第60話:【朗報】「両成敗」の天秤を粉砕したら,三大怪物の『債権』が全てわたくしの手元に転がり込んできた件w
独占された勝敗
白と黒の雨が止み,裁定者「両成敗」がその双刃と共に砕け散った後,戦場には形容しがたい静寂が訪れた。 泥の中に横たわるのは,かつて世界を震撼させた三大怪物たち。 鉄血の枢機卿は装甲が剥がれ落ち,紅蓮の魔女は種火さえ残らず,黄金の獅子は一貨の金貨すら持たぬ無一文の姿で地に伏している。
その中心で,泥まみれのドレスを纏ったアリシアは,折れかけた足で悠然と立ち上がっていた。 彼女の指先には,粉々になった懐中時計の破片が握られている。それは「無能」と呼ばれた過去の残骸であり,今やこの世界の全財産を買い叩くための「受領印」へと変わっていた。
債権回収:命のオークション
アリシアは,虫の息である枢機卿の元へ歩み寄り,その無骨な顎をヒールの先で軽く持ち上げた。
「……。…….三行で言いなさいな。要するに,貴方たちのプライドも,過去も,命も,今の爆発で全て『不渡り』になったということですわね?」
「……ク……殺せ……。敗者に……慈悲など……」
枢機卿が鉄錆の混じった声で呻く。しかし,アリシアは冷ややかな笑みを浮かべ,懐から一枚の汚れた羊皮紙を取り出した。
「殺す? まぁ,そんなコストの低い解決策をわたくしが選ぶとお思いで? 最近の若者(敗北者)は,すぐに死んで責任から逃げようとしますのね。それは極めて無責任な,『背任行為』ですわよ」
アリシアは,魔女と獅子も見える位置にその紙を掲げた。
「貴方たちが壊したこの世界の修復代。わたくしへの精神的苦痛。そして,ドレスのクリーニング代。それら全てを合算した結果,貴方たちの命は現在,わたくしの『差し押さえ対象』となりましたの」
強制雇用:地獄の終身契約
「差し押さえ……だと?」
黄金の獅子が,震える声で問い返す。金ですべてを買ってきた彼にとって,自分が「買われる側」に回るという屈辱は死よりも重い。
「左様ですわ。今日から貴方たちは,わたくしの私有財産ですの。……枢機卿,貴方のその鉄の体は,わたくしの別荘の『頑丈な建材』として再利用して差し上げます。魔女,貴方の炎は,わたくしのティータイムのための『永久コンロ』。そして獅子,貴方のその商才は,わたくしの小遣い稼ぎのための『計算機』として,死ぬまで働いていただきますわ」
「……冗談……じゃないわ……。私を……道具にするなんて……」
魔女が弱々しく抵抗するが,アリシアはその言葉を物理的な質量(踏みつけ)で黙らせた。
「暴力は善。そして,債権者の命令は絶対ですわ。……お姉ちゃん(仮),契約書の準備を。この三人の魂に,消えない『領収印(呪印)』を刻んで差し上げなさいな」
決済:更地からの再建開始
少女が震える手で真っ白になった設計図を広げる。そこには,アリシアの意志によって書き換えられた新しい世界の構造図が浮かび上がっていた。 三大怪物を「動力源」として組み込んだ,史上最も理不尽で,史上最も堅牢な,アリシア専用の「楽園」の設計図である。
「……あ。お姉ちゃん,三人のステータスが『アリシア様の所有物』に書き換わったよ。これで世界中の借金も恨みも,全部お姉ちゃんが『独占』したことになっちゃった……」
「ふふ,素晴らしいですわ。更地になった世界を,わたくしの好みに合わせて一から『リフォーム』して差し上げますわよ」
アリシアは泥を払い,空を見上げた。重く湿っていた雲は,彼女の放った衝撃波で完全に吹き飛ばされ,そこには見たこともないほど澄み渡った青空が広がっていた。
「さあ,野郎共(家来)。……まずはわたくしのための『最高級の椅子』を,その身を削って作りなさいな!!」
極悪令嬢の旅は,世界の破壊を経て,ついに「全次元のオーナー」としての第一歩を踏み出したのである。




