表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おひとり国王サマ ~毎日忙しい国王は、スキル【冒険の書】で冒険者の旅先へ一瞬でワープして日帰りプチ家出する~  作者: 椎名 富比路
第十一章 自堕落国王:ソロガス・キヤネンができるまで

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/47

第43話 国王、地球の文化に触れる

 吟遊詩人・マティナ。

 かつてオレがアコギの練習をしようと、【冒険の書】で辺境の山へ行ったときに出会った少女だ。カレーを食わせたお礼に、オレはマティナからギターを教わったのである。


 冒険をしていない状態だと、こんなに大人の女性だったとは。


 しかもマティナは、オレがソロガス・キヤネン国王であると知っている、唯一の冒険者だ。



「あなた、もういいわよ」


「えっ。でも」


「この人は、ローガンといってね。あたしのお得意先なの」


 日鳥山(ひとりやま) ティナ氏はさっきの女性店員を下がらせる。


「お得意さんとお話してくるから、あなたは接客をお願い」

 

「でしたら」と、女性店員はこちらをチラ見しつつも、他の客の応対を始めた。

 

「すまん。会計に手間取った」


「結構です。こちらで済まさせていただきます」


 おまけに、採寸までしてもらえた。それもタダでいいという。

  

「いや、悪いよ」と断ったが、問答無用で話を通される。


「とんでもない。あなたとお話できる機会だけで、十分お代金分の経験をさせていただけるので」


 そこまでしてもらえるなんて。


「ただ、両替はしておいたほうがいいわね。金貨を見せてください」


「うむ」


 オレは、金貨数枚を、見せた。あと、宝石も。


「そうね。換金可能なアイテムは、ざっとこんなものでしょう」


 現地のお金に変えられそうなものを、店主が適当に見繕ってくれた。


「確認いたしますが、『こちらの世界に、あちらのアイテムを持ち込んではいけない』とかのルールは、ございます?」


「問題ない。金貨などは、こちらの世界の物質に変わる。価値も変わらない」


「ならば結構。では、これだけご用意させていただきましょ」


 結構な金額を、もらう。


「遠慮なさらず。両替しても、これ以上の額になることでしょう。その差額も、後にお渡しいたします」


 日鳥山店長は、店を閉めた。


 続いて、この世界の質屋に。そこでも、大金をいただいた。


「あっちの世界の金貨で、億万長者になっちまった」


 あやうく、無一文扱いになるところだったが。


「いいんじゃない? どうせこっちのお金なんて、元の世界に帰ったら価値なんてなくなるわよ」


 それもそうか。では、遠慮なくいただいておこう。


「すまんが、日鳥山氏。ここがどういう世界か、教えていただきたい」


 オレが尋ねると、店主は「ティナでいいわ」と返答してきた。


「詳しい話は、お昼してからにしましょ」


「そうだな。今の時刻が昼間なのも気になっているし」


【冒険の書】を起動させたときは、深夜だったのに。


「何がほしいかしら?」


「オレたちといったら」


「わかるわ。カレーよね」


 ティナの誘いで、この世界にあるカレー屋に案内してもらう。


 こっちのカレーは、食券を買って食べるスタイルか。


「辛さも選べるわよ」


「いや。この世界の普通を味わいたい。味変は、それからだな」


「いい心がけね」


 ティナは、「二〇倍は辛い」というメニューを頼んでいた。


 おごると言ってくれたが、せっかくなので断る。

 この際、自分で会計をしてみようではないか。


 差込口に紙切れみたいなお札を差し込むと、ひとりでに吸い込まれていった。


「なんという、文明の力だ。こんな紙切れが、金の代わりなのか」

 

 釣りの銅貨が、取り出し口から吐き出される。


「おお。これまた文化的だ」


 ちなみにティナは、冒険者証のような薄い板を、コンソール板に当てていた。あれが、「電子マネー」というやつか。我々の国には、まだ早い文化だろうな。


 さて、カレーが来たぞ。

  

「うまい!」


 思わず、大声を出してしまう。


「今まで食ったこともない、なんの雑味もないカレーだ。こんなに洗練されているのか」


 あまりに大きすぎる表現を出してしまい、オレはかしこまる。


「いいのよ。外国人観光客だって、似たようなリアクションを取るわ」


「しかし、最高にうまいな。何杯でも食えそうだ」


「何杯でもおかわりしてね」


「そうさせてもらう。おかわりだ」


 オレはお代わりの際に、少しずつ辛さを上げてみた。


 一〇倍を食って、己の限界を感じる。


「うむ。馳走になった」


 これだけ食っても、そんなに金を取られないとは。

 腹も心も満たしてくれる上に、財布にも優しい。


「普段、ギターは持ち歩いていないんだな」


「さすがに、本業では使わないわ。あれは、夜のバーで演奏するのよ」


 昼は洋服売り場で働き、夜はバーにいるのか。それは楽しみだ。


「せっかくこっちに来たんですもの。時間の許す限り遊んでってちょうだい」


「驚かないんだな? いわゆる異世界からの訪問者だぜ?」


「見ず知らずの人物が訪ねてきたら、あたしだって警戒するわ。あなたは、信頼できるもの。ローガンって呼んだほうがいいかしら?」


「いや。ソロガスでいい」

 

 ここに、オレのことを知る人物はいない。冒険者に発見されても、「そういうものなんだろうな」と片付けられるはずだ。第一、ティナがこんな反応だから。


「ティナよ、ここはどういう国なのだ? やけに高度な文化が発達しているようだが」


「ここですか。ここは地球ですよ。あなたたちの住む世界とは、まったく違う世界でしょうね」


 ちきゅうとな?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ