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君の隣に立てるまで

作者: 澪ナギ
掲載日:2026/06/15

 いつの日からか相棒と言えるヤツと過ごす時間が長くなって。


 まず初めに驚いたのは、朝の行動だった。


「……」

「……」


 寝起きの悪さにも驚いたケド。起きたソイツを次に見たトキには、ベッドの上であぐらをかいて、静かに目を閉じていた。

 手は、親指と人差し指で丸を作って、膝に乗せていて。

 思わず歯磨きをやめて、魅入る。


「……」

「……」


 ……これはまた寝てるとかそういうヤツ?

 呼吸は一定。微動だにせず。

 でもどこか、声をかけるのは憚られて。ただただじっとソイツを見つめていた。


 ――と。


「ふふっ」

「!?」


 突然笑い出したかと思えば、ソイツは目を閉じたまま。


「視線が気になるよ陽真」


 なんて言うもんだから、思わず苦笑い。


「……目開けてねーじゃん」

「わかるよ」


 ソ、と返して。いったんうがい。

 口の中をすっきりさせてから戻れば、ソイツはいつも通り、深い蒼の瞳でオレを見てた。

 その隣に座って。


「アレなに」

「ん?」

「今の」


 聞けば、あぁと納得して。


「瞑想だよ」

「めーそー」

「いろいろな効果はあると思うけどね。俺はもう習慣かな」


 やらないと気持ち悪くてねと笑う顔は、どこか寂しい。

 ケド見なかったフリをして、開いた口から出る言葉の続きに耳を傾けた。


「あとは神経を研ぎ澄ます意味合いも兼ねて、ね」

「ふぅん……視線わかってたもんな」

「あれは誰でもわかるよ」


 そんなコトねぇだろと言うのは心の中だけにしておいて。


「……瞑想、ねぇ」


 呟いてから。


「オレにも教えてくんね」

「別にいいけど。教えるほど手の込んだものじゃないよ」

「うん、いーから」


 不思議そうにしてるソイツにもう一回、「お願い」と少しかわいく首を傾げたら、武煉は笑って。


「じゃあまず――」


 ソイツが習慣となっている瞑想を、丁寧に教えてくれた。




 暗闇だった。

 目を閉じてるから当たり前だケド。ただただその中で、自分の呼吸を感じる。

 最初は全然よくわかんなかったケド、あの感覚を知りたくて、毎日続けた。

 ソレを話すと、武煉も驚いてた。まだやってたの、と。うなずいて、毎日、毎日続けて。



「……」


 荒れる猛吹雪の中、静かに神経を研ぎ澄ます。


 感じる視線、音。


 全部がわかる。ちょっとは追いつけてんのかなぁと心の中で微笑んで。


 近づいてきた「ソレ」に、刃を向けた。


 目を開けて、ソレに目を向ければ、ちゃんといる。


「残念、雪ちゃん?」

「っ……」


 勝利確定にそっと微笑んで、ソイツの迎えが来てる通路まで行けば、やっぱりいた。


「よぉ」

「お疲れ陽真」

「サンキュ」


 暗い中を歩いて行って。


「すごいね」


 武煉の声に、笑う。


「だろ? 努力のたまもの」

「陽真は努力家だったわけだ」

「ソ。戦うの、楽しみにしてろよ」

「もちろん」


 笑って少し先を行く武煉の背を見る。


 追いつけているだろうか、その背に。

 勝敗は、いつも五分だ。だから確かに、力は五分なんだと思う。


 けれど。


 ずっと見てきたから、思う。


 まだ足りない。


 毎日毎日努力をしてきたコイツに、及ばない。

 家から見放されても抜けない習慣。

 ヒューマンでも、魔力持ちより強いその武術。



 オレは。



「陽真?」

「……んや、なんでも」



 心の中で、笑ってやって。

 振り向いた武煉に並ぶように、歩を進めた。



『君の隣に立てるまで』/陽真




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