第65話:【朗報】「絶対不可避の運命」,ただの『賞味期限切れのチラシ』だったので物理でシュレッダーにかけてみたw 決められた未来なんて在庫処分ですわwww
因果の最果て
真理を「お買い物リスト」に書き換えたアリシアが次に辿り着いたのは,全次元の生命が辿るべき道筋が巨大な糸となって紡がれている「運命の織り場」であった.そこでは,過去から未来へと続く無数の銀色の糸が,巨大な機織り機によって絶え間なく編み上げられている.
アリシアは,もはや「日記帳」として定着したフィナリスの背中の上で,優雅に足を組んで座り込んだ.
「…….…….お姉ちゃん,見て! あの太い糸,お姉ちゃんの名前が書いてあるよ.でも……『ここで力尽き,世界と共に消滅する』って文字が浮かび上がってる! これが……修正不可能な『絶対の運命』なんだ!」
少女が顔を青くして叫ぶ中,アリシアは自分の名前が刻まれた糸を指先でつまみ,不愉快そうに鼻を鳴らした.
「…….…….消滅? まぁ,わたくしのスケジュールを勝手に決めるなんて,随分とお節介な機織り職人がいたものですわね.このデザイン,今年の流行(わたくしの気分)に全く合っていませんわ」
背後では,椅子にされた枢機卿,ティーウォーマーの魔女,計算機の獅子が,運命の糸から放たれる圧倒的な拒絶反応に悶絶していた.
守護者:運命執行官「カルマ」の宣告
織り機の影から,全身が透明な糸で構成された人型のシステム――「運命執行官カルマ」が姿を現した.彼は意志を持たず,ただ「決まった未来」を冷酷に実行するためだけに存在する,世界の自動処理装置である.
「……観測終了.アリシア,汝の全行動はすでに織り込み済みである.汝がどれほど暴れようとも,この糸の終着点は変わらない.汝はここで絶望し,全ての価値と共に無へと帰す.それがこの世界の『唯一の結末』である」
カルマが手をかざすと,アリシアの周囲に巨大な糸の檻が展開された.それは触れる者の「自由意志」を物理的な質量で削り取り,定められた行動しか取れなくする絶対束縛の領域であった.
閉ざされた回路:執行官の隠された過去
カルマがこれほどまでに「予定調和」に執着するのには,逃げ場のない理由があった.
彼はかつて,人々に「自由な未来」を説いた希望の預言者であった.しかし,彼が人々に自由を与えた結果,世界は予測不能な混沌に陥り,最愛の家族や仲間たちは「自由な選択」の末に互いを殺し合い,滅び去ったのである. 愛した者たちが自分の手で選んだ不幸.その光景が,彼の心を永遠に壊した.
「自由など,ただの呪いだ.選択があるから後悔が生まれる.ならば,最初から全ての結末を固定し,誰も迷わぬようにすることこそが,世界に対する究極の愛である」
彼は自らの意志をシステムへと捧げ,感情を「確率論」へと置き換えた.彼にとっての平穏とは,誰もがレールの上を歩き,二度と不測の悲劇が起きない,静止した糸の世界の中だけだったのである.
施工開始:物理による「糸の断ち切り」
「…….…….長い.三行で言いなさいな.あと,結末? まぁ,わたくしが買った本(世界)の最後を,勝手に袋綴じにしないでくださる?」
アリシアは自分を縛り上げようとする「運命の糸」を,右拳一つで強引に引きちぎった. 概念であるはずの因果が,アリシアの圧倒的な「我儘(暴力)」の前では,ただの古びた麻紐のようにブチブチと音を立てて千切れていく.
「な……!? 修正不能な運命を,純粋な『腕力』で拒絶したというのか……ッ!! 物理法則を超えた現象は……計算に含まれていない……!」
「教育が必要ですわね.運命が重いのではありませんわ.貴方の『見通し』が,あまりにも甘すぎるだけですわ!!」
アリシアは運命の織り機の心臓部に向けて,全人生の負債を乗せた正拳突きを叩き込んだ.
ドォォォォォォォォォォォォンッ!!
それは未来を破壊するのではなく,あまりの衝撃波によって「糸」そのものを物理的に粉砕し,ただの「縄跳びの紐」へと退行させる衝撃であった.
決済:運命の「在庫処分」完了
カルマの透明な体は粉々に砕け散り,織り場に溢れていた「絶対の未来」は,アリシアの拳によって「ただのゴミ」へと書き換えられた.
「ガ,ハッ…….私の紡いだ未来が……ただの『賞味期限切れのチラシ』に……」
「……ふぅ.ようやく軽くなりましたわ.お姉ちゃん(仮),この千切れた糸,わたくしの新しいドレスの『刺繍』にでも使いましょうか?」
暴力は善である. アリシアの理不尽な拳は,絶対に逆らえないはずの運命すらも「ただの廃品」へと引きずり下ろし,全生命の未来を彼女の気まぐれ一つで編み直せる「手芸用品」程度の価値にまで買い叩いてしまったのだ.
「さて,いよいよ最後かしら? ……ナビさん,この世界の『原作者』が隠れている場所へ案内なさいな.わたくし,この世界の『権利書』を直接受け取りに行かなくてはなりませんわ」
アリシアの不敵な笑みと共に,一行は次元の最深部,世界の創造主が住まうという「原初の空」へと向かって進軍を開始した.




