀等級での迷宮攻略は初じゃねぇか?等級が2つくらいアップするんじゃない?やっぱり固有スキル(ユニークスキル)持ちは凄いなぁ」」


 ギルドにいた冒険者たちからそう言われるが、実際に凄いのだ。


 この世界は男女比率1:7の魔物が跋扈する剣と魔法の世界である。その世界において男性は僅かな魔力が普通で、スキルなんてものもほとんど持たず、個体数も非常に少ないのである。そういった男性を庇護するためなのか女性は皆、先天的にスキルを持って生まれてくるし、魔力も豊富で腕力も強大だ。その中でも私は、魔法や戦闘術とも違う固有能力通称ユニークスキルと呼ばれる特殊なスキルを持っている。


スキルとは、通常能力(通常スキル)<固有能力ユニークスキル極能力エキストラスキル究極能力アルティメットスキルと帯分されている。エキストラやアルティメットなんて文献で読んだことはあっても実際に所有者を見たことがない。この世のどこかにはそんな稀有なスキル持ちもいるんだろうが、大多数が通常スキル持ちであり、ユニークスキル持ちでさえ100人に1人くらいの割合なのだ。


 なので、私のような戦闘向きのユニークスキル持ちの冒険者は重宝されるものだ。


「ステータス・オープン」


 ソフィア=ライナサラス

 Lv 37 (女 18歳)

 人間/剣士/冒険者

『迷宮踏破者』『元公爵令嬢』

 Agi 128 Def 88 Atk 156 Ap 200 

 Hp 221 In 95 Ma 57 Str 174 Luk 12

 スキル(ACT):剣術Lv3、闇魔法Lv0(New)

 スキル(固有):切断 Lv3

 スキル(PAS):闇魔法適正Lv0(New)、耐圧Lv2


 私がそう呟くと目の前に半透明の板のようなものが現れる。自身を表す10の円と22個の小径で形作られた円環の中に“Lv37”と書かれている。迷宮踏破の報酬か闇魔法を新たに取得している。 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()L()v()3()2()()()L()v()5()()()()()()()()()()それに伴い各種ステータスもアップしており、ユニークスキル“切断”もLv2からLv3に上がっている。自身の成長が数値化されるというのは非常にやる気が出るものだ。


「ねぇねぇソフィア~、ステボ(ステータスボード)をニヤニヤ見てキモイにゃ。さっさと迷宮核提出して打ち上げするにゃ~そのあとニアは娼館に行くんだから、さっさとするにゃ」


 横でニャーニャー煩いのは、パーティメンバーの猫型獣人のニア。私、ニア、犬型獣人のデパイル、エルフで魔導士のルルルアの4人で『白鳥の歌』を構成している。


「ソフィア~、ニアは迷宮核報酬ですんごい美男子抱くんだから~!!ンヒイっ!ソフィアもど~うかにゃ?お祝いで行くにゃ?イっちゃうにゃ?初物チラシチャウニャか??」


 自分よりだいぶ小さな体を前後に揺らし、絶妙にキモイ声で私を勧誘してくる。


「行かないよ、私はそういうのは嫌いだ。自然な流れの出会いが良い。」


「ぷふ~ソフィアってばにゃに言ってんの?男性にゃんてそんじょそこらに居るわけにゃいし、居たとしても色んな女の手垢まみれにゃ!処女妄想拗らせすぎにゃ!」


 いやいやニア君よ、処女妄想だなんだと言われようともこれだけは譲れない。元貴族の私としては昔読んだ絵本にあったような、女性騎士が偶然皇子と出会って、様々な困難を乗り越え、永遠の愛を交わす、そして・・・なんていう素敵な出会いを夢想しているのだ。


 この世界の男なんて、女性を蔑視しており袖にされるのが世の常。女性に比べ男性の情欲も薄く、女性側から何度求めても月に1回相手をしてもらえるかどうかなんてざらだ。ただ世界は広い、いつの日か私を求め週に1回とは言わないまでも2~3週に1度は私を求めてくれるような情熱的な男性に巡り合うものだと信じている。


 おい、誰だ、今笑ったやつ。


 私はこのまま等級を上げ、一流冒険者として名を売った後、世界を巡りきっと出会うのだ、運命の人に。きっと出会う予定なのである。娼館のような、手練手管に長けた女性を金貨でしか勘定できない商売男はこちらから願い下げだ。


 ・・・・まぁ、ニアはギルドカウンターに行く前に張り倒すが。


 そうこうしながら、賞賛をかけてくる人垣をかき分けギルドカウンターに到着し、年配の受付()の前に採りたての迷宮核を置く。


「『白鳥の歌』様ですね。迷宮核確かにお預かりいたしました。迷宮踏破おめでとうございます。こちら迷宮攻略達成報酬として100万ゼニーとなります。お確かめください。」


 ふむ、中々いい額になったな。この受付坊も年は行っているが対応も丁寧で髪も短く剃り上げ清潔感もあって良いことだ。


「ニャ!ニャ!!ニャああ!!こんにゃ大金初めてにゃ!!たまらんにゃ!待ってるにゃ娼館!待ってるにゃ、美男子!!」


「バカ猫、いい加減に黙れ。性欲丸出しでみっともねーな・・淑女はこういう時な、静かに受け取るもんなんだ、受付坊が困ってるだろ!」


「ニャ~?デパイルは受付坊の前でいい格好したいだけニャ。受付坊は青銅等級パーティ『意志の力』3人娘の旦那様にゃ。”既婚者”にゃ。デパイルの入る隙間はにゃいのね~残念ニャ~♪」


「え・・?え?そうなの?え・・マジデ?」


 恥ずかしそうに頷く受付坊。がっくりと肩を落とし、迷宮踏破失敗したかのように目に涙を浮かべてる。ああ、デパイル無残な・・・。PTメンバーの心ない一言で全てが終わったんやなって・・・。


「ニア・・あんた絶対に・・こ・・・殺す!絶対に殺す!!」


「いやニャ~♪」


 わちゃわちゃと騒いでいる駄猫と駄犬2人を横目に、報酬を受け取る。

 

 金貨100枚か、こう見ると神々しく感じるな。ささっと4等分の金貨25枚ずつを皮袋に分け、各人に渡す。ここまでがパーティリーダーの役割ってもんだ。


「ルルルア?お前はこの後どうする?ささやかだが打ち上げはギルドに併設している「夕闇亭」でやる予定だが、参加でいいのか?」


「うん・・。参加する・・。」


 根暗エルフのルルルアに話を振り、小さな声での肯定を受けた後、いまだに言い合いをしているバカ2匹を連れて打ち上げ会場に移動した。


 ※    ※    ※    ※    ※


 ギルド内に溜まっていた冒険者や、ギルドの外から何の騒ぎかと野次馬していた数人を誘い、ギルド内に併設されている酒場「夕闇亭」にやってきた。


 こういったお祝いは人数が多いほど良いもんだ。薄暗くこじんまりとしている酒場だが雰囲気が良いから結構気に入っている。

 

 エールを多めに頼み、各人に渡った所を確認した後、宴の開始に移る。


「それでは、迷宮「巧断の泉」踏破を記念しまして!乾杯!!」


「白鳥の歌」リーダーの私の発声により宴は始まる。


「「「「「かんぱ~い」」」」」


 大いに食べ、大いに飲み、迷宮踏破の話やこの後の愉快な予定について語り合っている中、ふと遠くを見ると室内にも関わらず黄土色のもっさりとした外套を身にまとった人物と目が合う。


 ・・・珍しい・・黒瞳か・・・・


 アヴァリスィア王国には多種多様な人種が存在する。人間・獣人・エルフその他多くの種族が混在している多種族国家だ。そのため金瞳・銀瞳・緑瞳、赤瞳、etc・・・と瞳の色も多種多様である。しかしその中でも黒なんて滅多にいない。黒色といえば主神ディオスの妻とされる夜の神ニクスから愛される尊き色として有名であり、アヴァリスィア王国ひいては全世界においても黒瞳・黒髪は尊ばれている。


 ふとその人物が気になり、席を移動し、隣に座ろうとした。


「隣、いいだろうか?」


「!!・・・お・・俺っすか?もちろん!もちろん良いっす!!」


 外套をまとった()()は慌てふためいてそう答える。慌てる様子が可愛らしく目を細めてしまう。


「私は銀等級パーティ「白鳥の歌」リーダーのソフィアだ。宜しく。」


 そういいながら私は握手のために左手を差し出す。


「ええ、知っています!!ソフィアさんですね!初めまして、俺はヒカリって言います。マジかっけぇっす!!」


 彼女は両手で私の手を握り、上下にぶんぶんと振り回した。

 

 あ、手が柔らかい。なんか可愛いな、この生き物。


「ほう、夜の神に愛されるような美しい漆黒の瞳をもった君がヒカリなんて、洒落ているじゃないか。」


「え・・あ・・お恥ずかしながら・・なんかすみません・・・///」


 なんとなくキザったらしい言い回しをしてしまったことを反省しそうになる。彼女を見てみると照れている。何だ、何だ、こいつ可愛いぞ。しかも、香水を振っているのかものすごく煽情的で良い匂いがする。高級砂糖を使用した氷菓子のような甘く爽やかな香り・・・。


「今日はどうしてこんなところに?君のような可愛らしい子が冒険者でいたなんて、知らなかったよ。どこの所属だい?」


「いえ、俺は所属しているというか、所属してしまったというか・・今日はふと冒険者ギルドを覗いてみたら、大騒ぎしてたから何かあったのかな~と気になってたら、ありがたいことにこの宴に誘われましてね・・社会見学みたいなものです笑」


「社会見学・・ね・・。君は、ギルドプレートもまだ持ってないようだし、駆け出し冒険者かな?それではヒカリ君、冒険者の先達に聞きたいことはあるかい?今日は迷宮踏破で気分がいい、何でも聞いてくれ給え。」


「ほ・・本当ですか!あざっす!!」


 くるくると表情を変えながらヒカリは笑顔で色々聞いてくる。ヒカリは目鼻だちは平凡だが、中性的な印象を与えるような顔をしており、それが逆に黒瞳を引き立たせ吸い込まれそうになる。


 なんだ、なんなんだこいつ、とんでもなくかわいいなぁ・・・。女のくせに何だかすごい色気みたいなものを感じるんだが・・。


 彼女と杯を交わしながら、迷宮踏破に至るまでの過程を面白おかしく伝えると、色んな場面で「はぁえ~すごいや」とか「ヤりますねぇ!」なんて美しい黒瞳をまっすぐ向けながら気持ちの良い相槌を入れてくれる。


 話も佳境に差し掛かった。小一時間程度だろうか話し込んでしまった。迷宮踏破の達成感からなのか、お酒のせいなのか、はたまた可愛いヒカリのせいなのか・・いつもより積極的になってしまった私は軟派女のように、つい彼女を誘ってしまっていた。


「ヒカリ君はどこのパーティに所属してるんだい?職業は何かな?迷宮探索に興味があるのかい?それなら一緒n」


 矢継ぎ早に勧誘しようとしてたところ、それは唐突に起こった。『夕闇亭』入口のあたりから大きなざわめきが起こる。人垣が割れその間から全身()()()()()のような衣装に身を包んだ6~7人の一団が入ってくる。先頭に居るのは、燃え上がるような美しい女だった。獅子のようなふわっとした金髪のセミロングに、王冠を模る(かたどる)ように茶やオレンジの差し色が入っており、意志の強そうな大きな瞳は空よりも蒼く澄み、果実のような桃色の唇はぷっくりと煽情的だ。そして美しく端正な顔に負けじと出るところは出ている極上のプロポーション・・女の私から見ても美しすぎて嫉妬すらわかない。そんな女が身体に張り付くようにぴったりとした修道服に身を包みサイドのスリッドからスラリと伸びた足で、一歩一歩こちらへ歩みを進めてくる。


「「ゲッコウ・・・・」」


 誰かがそう呟いた。


 白金等級PT『月の光教団』____通称ゲッコウ

 教皇リオン=アステリアスを筆頭とした過激派宗教集団。唯一神を信奉し、教義を世に広める傍ら冒険者家業も営む変わり者の集団。大陸最大宗教派閥、陽光教との対立激化は最近ギルド内の掲示板で見た。宗教PTと侮るなかれ、教皇以下枢機卿の冠位を与えられている構成員は1対1でドラゴンすら屠ると言われ、陽光教以外に対立していたPTは尽く潰されたと聞く。そのPTの戦闘力は凄まじいの一言。白金等級の冒険者であった“牙皇”タイガ=グランドンも在籍すると言われている。何故そんな強者たちが集まったか分からないが、結成僅か2年そこそこで白金等級PTまで上り詰めている。教団構成員は全員身体のラインが強調されたぴったりとした黒の修道服の衣装を着用しているらしい。噂によると神子(みこ)とされている男性の趣味とか趣味じゃないとか・・・。


「「(ゲッコウだ・・・。)」」


「「(・・・教皇リオン・・・。)」」


 ざわめきと共に一団が薄暗い「夕闇亭」の最奥にいる私とヒカリのところへやってきた。

 

 私も冒険者の端くれだ。格上等級のPTとはいえ、自分たちの凱旋祝いに水を差されるのを「はい、そうですか」なんて指を咥えて見てなんていられない。


「おっと、近寄るのはそこまでにしてくれ。“教皇”リオンで良かったかな?

 私は白銀等級のソフィアだ。別に名前は覚えなくても結構だ。

 今日はわざわざお祝いに来てくれたのかな?」


「・・・・・。」


 挑発じみた問いを投げかけるも、リオンは私の周りをきょろきょろと眺めており、こちらの挑発が効いているかどうか分からない。どうも誰かを探しているようである。


「すまない、迷宮踏破のお祝いをしている中、有名人が近づいて来て、宴の主役を奪われたみたいでこちらは少し気が立っているんだ。聞こえているなら何故ここに来たのか説明をお願いしたい。」


 腰にあるダガーに手を掛けながら、リオンをまっすぐに見つめ、今度は少し強い口調で問い質す。

 

 _____いつでも行ける。格上相手でもこちらも白銀等級だ。

 

 ダガーが届く間合いに入っている。ユニークスキル“切断”を使用すれば、こちらに分があるかもしれない。こっちは祝いの席を邪魔されてんだ。一矢くらいは報いてやる。空気が張り詰めていく。


「・・・ああ、申し訳ありません、ソフィア様。ワタシは月の光教団教皇リオン=アステリアスと申します。そんなに殺気は出さないでいただけると助かりますわ。右手で握っているダガーは抜かない事をお勧めします。ワタシ、人を探しておりますの。その方とは少し前にはぐれてしまいまして・・・()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、(全てを消し飛ばしてしまおうか。)そんな風に考えてしまいますの。探知魔法やスキルで調べたところ、あの方はこの辺にいることまでは分かっているのですが・・・。」


 ___一瞬膨れ上がる殺気にゾッとする。これが____教皇リオン_____。


 こちらの手も牽制されている。さすが、個人でも白金等級冒険者と言われる女である。回復魔法から攻撃魔法まで各種手広く使える癖に、聖騎士仕込みの近接戦闘までお手の物だと言われている。しかも特殊なスキル持ちだとのことだ。神は2物も3物もお与えになるのかね・・辟易してくる。右手は彼女の死角にあるはずなのにこちらの行動が筒抜けだと感じる。平静を保ち、一呼吸ついた後、私は会話を続けた。


「リオンでいいかな?リオンが探すその人とはどんな方かな?さては月の神さまだったりするのかい?情報があるならこちらでも探してm」


「必要ありませんわ。月の女神ニクスの寵愛を受けたような黒髪黒瞳の麗しき我が君は月が雲に隠れるように、悪戯をしているだけですわ。第一の信徒たるワタシが優しく捕まえにくるのをお待ちになっているのですわ。」


 頬を朱色に染めながらも探す動作を止めないリオン。リオンの動きに合わせ、いつでも迎撃出来るよう準備しているが、どこにも隙が無い。


 化け物め。


 ヤバい。こいつ噂以上にヤバい気がする。私の危険察知する感覚が危険信号をビンビンに発してやがる。


 ________ん?我が神?ヒカリ様??黒い瞳???


 隣のヒカリを見るとうつむいて顔を真っ赤にして震えている。


 ああ、可愛い。格上冒険者のやり取りに怖くなってしまったのだろう。恐怖で震える姿も、小鳥のようで何と可愛いのだ。大丈夫、私はノンケだ。恐ろしくて震えなくても大丈夫だ。君は私が守ってあげよう。何なら、今回の迷宮踏破報酬もあげよう。違うよ、売○じゃないよ。ママ活でもないからね。お姉さんとちょっぴりお話するだけだから。


 ヒカリの腰に手を回しこちらに引き寄せようとすると、ヒカリが立ち上がった。


「リ・・リオン!ギルド吹き飛ばすのはやりすぎ!ギルド内で気になる事があるから来ただけだから!たまたま宴会に誘われたから、ついつい長居しちゃっただけだから。皆に悪いなとは思ったけど、前もってタイガに別行動するから待っててねって言ったしいいかなと思って・・」


「ああっ、ヒカリさま。そんなところに隠れていらっしゃったのですね。心配しましたよ、わが君。ヒカリさまの“剣”たるワタシを置いていくなんて危機管理が出来ていませんわ。このギルドを吹き飛ばした後、お小言は後程ゆっくりといたしましょうね。」


 リオンが指示する前に一団全員が私からヒカリをガードするように駆け寄る。ヒカリの腰に回そうとしていた左手を遮断するように囲みやがった。一触即発の雰囲気に宴の参加者たちは誰も動けない。もちろん私も動けない。


 何だこれ。


 リオンが近寄り、ヒカリを抱き寄せた。

 

 あ、いいなぁ。

 

 グラマラスなボディがピッタリとした修道服でより強調され凶器のような肢体がヒカリを押しつぶしている。その暴風雨のような抱擁の勢いで外套がずれ、美しい黒髪が露わとなる。


「ヒカリさま、心配しましたわ。ヒカリさまがいないこの世界なんて壊そうかと思いましたのよ。あぁ、ヒカリさま良い匂い、氷菓子のような爽やかな甘い良い匂いですわ・・。」


「ちょ、ちょっと待って、リオン嬉しいけど離れて!ダメ!ステイ!!ステイ!!!」


「申し訳ありません、ヒカリさま。ステイとはよく分かりませんの。ヒカリさまが悪いのです。私たちから一刻でも離れるとはどういうことですか、これは罰なのです。そう罰なのです!悪戯好きなヒカリさまへの罰なのです!クンカクンカ!!!」


 そういいながらリオンはさらに強くヒカリを抱きしめ離そうとしないどころか匂いを嗅ぎ始める。

 

 ああ・・・私も嗅ぎたい・・・。


「待って!待って!!リオンの身体は刺激が強すぎる!!た・・タイガ、ちょっ、止めてタイガ!!こんな時は君しかいない!タイガ、ヘルプ!!」


 一団からタイガと呼ばれた女が歩み出る。

 

 あれが・・・白金等級冒険者“牙皇”タイガ=グランドン、王鋼等級冒険者目前と言われ王国からの要請を受け参加したカッツィ平野戦役で捕虜となり、一時は行方不明だった冒険者。単独で数々の功績を上げた結果、ついた称号は “牙皇”。切れ長の目、強さを感じる赤い瞳、形の良い鼻、薄めの唇からは犬歯が見える。長い銀髪を一纏めにし、無造作に結んだ髪型に気品を感じるも同時に強烈な野生も感じる。美しくそして獰猛な大型肉食獣のような虎型獣人だ。


「ヒカリぃ、アタシたちはさぁお前から少し離れるだけで気が狂いそうになるんだぜ?それがアタシたちへの甘い甘い『制約』なんだ。行く前にアタシは何度も言ったよな?『離れるのは短い間にしてくれよな』ってな。離れた時間が長すぎだ。残念だったな、ヒカリぃw・・・・・リオン、次アタシな。」


「わかっ!!分かった!!ゴメン!!本当にごめん!!!気を付ける!!気を付けるから一旦、一旦離れて!ね!!いい子だから!()()俺には刺激が強すぎるぅ!!!」


「あぁ、ヒカリさま。愛しいわが主よ。ワタシいつでも準備は出来ていますの。場所はどこでも構いませんの。いつでもどこでもヒカリ様の劣情を受け入れる覚悟はできておりますので・・・。」


 リオンの滑らかな指先が、ヒカリのズボンの上から大切な場所を撫でまわそうと徐々に近づいている。


 あ、自分も参加いいスか。


「やめっ!やめてぇ!!そこはアカン!マジでアカンところやから・・・帰ったらね、帰ったらお願い!こっちの用事を一旦済ましちゃおう!ね!だから、ちょっとだけ離れて!ね?」


 ヒカリが両手の力を振り絞り何とかリオンの抱擁から逃げることができた。

 

 おい、どうすんだ、さっきのシリアスな空気。宗教団体の癖に煩悩まみれじゃねーか。何が起こっているんだ。私たちが主役の迷宮踏破の宴が、闖入者によって喜劇の舞台になってるじゃないか。何だこれ。


「ハァハァ・・やっと離れてくれた・・・それでは改めて・・・。」


 呆然としている私の横でゴホンと咳ばらいをし、ヒカリがこちらを向く。


 艶やかな黒髪、そして柔和な笑顔の奥にある美しき黒瞳・・あぁ、可愛い・・。


「改めまして、俺は月野 光。今まで通りヒカリと呼んでもらって構いません。ちなみに男性ですが気にせず接してもらえると助かります。」


 男性・・・?は?男性?!やっぱりさっきの「男の」は聞き間違いじゃないのね?夜の神ニクスに愛されたような麗しきこの子が本当に男性?ダメ!これは本当にダメ!!女を見下すこともなく、笑顔で言葉を交わす男性・・・私の理想の王子様がこんなところにいたよ!やったねタ〇ちゃん!ありがとうニクスさま!ありがとう!!これが真の迷宮報酬なのね!!


 頭がフットーしかけ、眩暈が起きそうになるも何とか気を保たせる。向こうの席でニアが発情してニャーニャー鳴いてやがる。あちらを見ればデパイルがよだれを垂らしているし、ルルルアは何か腰を前後にユサユサしてやがる。


 月の光教団以外が道化と化してしまったこの舞台で、主演のヒカリは決め顔で私に向かってこう言った。


「ソフィアさん、仲間になってくれません?____________俺たちにはあなたの力が必要です。」


 _____さて、迷宮踏破後の最初の仕事は4人分の修道服の発注だな。



初めて投稿します。お手柔らかに気軽に読んで頂けると幸甚です。

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