第67話:【朗報】全次元を「株式会社」にしてみたw 全知全能の社員たちを過労死寸前まで使い倒す極悪経営術www
旧・原初の空
世界の設計者を「庭師」として再雇用し,全次元の権利書を手に入れたアリシアは,原初の空を地上1000階建ての超巨大オフィスビル「アリシア・ホールディングス本社」へと改築した。
彼女は最上階の社長室で,椅子にされた枢機卿にどっしりと腰掛け,魔女に淹れさせた適温の紅茶を口に運んでいた。
「……。……。お姉ちゃん,大変だよ。全次元の住人から一斉に『雇用契約書』への異議申し立てが届いてる。みんな,最低賃金が『アリシア様の笑顔』なのはおかしいって言ってるよ」
少女が膨大な量の苦情伝票を抱えて走り回る中,アリシアは窓の外に広がる銀河の夜景を眺め,退屈そうに鼻で笑った。
「……。……。三行で言いなさいな。要するに,わたくしの下で働ける喜びを,彼らはまだ理解していないということですわね? 教育(再研修)が必要ですわ」
背後では,経理担当にされた獅子が,全宇宙の負債と利益を計算しながら泡を吹いて倒れていた。
監査官の来襲:次元監査官「ゼロ・サム」の介入
アリシアによる強引な全次元買収を「違法な独占禁止法違反」と見なし,空間を切り裂いて一人の男が現れた。
全身を幾何学模様のスーツで包み,片目に単眼鏡を嵌めたその男は,次元監査官「ゼロ・サム」。 彼は特定の次元に属さず,宇宙全体の「収支」がプラスにもマイナスにもならないよう調整を続ける,冷酷な会計士であった。
「……不当な資産取得を確認。アリシア,汝の暴力による買収は,次元経済の均衡を著しく損なう。私は汝の全資産を凍結し,この世界を『無価値な初期状態』へと強制リセットする」
ゼロ・サムが巨大な「監査印」を掲げると,アリシアが所有する星々から色が失われ,存在の価値が次々と抹消され始めた。
枯渇した心:監査官が「ゼロ」を求める理由
彼がこれほどまでに「均衡」と「凍結」に執着するのには,逃げ場のない過去があった。
彼はかつて,欲望が無限に膨れ上がり,全てが価値を失った「ハイパー・インフレ次元」の唯一の生き残りであった。 そこでは愛も命も,あまりにも過剰に溢れすぎたために,一貨の価値も持たなくなった。 人々は無限の富の中で飢え,無限の命の中で退屈して死んでいったのである。
「プラスは必ずマイナスを呼び,繁栄は必ず腐敗を招く。ならば,最初から全てを『ゼロ』にしておくことこそが,永遠に変わらぬ唯一の美徳である」
彼は自らの名前を捨て,感情を「帳簿の数字」へと置き換えた。 彼にとっての平穏とは,何も増えず,何も減らず,ただ真っ白な紙のように静止した世界の中だけだったのである。
「汝という理不尽な『利益』は,私の美学に反する。その野望ごと,倒産(消失)せよ!!」
極大の凍結結界が,アリシアのオフィス全体を飲み込もうとした。
施工開始:物理による「不正会計の修正」
「……。…….長い。三行で言いなさいな。あと,資産凍結? まぁ,わたくしの財布に勝手に鍵をかけようとするなんて,随分と失礼な税務署員ですわね」
アリシアは迫り来る凍結の波動を,右拳一つで物理的に「差し押さえた」。
本来,概念であるはずの「凍結」が,アリシアの圧倒的な圧力の前では,ただの脆弱な氷菓子のようにパキパキと音を立てて砕け散る。
「な……!? 次元監査の術式を,純粋な腕力で拒絶したというのか……ッ!! 収支が合わない……私の計算に,このような『過剰な暴力』は存在しない……!」
「教育が必要ですわね。世界がゼロを目指しているのではなく,貴方の『器』が空っぽなだけですわ!!」
アリシアはゼロ・サムの掲げる監査印に向けて,全人生の負債を乗せた正拳突きを叩き込んだ。
ドォォォォォォォォォォォォンッ!!
それは帳簿を破り捨てるのではなく,あまりの衝撃波によって「ゼロ」という概念そのものを物理的に粉砕し,強制的に「無限の利益(暴力)」を書き込む衝撃であった。
決済:全資産の「永久保全」完了
ゼロ・サムの単眼鏡は粉々に砕け散り,彼が管理していた「均衡」は,アリシアの拳によって「ただの領収書」へと書き換えられた。
「ガ,ハッ……。私の均衡が……私の正義が……ただの『赤字決算』に……」
「……ふぅ。ようやく商談成立ですわね。お姉ちゃん(仮),この『監査官』さん,これからはわたくしの別荘の『門番』として,不審な客を片っ端からゼロにして差し上げなさいな」
暴力は善である。 アリシアの理不尽な拳は,次元の均衡を司る監査官すらも「ただの警備員」へと引きずり下ろし,全次元の資産を彼女の気まぐれ一つで永久に独占できる状態にまで買い叩いてしまったのだ。
「さて,次はどこの市場かしら? ……門番さん,次は『最強の運命を販売している』という次元へ案内なさいな。わたくし,自分の運命を新調したくなってきましたわ」
アリシアの不敵な笑みと共に,一行は次元の扉を物理でこじ開け,新たなる市場(戦場)へと向かって進軍を開始した。




