第61話:【朗報】超科学文明の「レーザー」,ただの眩しいライトだったので握りつぶしてみたw 時代遅れの物理こそが最強の真理ですわwww
鋼鉄と電脳の都「ギガ・フロート」
アリシアが世界の壁を蹴り飛ばして辿り着いたのは,空を飛ぶ無数の鉄の鳥と,空高くそびえる鏡張りの摩天楼が並ぶ超高度文明次元であった.そこには魔法の気配は微塵もなく,ただ「電気」と「計算」が支配する無機質な美しさが広がっている.
その中心にある大広場に,アリシアは悠然と腰を下ろしていた.
「…….…….お姉ちゃん,ここ凄いや! 設計図が勝手にアップデートされて,知らない技術の情報がどんどん流れ込んでくるよ! でも,みんな私たちのことを変な目で見てる……」
少女が周囲を警戒する中,アリシアは背後に控える三人の「下僕」たちを顎で指した.
「あら,気にする必要はありませんわ.……枢機卿,いつまで座り心地の悪い姿勢でいらっしゃるの? もっと水平に,わたくしの足が疲れぬよう『椅子』としての本分を全うなさいな」
「……ぐ……。この我を……建材どころか家具扱いにするとは……ッ!!」
かつての「鉄血の枢機卿」は,今やアリシアのための頑丈な「人間椅子」として,その鋼鉄の肉体を無理やり変形させられていた.その横では,「紅蓮の魔女」が指先から微弱な火を出し,アリシアのティーカップを適温に保ち,「黄金の獅子」が周囲の物価指数と為替レートを必死に計算させられている.
新たな敵:機神将「ゼロ・コード」の介入
アリシアたちの異質な存在を排除するため,空間にホログラムの警告が浮かび上がった.重武装のドローン兵器を率いて現れたのは,全身を白銀のサイボーグパーツで換装した銀髪の将軍,「機神将ゼロ・コード」であった.
「未確認生命体を確認.貴様らの魔力という不確定要素は,この『完全なる計算』に支配された世界に必要ない.これより全武装を解放し,原子レベルで分解・消去する」
機神将が手を掲げると,周囲のビルから数万のレーザー砲が一斉にアリシアに向けられた.
埋め込まれた虚無:ゼロ・コードの暗い過去
機神将がこれほどまでに「計算」と「機械化」に固執するのには,逃れられぬ絶望があった.
彼はかつて,この次元で最も「感受性」に優れた人間の少年であった.しかし,彼の住む都市は壊滅的なパンデミックに襲われ,彼は唯一の生存者となった.肉親も友人も,目の前で「予測不可能な病」によって無惨に失われたのである.
「感情があるから,期待する.心があるから,傷つく.ならば,不確定なものなど全て捨ててしまえばいい」
彼は自らの脳を機械に繋ぎ,心を数式へと置き換えた.愛も悲しみも,全ては効率を落とすバグとして消去した.彼にとっての平穏とは,全てが「計算通り」に動き,二度と不慮の事態に心を乱されない,冷たいプログラムの海の中にしかなかったのである.
「汝という理不尽は,私の計算を乱す最大の不純物だ.その無駄な肉体ごと,消失せよ!!」
極大の収束レーザーが,アリシアの眉間に向けて放たれた.
施工開始:物理による「レンズの破壊」
アリシアは,迫り来る光の奔流を退屈そうに見つめていた.
「…….…….長い.三行で言いなさいな.あと,そのライト.わたくしの午睡を妨げるほど眩しいですわね.……『消灯』のお時間ですわよ」
アリシアは右手を無造作に伸ばし,直撃するはずのレーザーそのものを「物理的に掴んだ」.
本来,質量を持たないはずの光子が,アリシアの「握力」という理不尽な圧力の前に,実体のあるガラス細工のようにギチギチと音を立てて歪み始める.
「な……!? エネルギー体を……手で掴んだだと!? 計算上,そんな現象は存在し得ない……ッ!!」
「あら.計算が合わないのなら,貴方の『そろばん(脳)』が壊れているだけではありませんこと? 教育が必要ですわね」
アリシアはそのまま,掴んだ光の束を雑巾のように絞り上げ,逆に機神将の元へと投げ返した.
ドォォォォォォォォォォォォンッ!!
科学の粋を集めたレーザーは,アリシアの力によって「ただの重い鉄塊」のような衝撃波へと変質し,機神将の白銀のボディを無慈悲に粉砕した.
決済:科学の敗北と「買収」の予感
「ハッ……。エラー……致命的なシステムエラー……。私の数式が……物理的な暴力一つで,全て……白紙に……」
泥濘の中に崩れ落ちる機神将.かつての「無」への執着が,アリシアの圧倒的な「生」の圧力に塗り潰されていく.
「暴力は善.そして,物理こそがこの世で最も正確な『計算結果』ですのよ」
アリシアは椅子にされた枢機卿の背中の上で,新しく淹れられた紅茶を優雅に啜った.
「さて,お姉ちゃん(仮).……この『ピカピカの街』,わたくしの新しいクローゼットとして,まるごと買い叩いて差し上げますわよ!!」
極悪令嬢の理不尽は,科学の殿堂さえもその支配下に置こうとしていた.




