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第57話:【悲報】絶望の最終競売,落札寸前で「黄金の獅子」が全財産を投げ込んできた件

沈黙と黄金の足音

鉄血の枢機卿の鉄拳と,紅蓮の魔女の業火が混ざり合った最終奥義。その直撃を受けたアリシアは,再びあの懐かしくも忌々しい泥濘の中へと沈んでいた。


全身の骨は砕け,銀髪は泥と血に汚れ,もはや指一本動かすことすら叶わない。意識の混濁する中,彼女の脳裏には,王国から追放され,この最前線の塹壕に放り出されたあの日の雨音が響いていた。


「…….…….そう。わたくしには,何もありませんでしたわね。魔力も,家柄も,未来も……」


泥水を啜る屈辱。その底で見つけたのは,絶望ですらなく,ただの「虚無」であった。 だが,その沈黙を切り裂くように,乾いた金属音が響く。


「……素晴らしい。実に素晴らしい『残骸』だ。これほどまでに価値を損ないながら,なおも底知れぬ『需要』を感じさせる商品は初めてだよ」


戦場の霧を裂いて現れたのは,眩いばかりの純金に彩られた軍服を纏う男。自由都市連合の**「黄金の獅子」**であった。


黄金の獅子の暗いバックボーン:欠けた一貨

彼は,世界で最も金に汚い都市連合の,さらにどん底の債務奴隷として生まれた。 幼い頃,流行病に倒れた妹を救うため,彼は必死に働いて薬代を貯めた。だが,ようやく薬局に辿り着いた時,薬の価格はインフレによって「たった一貨コイン」だけ,彼の所持金を上回っていたのである。


「金が足りない? ならば死ぬだけだ。それがこの世の『等価交換』だよ,坊や」


薬師の冷酷な言葉と共に,妹は彼の腕の中で冷たくなった。 その瞬間,彼は悟ったのである。 愛も,命も,神の救いも。この世の全てには「価格」があり,金を持たぬ者の正義など,無価値なゴミに過ぎないことを。


「私は決めたのだ。この世の全ての理不尽を,札束で殴り倒すと。神さえも買収し,死さえも資本で回避する。それが私の『黄金の正義』だ」


彼は自分を拒んだ薬師を最初の金貨で絞め殺し,そこから都市連合の全権を握るまでのし上がったのである。


市場への乱入:ハイパー・インフレの銃口

「枢機卿,魔女。貴公らの『過去の恨み』という名の安っぽいドラマはもう十分だ。これ以上の破壊は,このアリシアという『稀少資源』の価値を損なう」


黄金の獅子は,一発の弾丸に小国の国家予算に匹敵する魔力を込めた「魔導重金銃」をアリシアに向けた。


「……。…….三行で言いなさいな。要するに,貴方もわたくしを『買い叩き』に来たということですわね?」


泥の中から顔を上げたアリシアは,皮肉な笑みを浮かべた。 彼女の視界は真っ赤に染まり,もはや肉体の限界はとうに越えている。だが,黄金の獅子が放つ「圧倒的な資本(暴力)」を感じた瞬間,彼女の壊れた懐中時計が,熱を帯びるように震えた。


「お姉ちゃん! だめだよ,黄金の獅子の攻撃は『等価交換』を強制するんだ! あの銃弾を受けたら,お姉ちゃんの存在そのものが『金銭価値』に変換されて消滅しちゃう!!」


少女が叫ぶ中,黄金の獅子は冷酷に引き金に指をかけた。


「安心したまえ,アリシア。君の死には,人類史上最高額の『弔慰金』を設定してやろう。……さらばだ,破産した令嬢よ。君の人生を,私が全額『清算』してやる」


施工開始:絶望の「逆転入札」

ドォォォォォォォォォォォォンッ!!


黄金の光を帯びた魔弾が放たれた。 それは物理的な破壊ではなく,対象の「存在価値」を金銭へと強制置換し,この世から消去する概念の一撃。 枢機卿の鉄も,魔女の炎も,その圧倒的な「資本」の前には無力であった。


だが,その時。 泥濘の中に沈んでいたアリシアが,血に濡れた手で「壊れた懐中時計」を粉砕した。


「……。…….等価交換? 清算? まぁ,随分とケチな商売をなさるのね。わたくしの人生の価格を,そんな『紙屑』程度で決められると思わなくてよ!!」


アリシアの全身から,泥を黄金へと変えるほどの猛烈な圧力が放たれた。 彼女は「存在の消失」という支払いを拒絶し,逆に黄金の獅子の放った「莫大な資本」そのものを,自身の肉体という『市場』へ強引に引きずり込んだ。


「何……!? 私の資本を,自らの『負債』で飲み込んだというのか……ッ!?」


暴力は善。 アリシアは,絶体絶命のどん底において,自身の「無」という価値を極限まで高めることで,世界で最も高価な一撃を「無効化(不渡り)」にしたのである。


決済:地獄の三つ巴,クライマックスへ

「……ふぅ。……。…….高価な弾丸ですこと。ですが,わたくしのような『悪徳商人』は,利息を乗せて返すのがマナーですわよ」


ボロボロの体で,泥の中から立ち上がるアリシア。 正面には黄金の獅子。 背後には,傷だらけながらも闘志を失わない枢機卿と魔女。


三大怪物に囲まれ,絶体絶命の極致。 だが,アリシアの瞳には,かつてないほどの強欲な輝きが宿っていた。


「さあ,お姉ちゃん(仮)。……第二ラウンドの開始ですわ。この世の全ての理不尽,わたくしが『無料タダ』で差し押さえて差し上げますわ!!」

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