第7話:【朗報】魔力ゼロ令嬢、天然の爆弾でモンスターハウスを更地にする件w
アリシアは音を立てぬよう慎重に後方へ下がり、背後の暗闇を凝視した。一度通り過ぎた通路を再度確認し、追ってくるモンスターがいないことを確かめる。退路が壁に阻まれている以上、背後を突かれれば即座に命を落とすからであった。
幸いにして、追手の気配はない。 彼女は再び、禍々しい門の前に群れる異形の群れを観察した。 正面から挑めば、魔力を持たぬ彼女など一瞬で食い殺されるであろう。しかし、絶望の淵に立ちながらも、彼女に潔く死ぬつもりなど毛頭なかった。
「……まともに戦う必要などありませんわ」
アリシアは唇を噛み締め、道中に見てきた「天然の脅威」を脳内で整理した。 触れれば肉を溶かす食人植物の強酸。衝撃で爆発的に燃え上がる乾燥した胞子。そして、地床に堆積している特定の鉱物粉末。 これらを組み合わせれば、魔力に頼らずとも、この迷宮そのものを武器に変えられる。彼女は博物学と生活の知恵を総動員し、生き残るための「天然の爆弾」を作ることに決めたのである。
彼女は再び、先ほど回避した食人植物の群生地へと密かに戻った。 泥で気配を殺したまま、植物の捕食袋から分泌される強酸を、落ちていた革袋へと慎重に詰め替えていく。さらに、その中へ乾燥した爆発性の胞子と、特定の岩肌から削り出した鉱石の粉末を混ぜ合わせた。
それは、繊細かつ慎重さを要する作業であった。 混ぜ方を誤れば、その場で彼女自身が消し飛ばされる。アリシアは泥に汚れた指先を震わせることなく、まるで高級な茶葉を調合するかのような手つきで、致死性の混合物を完成させていった。 物質同士が引き起こす化学反応を、彼女は「天然の爆弾」へと昇華させたのである。
準備は整った。 アリシアは、完成した複数の爆弾を抱え、再びモンスターハウスの入り口へと戻った。 扉の前に陣取る魔獣たちは、未だに泥にまみれた少女が、自分たちの命を刈り取る準備を終えたことに気づいていない。
アリシアは暗闇の中で、静かに、しかし冷酷に口角を上げた。 魔力がないからこそ辿り着いた、理による蹂躙。 彼女は最初の一つを手に取り、獲物たちが密集する広間の中央へと狙いを定めた。




