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おひとり国王サマ ~毎日忙しい国王は、スキル【冒険の書】で冒険者の旅先へ一瞬でワープして日帰りプチ家出する~  作者: 椎名 富比路
第五章 おひとりさま難易度暫定一位、ひとりナイトプール。

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第12話 ソロ洞窟探索

 到着、といっても、まだ近隣の村である。


 さすがに、洞窟にダイレクトアタックはムリか。ファストトラベルも、万能ではない。


 村から、移動するか。

 

 さっそく、オレの前を馬車が通り過ぎていった。


 なんだあれは? 見覚えのない貴族の馬車である。村から、走ってきたような。


 どうも、急いでいる感じだったが。


 この辺、盗賊とかいたっけか?


 盗賊ならたしか、オレがとうの昔に駆逐しきったはずだ。


 オレが騎士団長をしていた頃に、この辺りを担当していたんだが、その時期に盗賊を撲滅させた。「犯罪をするくらいなら、橋を作ってもらうほうがありがたい」と、盗賊団に仕事を斡旋したんだよな。

 橋ができた後も、盗賊団には警備を任せている。

 また盗賊が現れたら、元盗賊団の警備隊に捕まえてもらって、その盗賊を警備員に任命するというシステムを確立した。


 元々騎士団って、その付近にいた元盗賊やら犯罪系冒険者集団やらなんだよね。


 となると、仕事が滞ってやがるか?


 違った。


 オレの考えは、すぐ側を通り過ぎたビッグボアにかき消される。


 アイツに追われているのか、あの馬車は。


 深夜に畑を荒らそうとしたビッグボアが、馬車に気づいてそっちに狙いを定めたようである。


「待ってろ!」


 オレはすぐに、馬車に追いつく。ビッグボアの前に、手を広げて立ちはだかった。


 ボアは、オレに突っ込んでくる。


 オレはレスリングの容量で、ボアを抱きしめてそのまま地面に寝っ転がった。


「どうどう。どうどう……」


 ボアの頭を撫でて、落ち着かせる。


「ハラ、減ってるんだよな? よしよし」


 アイテムボックスに手を突っ込んで、オレはリンゴを取り出した。

 

 こういう事態を見越して、オレはオヤツを用意してある。


「よしよし。食え」


「ぶも」


 ボアはリンゴを食うと、少し眠たそうになった。


「満腹だな。そのまま、朝まで寝ていろ」

 

 このリンゴ【神の実り】といって、一個食うと三日は何も食わなくて過ごせる。


 馬車が、引き返してきたぞ。

 

「御仁! おけがはありませんか!?」


 馬車の荷台から、貴族の男女が降りてきた。


 ははーん。そういうことね。

 

「もう大丈夫だぞ。オレは通りすがりの冒険者、ローガン。怪しいもんではない」


「冒険者殿か。大事なくてよかった。礼を言います」

 

「結構だ」


 とはいえ、何ももらわないのは失礼なんだよなあ。


 秘密の逢瀬を黙ってるわけだし、なにも渡さないとなると、かえって怪しまれちまうか。


「オレはすぐ近くのダンジョンに用事があるので、これにて」

 

「我と姫の関係を、内密にしてもらうわけには……」


「ああ、もちろん。興味がないし」

 

「ふむ。なにを支払えば……」


 貴族の男性が考え込む。


「いや。ローガンという冒険者がここを通り過ぎたことを、口外なさらないでいただきたい。実は別件で、あのダンジョンに用事があるのだ。貴方がたを助けたのは、ほんのついでであってな」


 別件なのは、間違いではない。


「左様ですか。承知しました。では行き先は、【赤い月の洞窟】でしょう? 近くまで、馬車に乗せて差し上げますが?」


「それこそ、結構だ。二人のお時間を大切になさっていただきたい。お気をつけて」


「感謝します。では急ぎますので」


「ああ。よき旅を」

 

 馬車と別れて、オレは歩を進めた。


 危ねえ危ねえ。顔をまじまじと見られるところだったぜ。そうなれば、大変だ。


 なんせオレは、国王だからな。

 

 相手がどんな貴族にせよ、顔を知られるわけにはいかない。


 見知った顔ではないということは、商人上がりかな? それとも、身分違いの恋とか?


 まあいいや。どっちにしても興味はない。


 そんなことより、ナイトプールだよ。


 今から、ウキウキだぜ。


「よし、ダンジョンに到着したぞ」


 ダンジョンの最奥部に、あっという間にたどり着く。

 

 土着モンスターなんて、楽勝楽勝。昔取った杵柄ってやつよ。

 

 さて、浮き輪の空気を入れようっと。


 ゴム製の浮き輪に、踏みポンプで空気を入れていく。


「おっ?」


 モンスターが懲りずに近づいてきたか。大方、オレが持っている酒とツマミが狙いか。

 

 オレはその場でポンプを踏みながら、ゴブリン共の相手をする。


「ええい。行動がワンパターンなんだよっ」

 

 撃退されたゴブリン共が、銅貨やアイテムに変化する。


 魔物は倒されると、アイテムや金、素材に変わるのだ。どういう原理か、オレにもわからんが。

 宝箱になったりする魔物もいるが、中身は素材とたいして変わらず。

 レアアイテムがドロップする確率も、低い。


「さて、湖にドボン、と」


 オレは浮き輪とともに、湖にダイブした。


 浮き輪をシート代わりにして、プカプカと浮く。

  

 洞窟に空いた天井の穴から、赤い月が見えた。


 この景色を見ながら、ワインを傾ける。風情があって、いいものだ。


 ここでこうやってくつろぐのも、久しぶりである。


「あれがお前さんの目だなんて、まだ解明されていないらしいぜ」


 オレは、月に向かってつぶやく。


「ふむ。そうじゃろうのぉ」


 月が、まばたきをした。

 

 実は、誰も知らない。


 赤い月の正体が、レッドドラゴンの目だなんて。

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