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おひとり国王サマ ~毎日忙しい国王は、スキル【冒険の書】で冒険者の旅先へ一瞬でワープして日帰りプチ家出する~  作者: 椎名 富比路
第六章 女王陛下のプチ家出に巻き込まれた国王

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第15話 女王と王妃

 先代ボッティ王との交流が深まったのは、オレの妻の妹がボッティ王の妃になってからだ。


 フィオリーナ女王が生まれてから、先代王はよくオレに見せびらかしてきた。「待望の女の子」と。


 普通、王は跡取りとなる男児を重宝する。


 しかし民主制を重んじる先代王は、跡継ぎをあまり気にしている様子はなかった。


 民衆に政治を任せている関係で、他の王子たちも世継ぎに消極的だったし。


 どちらかというと、利権がほしい周辺の政治家たちのほうがうるさい。


 結果的に、政治家共がもっともチヤホヤしなかった末の娘フィオが、王位を継いだ。民衆が政治になにを求めているか、よくわかってもらえるだろう。

 

「フィオリーナ、あまり主人と親しくなさいませんよう。この方はドラゴンさえ魅了する、タラシでございます」


 夕飯のサーモンソテーを切り分けつつ、王妃がフィオに語りかける。


「それだけソロガス様は、魅力のある殿方ということでしょう。我が義兄として誇らしく思いますわ。ですが、ソロガス様はお妃様を選ばれました。ほまれなことではありませんか」


「……お上手ですね。ソロガスとは、お見合いなのですが」


 王妃は、クスリと笑う。


 オレ、もう引っ込んでいてもいいですよね?


 なんでまたコイツらは、会う度にバチバチなのか。


「ソロガス国王、わたくしに王が務まりますでしょうか?」


「わかんね」


 オレは、正論を述べる。だって、わかんねえんだもん。


「今までで衰退してきたのは、官僚が横行する独裁国家でも、民主国家でもない。官僚国家と民主主義が共存していた国だ。官僚と民衆が手を取り合っても、ロクなことにならん。考え方が、根本から違うからな」

 

 だから、ボッティはちょいと危ういと判断できる。


「民衆に全権を委ねちまっても、いいかもな。先代もそんな考えだったしよぉ」


「かもしれませんね」


 オレが言うと、フィオの表情が明るくなった。

「自分が政治を行わなくていい民主主義バンザイ」って、顔に書いてあるぞ。


「民主主義を援護して、国王は国のシンボリック・アイコンとして、活動していりゃあいいんだ。仕事が減るわけじゃないけどな」


 フィオが、露骨に「ぐええ」という顔に。


「あまり将来のあるフィオに、悪いことを吹き込まないでくださいな」


「なにをいう? 親戚の兄ちゃんってのは、姪に悪い遊びを吹き込むもんだ。それは貴族も、平民も同じさ。王族だってな」


「遊びを吹き込んではダメでしょうに」


 まったくだ。


 だが、教えちゃうもんね。オレは悪い親戚のお兄ちゃんだからな。



 さて、夕飯も済んで、フィオの入浴も終わった。


 あとは寝るだけ……と思っていたのか?


 いよいよ、フィオを連れ出すときだ。


 なにもオレは、全面的に悪いことをしているつもりはない。


 あくまでも、民衆の風習や習慣を学ぶ、大事な時間なのです。


 冒険の書は本来、そういった意図をもって作られたのだから。


「フィオ、起きてるか?」

 

 オレは、ドア越しにフィオへ声を掛ける。


 見回りの衛兵が見たら、オレは明らかに外国の姫に夜這いをかける不審者だよな。


「準備できてるよな?」

 

「うむ。ソロガス様」


「じゃあ、行くぞ」


 オレは手から、【冒険の書】を用意した。


 フィオに合図を送って、転送する。




「うわああ。これが夜の街ぞ!」


 夜中の街なかにワープしたフィオが、その絶景に興奮していた。


「すごいぞすごいぞ、ソロ……」


 オレが「シーッ」と言って、口元に指を立てる。


 フィオも自分の失態を理解したのか、自分の口を両手で塞ぐ。


「国王ソロガスが辺境の街に突然現れたら、民衆がビビり散らかすでしょうが」


 口を塞ぎながら、コクコクとフィオがうなずいた。


「行くぞ。その前に着替えて」


「うむ」


 町娘は、街のど真ん中でベビードールなんて着ません。あっという間に、盗賊団のオモチャにされちまうぜ。


 コイツは、結構基礎的なことから教えなければならんようだ。


「自分で着替えられるか?」


 フィオを物陰に連れていき、一応尋ねる。


 とはいえ、こんなところで着替えさせられんし。

 

「魔法で一発じゃ」


 フィオがステッキを用意した。小さい五芒星型の星が先端についた、デザインである。きらりん、と効果音が鳴りそう。


「一五歳なのに、えらいファンシーな趣味だな?」


「民衆の間で流行しておる、マンガという書物から拝借した技術ぞ」


 そんなのが、流行っているんだな。


 オレもまだまだ、勉強の身である。


「街だとどんな服装がええか、悩んでおったんじゃ。そこへ、ソロガス様が声をかけてきたからの」


 オレのせいなの?


「悪かったよ。できるだけ、地味目で行くぞ。なるったけ、労働者風の感じで。ロングでもスカートとかはやめておいたほうがいいな」


「うむ。デートではないので、かわいらしい服装ではないほうがええのう?」


「そのほうが、ええよ。オレも冒険者風だから、冒険者のフリなら怪しまれないんじゃねえか?」


「なるほどのう。一理ある」


 フィオが、ステッキを振る。


 しゃららんと効果音を鳴らしながら、ステッキが光った。


 一瞬で、フィオの衣装が変わる。


「おお、魔法使いか」


 フィオが、ショートパンツの魔法使い姿に。ハロウィンに出てきそうな、いでたちだ。

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