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おひとり国王サマ ~毎日忙しい国王は、スキル【冒険の書】で冒険者の旅先へ一瞬でワープして日帰りプチ家出する~  作者: 椎名 富比路
第七章 星の裏側で、モーニングを

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第18話 王妃との時間

「モーニングという、料理とな?」


 オレは冒険者から、うまそうな料理の情報を得た。


 なんでも、宿屋で出てきた朝食が、格別のウマさだったという。


「はい。モーニングとは、トーストとゆで卵、あと、カラッと揚がったハッシュドポテトがつくのです。このハッシュドポテトが、なんとも絶妙な味でして」


「ふむ。コロッケとは違うのか?」


 イモを揚げる料理と聞けば、庶民の味方コロッケだろ。

 あれ、うまいんだよなあ。


 だが、ハッシュドポテトとは、コロッケとはまた違った揚げ物なんだとか。

 

「いえ。あれとは別の食べ物です。コロッケはコロッケで、うまい店はありますが」


「ふむ。興味深い」


 ちなみに、そのモーニングを出す店は、コロッケを挟んだパンも提供しているらしい。


「ハッシュドポテトは、細かく刻んだジャガイモを平たくこねて、油で加熱するのです」


 ふむふむ。話を聞いてみるが、まだ脳内ではしっくりこない。やはり、実物を見る必要があるな。


「朝限定のメニューなのです。イモの具合をチェックするために、朝限定で出されるそうでして」


 話を聞きながら、オレは前傾姿勢に。


 ああもう。話だけでも、うまそうすぎる。


「そこの朝食は、まだ人気のメニューがございまして。それが、アズキという豆を使った、トースト用のペーストなのでございます」

 

「ただのペーストが、そこまで興奮するくらいのうまさなのか?」


 にわかには、信じられないな。


「はい。トースト用の甘いペーストといえば、ジャムを連想なさるかと思われます」


「おう。オレも毎朝、ジャムを用いる。あれがまた、頭が冴えるような味がして最高なのよ」


「おっしゃるとおりでして。そんなソロガス王には、ぜひアズキをお試しいただきたく」


「アズキとは、どのような?」


「潰した黒い豆に、糖類を混ぜたものでございます」


 黒い豆と聞いて、王妃はあまりいい顔をしなかった。ただでさえ、庶民の食い物には関心ねえからな、王妃は。


「つぶあんとこしあんという種類がございまして、つぶあんは豆の皮の食感を残しているのです」


 うんうんうん。めっちゃうまそう。


「こしあんは、上品な舌触りがして、緑茶に合います」


「緑茶に。ほほーう」


 緑茶なら、貢物でいただいたぞー。


「ぜひ食ってみたいな」


「東洋のカメダに訪れた際は、ぜひに」


 そっか、東洋のカメダ地方ね。ここの裏側の世界だな。


 今日は特に、なにも予定がない。


 とはいえ、王妃の姪であるフィオリーナはまだ教育中の身だとか。釣りに行くのは、まだ次の機会になるだろう。


 オレ一人で、そのモーニングとやらをいただくかね。


 その後も、数名の冒険者の旅路を記録した。


 冒険者が去ると、王妃が珍しくオレの袖を引っ張ってくるではないか。何事かな?


「どしたい?」


「ソロガス。今日は、乗馬にお付き合いくださいな」


 乗馬か。久しく、ウマには乗っていなかったっけ。常に、馬車移動だったし。


「おお。いいぜ。けど、なんでまた?」


「今度、奥方様を交えて乗馬レッスンをいたします。それで、騎士時代にならしたという、貴方様の腕前を見ておきたくなりまして」


 珍しいことも、あらあな。

 

「構わないぜ。今から行くか」


 オレと王妃は外着に着替えて、乗馬のレクチャーをした。


「大丈夫か?」


「問題はございませんわ。それより、ウマが怯えてらっしゃらない?」


「お前がビビってると、ウマも神経質になるぜ。信じるんだ」


「わかっているのですが、なかなか難しいですわね」


 見るからに、王妃はへっぴり腰になっている。


「最初から、うまくやれることなんてない。ヘタクソでも、数をこなして慣れていくんだよ」


「感情論だけで、上達しますの?」


「気持ちで負けている段階で、振り落とされちまうぞ」


「心得ましたわ。ひゃああ!」


 悲鳴を上げつつも、王妃はなんとか前進できるレベルにまで上達した。顔は、ひきつったままだが。


「それにしても、珍しいよな。お前さんから、乗馬を誘ってくるなんて」

 

「わたくしだって、たまには夫とちょっとこうした時間がほしいんですのよ」


 こちらに顔を見せず、王妃がボソッとつぶやいた。


「さみしい思いをさせて、悪かった」


「いえいえ。誰もそんなことを言っていませんよ。ただ」


「ただ?」


「あなたの気持ちが、わたくしから離れていくのではないかと」


 そんなしょーもないことを、考えていたのかよ?


「んだよ。水臭い」


「だって、あなたとわたくしは、ただのお見合いでした。もっと心に決めた方が、いらっしゃったのではなくって?」


 はあーあ?


「あのなあ。お見合いだけでお前さんと結婚したんなら、オレはとっとと他に女をこさえて、王宮を側室だらけにしてますー」


「まあ……」


「でも、やってねえじゃないか。つまり、そういうこった」


「あなた」


「ささ、お夕飯の時間ですわよ。奥方様っ」


 オレがおどけると、王妃はクスリと笑った。


 ようやく、機嫌が戻ったか?


「よし、降りられるか?」


 オレは、ウマから降りようとする王妃に手を貸す。


 ウマからフワリと降りて、そのまま王妃はオレの腕の中に収まった。

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