君の隣に立てるまで
いつの日からか相棒と言えるヤツと過ごす時間が長くなって。
まず初めに驚いたのは、朝の行動だった。
「……」
「……」
寝起きの悪さにも驚いたケド。起きたソイツを次に見たトキには、ベッドの上であぐらをかいて、静かに目を閉じていた。
手は、親指と人差し指で丸を作って、膝に乗せていて。
思わず歯磨きをやめて、魅入る。
「……」
「……」
……これはまた寝てるとかそういうヤツ?
呼吸は一定。微動だにせず。
でもどこか、声をかけるのは憚られて。ただただじっとソイツを見つめていた。
――と。
「ふふっ」
「!?」
突然笑い出したかと思えば、ソイツは目を閉じたまま。
「視線が気になるよ陽真」
なんて言うもんだから、思わず苦笑い。
「……目開けてねーじゃん」
「わかるよ」
ソ、と返して。いったんうがい。
口の中をすっきりさせてから戻れば、ソイツはいつも通り、深い蒼の瞳でオレを見てた。
その隣に座って。
「アレなに」
「ん?」
「今の」
聞けば、あぁと納得して。
「瞑想だよ」
「めーそー」
「いろいろな効果はあると思うけどね。俺はもう習慣かな」
やらないと気持ち悪くてねと笑う顔は、どこか寂しい。
ケド見なかったフリをして、開いた口から出る言葉の続きに耳を傾けた。
「あとは神経を研ぎ澄ます意味合いも兼ねて、ね」
「ふぅん……視線わかってたもんな」
「あれは誰でもわかるよ」
そんなコトねぇだろと言うのは心の中だけにしておいて。
「……瞑想、ねぇ」
呟いてから。
「オレにも教えてくんね」
「別にいいけど。教えるほど手の込んだものじゃないよ」
「うん、いーから」
不思議そうにしてるソイツにもう一回、「お願い」と少しかわいく首を傾げたら、武煉は笑って。
「じゃあまず――」
ソイツが習慣となっている瞑想を、丁寧に教えてくれた。
暗闇だった。
目を閉じてるから当たり前だケド。ただただその中で、自分の呼吸を感じる。
最初は全然よくわかんなかったケド、あの感覚を知りたくて、毎日続けた。
ソレを話すと、武煉も驚いてた。まだやってたの、と。うなずいて、毎日、毎日続けて。
「……」
荒れる猛吹雪の中、静かに神経を研ぎ澄ます。
感じる視線、音。
全部がわかる。ちょっとは追いつけてんのかなぁと心の中で微笑んで。
近づいてきた「ソレ」に、刃を向けた。
目を開けて、ソレに目を向ければ、ちゃんといる。
「残念、雪ちゃん?」
「っ……」
勝利確定にそっと微笑んで、ソイツの迎えが来てる通路まで行けば、やっぱりいた。
「よぉ」
「お疲れ陽真」
「サンキュ」
暗い中を歩いて行って。
「すごいね」
武煉の声に、笑う。
「だろ? 努力のたまもの」
「陽真は努力家だったわけだ」
「ソ。戦うの、楽しみにしてろよ」
「もちろん」
笑って少し先を行く武煉の背を見る。
追いつけているだろうか、その背に。
勝敗は、いつも五分だ。だから確かに、力は五分なんだと思う。
けれど。
ずっと見てきたから、思う。
まだ足りない。
毎日毎日努力をしてきたコイツに、及ばない。
家から見放されても抜けない習慣。
ヒューマンでも、魔力持ちより強いその武術。
オレは。
「陽真?」
「……んや、なんでも」
心の中で、笑ってやって。
振り向いた武煉に並ぶように、歩を進めた。
『君の隣に立てるまで』/陽真




