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おひとり国王サマ ~毎日忙しい国王は、スキル【冒険の書】で冒険者の旅先へ一瞬でワープして日帰りプチ家出する~  作者: 椎名 富比路
第六章 女王陛下のプチ家出に巻き込まれた国王

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第17話 ソロ活女王、誕生

「うんまい。歯ごたえがあって、噛めば噛むほどにイワシの苦みと塩気が口の中に溢れて、ゴハンが進むのじゃ」


 メザシを頭からガブリってのは、女子として「はしたない」と思うかもしれない。

 だが、うまいものにマナーやエチケット、ジェンダーなんて存在しないのだ。


 あるのは貪欲な、食欲のみ。欲望の赴くままに、食らう。それこそ正しい人としてのあり方なのだ。 


「うまいか?」


 オレが聞くと、フィオはずっとモシャモシャとメザシを噛み締めていた。


義兄(あに)様……ローガン様。あなただけ、ずるいです。こんなにおいしい料理を、いっぱい知っておられる」


「何事も、探索だからな」

 

 冒険者から話を聞きかじっただけでは、単なる情報にしかならん。

 実地調査して、本当にうまいか、どううまいのか、自分の舌に合う料理がなにか知っておく必要がある。


 だからこそ、民衆の好みもわかるってもんだ。


「一応、息子にも魚の食い方を教えてみたんだけどな。身につかなかったぜ」


 息子とかは、教えてもめんどくさがった。


「アユなんて、串に刺したものを丸かじりするのが、一番うまいんだ。なのに息子は、下品だっつってな」


 今でも結局、身のほぐしなどは使用人任せだし。

 

「それが、王族の普通の反応でございますよ。義兄様」


 まあ、そうなんだろうけどさ。


「妾のように、義兄様のマネごとをするような王族は、奇特でしょうぞ。妾は好奇心が勝るゆえ、あなたについてゆくがのう」


「お前さんくらいの年頃だと、オレみたいなオッサンを一番煙たがると思っていたぜ」


「とんでもない。義兄様は、とてもユニークなお方。妾が知らず、妾が興味を示しそうなスポットを色々と教えてくださるではないか。ちっとも飽きやしませぬ」


「そうかー。妻はあんまり、楽しくなさそうなんだよなあ」


 一度、妻と【冒険の書】など関係なく、ピクニックに連れて行ったことがある。

 妻にとっては、自然の美しさより、虫が湧くほうがイヤだったみたいである、なので、誘ってもついていきたがらない。


 どうも息子も娘も、妻の血を受け継いでしまったらしい。王族というのは、誰かに身の回りを世話してもらって当たり前と思っているようだ。


 オレも王族上がりだが、自由に遊べた騎士時代のほうがスキだったからなぁ。

 

 どうしても、家族とはソリが合わなかったりする。

 

「じゃが、妾といっしょになれたとしても、それはそれでつまらんと思うぞ」


「なんでだ?」


「始終そなたについていくから、義兄様のソロ活時間がなくなってしまうぞよ」


 そっかー。それも、問題だな。


「お前さん、ずっとオレのそばをついてくる気か?」


「義兄様が望むならのう。それに、一人では心細いので、ナビゲータがいてくれるほうがありがたいかの」


 たしかに、深夜に女の独り歩きは、さすがに物騒すぎるか。


「王様専用の通信アイテムは、持っているよな?」


「うむ。【脳内会話ツール】は、妾だって持っておる」


 フィオが、トランプ大のカードを手から喚び出す。

 これを耳に当てて、オレたち王様同士で会話できるツールだ。


 王位を継ぐと、ついてくるアイテムである。

 

 このスキルは結構便利で、王様同士の会話を一切傍受されない。

 遠方にいても、通話できる。


「それで、いつでも呼びに来い。お前の行きたい場所に、付き合ってやる」


「ホントかえ? では、釣りに行きたいのじゃ。一度、やってみたくてのう」


「だとしたら、ここなんてどうだ?」


 オレは、【冒険の書】を開く。


「ここだ。岩釣りの名スポットなんだが、いいタイが釣れるらしい」


「うむ。約束ぞ」


「おう」


 約束を交わしたところで、ごちそうさま。


「うーむ。美味であった。女将を呼びたい気分ぞ」


「やめてあげてくれ。忙しそうだからな」


 今でも女将は、コメのおかわりを炊いて、おかずを作っている。


「唐揚げじゃ! 唐揚げがあるのう」


「今からのメニューか! 盲点だった」


 時間帯でオカズが変わるってのは、知っていたが。

 

「卵焼きのお土産とか、ないかのう?」


「持ち帰りはあるみたいたぞ」


「持ち帰り。そういうのもあるのかえ?」


 フィオは、テイクアウトの列に並ぶ。


 せっかくだし、オレも行列に並んだ。


 唐揚げを見事にゲットして、ウキウキで店を出ようとした。


「就寝前に、こっそり食べるぞよ」


「ベッドを、汚すなよ。結構、油が跳ねるぞ」


「……この場で食べたほうが、ええのう」

 

 お茶のお代わりをもらって、唐揚げはこの店で食うことに。


「これは、クセになるのう!」


「ジューシーすぎる! なんでこんな味が、王族で出ないんだよ?」


 こういうので、いいんだよ。女将愛してる。

 

「しょうゆ油とコショウだけの味付けで、こんなにうまくなるのかえ?」


「ああ、コメがほしいぜ」

 

 さっき大量にメシを食ったのに、またライスが欲しくなる味だ。

 

 名残惜しいが、今度こそごちそうさま。


「最高の夜じゃった。では、釣りの時期を楽しみにしておる」


「ああ。予定が決まったら、連絡するぜ」



 翌日、フィオは帰宅することに。


 最後なので、オレの自室でヒソヒソと最後の相談を受ける。

 

「さみしくなりますぞ、義兄様」


「釣りの時期まで、ガマンしてくれ」


 他に女性一人でも行けそうなスポットを、チョイスした。


「ここは、大丈夫か? 弱いけど魔物が出るぜ」


「妾も攻撃魔法や、魔除けが使えるぞよ。大事ない。ムリもせぬ」


「よし。じゃあな、フィオ」


「うむ。ローガン殿」

 

 

 楽しみが、一つ増えたな。

 

 

(第六章 おしまい)

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