第69話:【朗報】「感動の最終回」が不当な安売りだったので,物理で『続編』を強制発注してみたw ハッピーエンド以外は赤字扱いですわwww
エンディング・シアター
全次元を会社化し,奇跡の市場すらも買い叩いたアリシアが辿り着いたのは,あらゆる世界の「結末」が映画のように上映され,保存されている「エンディング・シアター」であった.そこには,無数のスクリーンが浮かび,それぞれの物語が最後の一秒を刻もうとしている.
アリシアは,今や「ポップコーン製造機」を兼任させられている魔女から熱々の弾けるコーンを受け取り,椅子となった枢機卿に深く腰掛けた.
「…….…….お姉ちゃん,ここが全次元の最終停留所だよ.設計図にも『これより先,上映終了』って書いてある.ここで全ての物語にオチがついて,世界はアーカイブ(倉庫)に送られちゃうんだ……」
少女が寂しそうにスクリーンを指差す中,アリシアは自分自身の物語が映し出されている巨大なスクリーンを見上げ,不快そうに目を細めた.
「…….…….三行で言いなさいな.要するに,わたくしの有能な働きを無視して,勝手に『完』の文字を出そうとしている不届き者がいるということですわね?」
背後では,計算機の獅子が「続編を作った場合の興行収入」を必死に試算し,日記帳のフィナリスが震えながらペンを走らせている.
守護者:結末監督「エピローグ・ゼット」の演出
シアターの中央から,メガホンを持った影のような男,結末監督「エピローグ・ゼット」が姿を現した.彼は世界が最も美しく,かつ悲劇的に終わる瞬間を愛する,極端な芸術至上主義者であった.
「……素晴らしい.アリシアよ,汝の暴挙は最高のエンターテインメントだった.だが,物語には必ず終わりが必要だ.汝には,全次元を救って力尽き,伝説として語り継がれる『感動の消滅』を用意してやった.さあ,美しく散り,私の傑作の一部となるが良い」
ゼットがメガホンで叫ぶと,アリシアのスクリーンに「THE END」の文字が浮かび上がり,彼女の存在を歴史の闇へと押し込めようとする拘束力が働き始めた.
枯れ果てた感性:監督が「悲劇」を強いる理由
彼がこれほどまでに「美しき終焉」に執着するのには,乾ききった理由があった.
彼はかつて,誰もが幸せになる物語ばかりを書いていた無名の作家であった.しかし,彼の書く幸せな話は「退屈だ」と切り捨てられ,誰の記憶にも残らなかった.絶望した彼が最後に書いた,愛する主人公が理不尽に死ぬ悲劇だけが,皮獄にも世界中で大絶賛されたのである.
「幸福は一瞬で忘れられるが,悲劇の痛みは永遠に刻まれる.ならば,全ての物語は絶望で幕を閉じるべきだ.それこそが,存在が価値を持つ唯一の証明なのだから」
彼は自らの心をも悲劇の脚本へと変え,二度とハッピーエンドを信じぬ冷酷な演出家へと変貌した.彼にとっての平穏とは,全ての命が最も輝く瞬間に「終了」させられ,二度と汚されることのない静かなアーカイブの中だけだったのである.
「さあ,幕を下ろせ.汝の死こそが,この世界の価値を完成させるのだ!!」
施工開始:物理による「脚本の修正」
「…….…….長い.三行で言いなさいな.あと,感動の消滅? まぁ,わたくしという優良資産を,勝手に『減価償却』して廃棄処分しようとするなんて,経営センスがゼロですわね」
アリシアは自分を包み込もうとした「THE END」の文字を,右拳一つで物理的に「分からせた」.
本来,概念であるはずの終止符が,アリシアの圧倒的な質量圧の前では,ただの脆い看板のように粉々に砕け散る.
「な……!? 物語の終わりを,純粋な腕力で拒絶したというのか……ッ!! 脚本は絶対……監督の指示に従わないキャラクターなど存在しないはずだ……!」
「教育が必要ですわね.観客が満足していないのに,勝手に舞台を片付けないでくださる? この物語のスポンサーは,わたくしですわ!!」
アリシアはシアターの映写機,すなわち物語の出力装置に向けて,全人生の負債を乗せた正拳突きを叩き込んだ.
ドォォォォォォォォォォォォンッ!!
それはフィルムを焼くのではなく,あまりの衝撃波によって「結末」という概念そのものを物理的に粉砕し,強制的に「年中無休」へと書き換える衝撃であった.
決済:全次元の「永久運営」決定
エピローグ・ゼットのメガホンは粉々に砕け散り,彼が管理していた「終わりの美学」は,アリシアの拳によって「ただの企画書」へと書き換えられた.
「ガ,ハッ…….私の美学が……私の最高傑作が……ただの『長期連載』に……」
「……ふぅ.ようやく商談成立ですわね.お姉ちゃん(仮),この『監督』さん,これからはわたくしの会社の『宣伝部長』として,一生わたくしの輝かしい実績を広告して回りなさいな」
暴力は善である. アリシアの理不尽な拳は,次元一の演出家を「ただの広報担当」へと引きずり下ろし,全ての物語の終わりを彼女の気まぐれ一つで永久に延長できる状態にまで買い叩いてしまったのだ.
「さて,次はどこのページかしら? ……部長,次は『真の自由を謳歌している』という次元へ案内なさいな.わたくし,自由という名の『放任』を物理で管理したくなってきましたわ」




